婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。

ユウ

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ディアッカの協力により、リディア様の体調が優れず寝込んでいる噂を流し尚且つ原因不明の病が流行り出した事を流して貰った。


抵抗力の無い者は伝染してしまうと一瞬で体が弱まってしまうとのことだ。
これも全て嘘だ。


根も葉もない噂に過ぎないが…


「早速手紙が届いたか」

「解りやすいな」

「巷で流行っているのは風邪だ。まぁ万病だがな」

「ここまで単純で良く今日まで生きてこれたな」


チャールズの言葉に同感だ。
良く今まで生きてこれたと思うが先々代の領地と財を頼って来たに過ぎない。


「まぁいい…最近ヴィッツ家は赤字らしいな」

「ああ、領地の近くで震災があったらしい。まぁあの勝手な一族はこれ見よがしに食料を高値で売りつけたらしい」

「止めを刺すとはまさにこの事か」

呆れて物もいない。
領地持ちの貴族に取って隣の領地とは助け合うのが常識だ。
万一自分達が窮地に立たされた時に助けてもらえないというのに。


「最近ヴィッツ領地の作物が不作で害虫が作物を喰らっているらしいな」

「対策をしていないようだが馬鹿だろ」

「心配ない。三か月後には大忙しだろ」


領民だけの問題ではなく当主もこの状況を打開せざるを得なくなる。
タイミングを選んで態々三か月後にしている。


「しばらくは社交界に出る事はできないだろう」

「例の噂か」

「出たとしても舞踏会で糾弾される…自分の身が可愛いならば簡単に出る事はできない。精々一か月はな?」

「シオン…」


そんな顔をしないでくれチャールズ。
私もここまで冷たい男だと思うと苦笑したが…


「勘違いするなシオン」

「ん?」

「私はお前が冷たい男だと思っていない。ここまでの決断をさせてしまっているあの女が許せんのだ」

「チャールズ」

「優しいお前がここまで追い詰められているんだ」


チャールズには申し訳ないが、私はそこまで優しい人間じゃない。
本当に優しい男ならば長い間サンドラ嬢を放っておかずちゃんと向き合っていただろう。


なのに私は理由をつけて逃げてしまったんだ。
最初からちゃんと向き合って悪い事は悪いと厳しく言うべきだった。


「シオン様、お二人は貴方が冷たい等思っておりませんわ」

「リディア様…」

「むしろ、私の為にここまでしてくださって嬉しゅうございます」


私の手を握るリディア様。
何時の間にか彼女がこんなに逞しくなったのだろうか。


「リディア様、挙式で私の百合を受け取っていただけますか」

「はい」


私は何があってもリディア様と共に生きていく。



何があってもだ。

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