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5少女と騎士
しおりを挟む真っ青な顔色で熱もある。
「シオン殿、近づかない方が身のためです」
「そうで…」
「失礼」
雑音が彼女を更に苦しめているのではないか。
肩が震えているのを見て私は無礼だと思いながらも上着を頭にかけ抱き上げる。
「どうかご辛抱ください」
「シオン殿!」
「体調の優れない女性に対してそれでも紳士か」
私は外野を睨みつけその場を去る事にした。
人目がつかない場所で休ませるのは得策ではないので警備隊の目が届くバルコニーに向かった。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
人混みに酔ってしまったのか。
「うっ…」
「大丈夫です。そのまま吐いてしまった方が楽です」
私が壁となり、他の視線から隠すも私の礼服を汚した事を申し訳なさそうな表情をする。
「このような…」
「大丈夫ですからどうかお気になさらず」
やはり部屋にお連れした方が良かっただろうか。
「このように人が多いと無理もありません…私も苦手です」
「え?」
「騎士としてはお恥ずかしいですが…この空気では息がつまりますから」
風に当たり、しばらく夜風に当たった方が良いと思った。
「レモンスカッシュはお嫌いでしょうか?」
「いいえ、好きです」
「それはようございました」
ディアッカにと思っていたが、病人が最優先だ。
「まぁ…綺麗」
「ええ」
月の光が気持ちよく感じる。
バルコニーは静かで美しい満月を見上げゆっくりすごせる。
風がそよぎ彼女の髪が靡く。
「本当に美しい…」
「ええ、月が…」
「いいえ、貴女の髪は月のように」
銀色の輝く髪はとても美しく自然と思った事を口にしてしまった。
「お嬢様!」
「ニナ…」
「侍女の方がいらしたようですね。私は失礼いたします」
「あっ…」
体調はまだ心配であるがずっと私が傍にいるわけには行かない。
そう思ったが…
「姫様、大丈夫ですか」
「ニナ…」
「先ほどの方はアスハルト辺境伯爵家のシオン様では?」
「あの方が…」
この時私は知らなかった。
彼女がどこの誰か、どのような身分の方であるか。
友人達の元に戻った時に彼女の身分を知らされることになるのだった。
「リディア王女じゃないか」
「離宮で暮らされている第二王女殿下だったのか…」
「知らなかったか…まぁ、ごく一部しか知らないからな」
第一騎士団は近衛騎士とも近しい立場にあるのでチャールズは知っていたが、まさか王女殿下だとは思いもせず無礼を働いてしまった事を後悔したが後日お詫びの品と手紙が届いたのだった。
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