婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。

ユウ

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28初めての遠出~リディアside

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婚約式を身内だけで行い、シオン様が長期の休みを取ってくださり遠出する事になった。
勿論護衛と侍女を数名同行させてだが、楽しみだわ。


「おかしい所はないかしら?」

「とってもお綺麗ですわ姫様」

貴族の令嬢の恰好をして身分を偽り旅行をするのだけど、遠出なんて初めて緊張するわ。

「姫様、最近は顔色も良くて本当にようございました」

「ええ…」

「やっぱり女性は愛されてこそですわ」

「ニナ!」


何を言うの。
シオン様は律儀な方だから私に婚約者として優しくしてくださるだけ。

これは政略結婚だもの。
それでも私は幸せよ。


この恋は実ったとは言えないけど受け入れてくださったことですもの。

「姫様、殿方は好きでもない方を抱ける方はいらっしゃいます」

「ええ…」

「ですが命をかけて誓ってくださる殿方はそう多くおりませんわ。例え王族であろうと…」

「ニナ…」


シオン様は私の為に儀式をするとまで言ってくださった。
体が弱く子供を産むどころか、妻としての役目を満足に果たせるかも解らないのにだ。


「姫様、もう少しどん欲になってくださいませ」

「え?」

「ずっと多くを我慢していらしたのでしたら一つぐらい欲張っても神様はお許しくださいます。夫の愛情を自分にだけ望むことが悪い事でしょうか」

「でも…」


子供を作れない私。
そして長く生きれないと言われる私があの方の全てを望むなんて許されるの?


「私はあの方の妻に慣れるだけで…」

「それだけでよろしいのですが?無礼な物言いをいたしますが…他の女性がシオン様に抱かれても平気ですか」


シオン様が他の方に…


あの優しい手に誰かが。


「嫌よ…そんなの」

考えるだけで胸が張り裂けそうだった。
ずっと我慢していた。

ヴィッツ令嬢にどんな風に触れるのか。

愛を囁くなんて聞きたくない。


「姫様、シオン様にこの旅行でお伝えしてはいかがですか」

「何を?」

「姫様がシオン様を愛している事を…同じように思われたいことを」

「そんな…言えないわ!」


私があの方にそんなことを。

「思っている事は口にしなくてはなりません」

「そうですよ姫様」

「なっ…エロスマン団長」

「エロスマンじゃなくてエルスワンだ。人を変態見たいに言わないでくれる?」

「このボウフラ騎士が!」


何所から現れたのかしら?
第三騎士団団長のディアッカ・エルスワン団長。

平民でありながらも団長の地位に就き、現在は子爵の地位を賜る方。
確か、シオン様とは同期だと聞くけど。


「姫様、出発前に少しよろしいですか」

「近づかないでください!姫様が汚れるではありませんか」

「九官鳥みたいな女だな。何だ?便秘か」

「無礼者!」


不思議な人。
他の護衛騎士とは違ってなんていうか空気みたいな人だった。


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