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12悪質な噂
しおりを挟む王女宮に訪れた以降。
私はニナ嬢をニナと呼び王宮で会えば気軽に世間話をする事もしばしば。
「今日も精がでるなニナ」
「シオン様」
働き者のニナは誰よりも頑張り屋だった。
リディア王女の為に献身的だった。
王女宮の次女は少ない。
女性騎士数名に侍女が二人と手は足りないのかもしれない。
「リディア王女のお体はいかがだろうか」
「はい、ここ数日は体調も良いようで」
「それは良かった」
悪意に包まれた王宮、社交界の噂。
全てからお守りする事はできないからこそ、悪い噂に惑わされないで欲しい。
「リディア様の病は心にも影響してるのだろう。貴族派だけでなく王族派の貴族まで嘆かわしい」
「はい、姫様の血筋を疎む者も多いのです」
「恐ろしいのだろう」
王位継承権を持ち、血筋が良い。
第一王女殿下の後見人になる者も恐れているのかもしれない。
「テレシア様の為だと言いながら…」
「今は堪えるしかない。大丈夫だ…あの方はこんな事で負ける方ではない」
「シオン様…」
「本当に弱いなら耐えることもされないはずだ。誰も責めずに堪えるあの方は誰よりもお強い」
私はリディア王女が真の高貴さを持っておられるのではないかと思っている。
「せめてリディア様の婚約者となる方がしっかりした人であれば…」
身分がしっかりし、尚且つリディア王女を支えられる方だったならば。
「すまない、差し出がましい物言いを」
「いいえ、シオン様。私は――」
その時だった。
「本当にお似合いよね」
「サンドラ様とライルハルト様」
「本当に悲劇のお二人ですわ」
王宮内で侍女達が楽しそうに噂をしているのが聞こえた。
「いい加減、アスハルト伯爵様も諦めればいいのに」
「こないだも、花束を持って邸に来て追い返されたのよね?馬鹿じゃないの」
「二人は愛を囁き合っているのに…本当にお邪魔虫」
彼女達は私達に気づいていなかった。
一応人のすれ違いが多い場所だというのに自覚はあるのか?
「なんて事を!」
ニナがその場を止めようとするも、私は手を引いた。
「いい…」
「そんな」
「何時もの事だ」
そう、所詮は噂。
社交界で最近は噂が飛躍している。
まぁ半分は本当だが。
最近はライルハルト様と一緒にいるのが多い。
ただ、デートをキャンセルされることが多い。
ヴィッツ家でも玄関すら通して貰えない事も少なくない。
「昨日なんて抱き合っているのを見たのよ」
「まぁ…でも、こう言ってはなんだけど」
「辺境伯爵家から追い出されたご子息と隣国の皇太子殿下がお相手じゃねぇ?」
追い出された?
何を言っているのだろうか。
私は独立したのにそんな噂が流れているなんて!
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