婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。

115強引なやり方～王妃side

強制的な形になってしまった。
広間を出た後のシオンの表情は言うまでもない。


「強引すぎたわね」

「今さらですわね」


テレシアから見ればそうなのでしょうけど。

「既に国内ではシオンの噂は鰻登りよ」

「ええ」

例の事件だけではない。
以前から国民から慕われていたシオンを慕う者は多く。


今回の一件もあり、シオンを支持する声は大きかった。
私もいずれは王位をゆずりたいと思っていたけど、待っている時間が無くなってしまった。



「貴族派をある程度潰す事は出来たわ。でもあの馬鹿女が厄介な男と接触した噂を耳にしました」

「次から次へと…」


本当に忌々しいわ。
私だってこんな急に無理矢理な形で頼むつもりもなかったし。

リディアとシオンとの間に子供が生まれたならば王位継承権を与えたいと思う程度だった。


だけど、シオンが守られる地位を与え簡単には手出しできないようにしなくてはならない。


「シオンが立太子すればあちら側は精神的なショックを受けるけど」

「簡単に手は出せないでしょう」

「情けない話なのだけど、我が国が存属するには他国と渡り合わなくてはならない」


万一同盟を結んだとしても従国等になればどうなるか。
その為にも対等な友好的な同盟を結ぶ為に。


そして新しい時代を切り開く為にもシオンの存在は必要だわ。



「シオンは騎士という視点から国作りができるでしょう。特に我が国の武力を持つのは…」

「辺境貴族ですわ」

「ええ」


彼等を動かせるのはシオンだ。
辺境貴族の立場がどれ程辛い物か一番知るのはシオン。

そして国とは民を粗末にしては革命を起こされる。
そうなるのを防ぐためにもシオンの力が必要だった。


人を愛せるシオン。
不器用ながらもこの人なら信じたい、ついて行きたいと思われる人材が必要だ。

汚れ仕事は王がすべきじゃない。


「王にとって一番必要なのは双方の話を聞く耳を持つ者」

「そしてディアッカのような才はあっても人間的に問題のある者の心を掴めるもの」


私達ではダメだわ。
王族として国を治める為に多くを利用して切り捨てて来た。


弱い立場の物からすれば私達の言葉は受け入れられない部分もある。


「王になれば辛いことも多いでしょう。これまでのように行きません」

「ええ…」

「だけどそれを支える者がいる」


私達とは違う。
ラインハルト殿下もシオンならばエステリア帝国側も友好的な姿勢を見せてくれている。


今のカスメリア王国が存続する為には新しく建て直さなくてはならない。
民を、国を守る為に。


私達は影から守ることしかできない。