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閑話1自称悲劇のお姫様~サンドラside⑧
しおりを挟む私はまるで囚われのお姫様だった。
望まない結婚を強いられて鳥籠に入れられた。
そう…
悲劇のお姫様だった。
誰か私を救い出してくれないかと祈っていたある日。
「こうなったらシオンが戦場で死んでくれれば…」
そうすれば私は財産を手にする事が出来る。
結婚はしていないけど婚約しているのだから財産を受け取る権利はある。
それに現在副団長であるならば戦死した場合は国から相応のお金を受け取れるし、シオンの持っている邸や領地だって売ればお金になるわ。
そんな折、出陣の命令が下った。
だけど、シオンの所属する部隊ではなかった。
だから私は進言した。
「シオン、私の事は気にしないで国の為に尽くして」
「サンドラ…」
「貴方は騎士なのでしょう?国に尽くすのが務めだわ」
そうよ。
死地に向かってそのまま騎士として死んでくれれば私の株が上がりお金も手に入り、婚約もなくなるわ。
あの男もシオンが死ねば精神的に追い込まれる。
アルハルト家は家族同士の繋がりが強い。
気持ち悪い程に仲が良い。
だからシオンが戦死すればあの不愉快な姑だって精神を病むだろう。
お父様の狙いはあの家を乗っ取る事。
なのに…
「シオンが生きて戻って来た?」
「ああ…なんて悪運の強いんだ」
ありえない。
シオン如きの力量で勝てるはずもない。
「聞けば、戦場に迷い込んだ商人が敵国にも影響のある人物だったようだ」
「なんて事なの…」
「この度の戦は重要で、我が国と敵国の和を結んだ功績で領地を与えられるそうだ。階級も上がる」
「嘘でしょ…」
戦死すると思った。
だから留守中を大事にシオンの名義で散財をした。
部下からは非難されたけど、婚約者が戦場に出て不安なので紛らわすためだとか言いって誤魔化したけど。
「あのことがバレたら…」
「なんとか誤魔化すんだ。シオンは鈍いし気づかないだろう」
「誤算だったわ。シオンが出世するとは思わなかった。この度の功績で相当の恩賞が与えられるそうよ」
まだ搾り取れると思った。
だけどあの男は何処までも馬鹿だった。
「領地と恩賞を断った?」
「正確には、困窮している領地に回して欲しいと頼んだんだ。君も賛同してくれてよかった」
「は?」
私は許した覚えはない。
「君が国の為に尽くして欲しいと言ってくれたからな」
「そう…」
馬鹿じゃないの!
そんな意味じゃないわよ!
結果的にシオンは大金を手放し、爵位も受け取らなかった。
代わりに第二騎士団の団長に就任した後に社交界で更にもてはやされるようになった。
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