婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。

ユウ

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109最も恐ろしい存在

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馬車は動き、窓から遠目に身て哀れだとも思った。
もう関係ないと思っていたが、あれだけ自分を過大評価していたサンドラ嬢は群衆に囲まれている。


諍いたくても護衛騎士もいない。
御者だけでどうにかできるはずもないだろうに。


「哀れだな」

「ええ、これまでの事を考えると同情はできませんわ」


リディアは今さらだと思っているのだろう。
私も助けようという考えを持てないのは、冷たい人間だから…


「ニナ、いい加減その物騒な物を捨てろ」

「旦那様、ですが!」

「捨てるんだ」


窓から吹き矢を構えるニナを必死で止める。
間違って民に当たるとどうなるか解っらないだろう。

万一にでも近衛騎士の馬にでも当たったら取り返しがつかない。


「解りました」

「そうしょげるなよ?お楽しみは取っておくべきだろ?」

「お楽しみ?」


ディアッカ、また恐ろしい事を。


「どうせズタズタにするなら吹き矢よりも楽しい拷問があるだろ?」

「そうね。裸足で針山を歩かさせるのもいいわね」


ニナ…


頼むから人の道からハズレような真似だけはしてくれるなよ。


「シオン様、顔色が悪いですが大丈夫ですの?」

「ああ…」

リディアは日に日に逞しくなるというのに私は精神が弱いのだろうか。


そんなことを考える中馬車は王宮内に到着したのだが。



「お姉様?」

「ラインハル様?」


待ってましたと言わんばかりに私達を出迎えてくださった。


「あの…何故」

「まぁ、ご冗談を。私が出迎えないはずがないでしょう?」

「え?」


普通はこっちらが謁見の間に向かってそこで対面だ。
第一王位継承者のテレシア様が出迎えなんてありえないのだが。


「シオン殿、相変わらずですね」

「ラインハルト様も何故」

「相変わらず固い。私は既に帝国の皇太子ではないのですよ」


そうだ。
私達の結近式を終えた二週間後にラインハルト殿下は王弟殿下に婿養子として迎えられ現在公爵閣下となった。


これも立派な政略結婚であるのだが。
当人同士は恋愛結婚だそうで、仲睦まじく過ごしていると聞く。


…しかし本日は言ったどのような話なのだろうか。


「なんだか嫌な予感が」

「私もです」

リディアは私の手を握ってくれた。


思えば王妃陛下に呼び出されるときは決まって大騒動が起きる時だ。


だが国自体は落ち着いてきている。
赤字だった国庫も安定して黒字とまではいかないがましになっているのだ。


なので当面の心配は貴族派の残党をどうすべきか。
敵対する派閥の処遇等という問題程度のはずなのだから。


何もない事を祈りたい。

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