婚約者が隣国の王子殿下に夢中なので潔く身を引いたら病弱王女の婚約者に選ばれました。

116胃痛は続く～チャールズside

ああ、神よ。
何故貴方はこうも我が友に試練を与えられるのでしょうか。

幼少期から苦労三昧。
貧乏神と疫病神にまで好かれてしまった挙句にこの仕打ちはあんまりではありませせんか。


「この世に情けはないのか」

「また独り言か」

「ディアッカ、今日と言う今日は許さん！」

全てこの男は知っていた。
知らないはずないだろうに！


「私とて国状況も赤字である理由、派閥争いも解る！だがあまりにも急すぎる！」


リディア様と婚約して結婚。
異例のスピード結婚だというのに、王位を継ぐ？

リディア様が立太子するならまだわかる。
だがシオンは辺境伯爵貴族の次男だぞ？


ある程度の教育を受けていると言えど王族の教育とは訳が違う。
短時間で習得できる程甘くないし、シオンを雁字搦めにする気か！


私がこれまで王室のしきたりにどれだけ息苦しさを感じたか。
その苦労はどれ程のものか。


しかもシオンは王族の血筋がないならば嫌味を言う貴族もいるのだ。


「これではサンドラと同じではないか」


「チャールズ、言葉が過ぎる」

「だが事実だ！私はシオンを牢獄に入れる為に協力したのではない…籠の中の鳥にする気か」


テレシア様ならば上手く鳥籠から抜けられるだろう。
しかし気真面目で情に厚いシオンは器用に生きることもできない。


「多くの欲深い人間の前に…これでは狼の群れの中に子羊を投げ込むようなものだ」

「例えが飛躍し過ぎだ」

「見損なったぞディアッカ」

態度は悪く、人として思う所もあったが…

シオンを思う気持ちは私と同じと思っていた。
私達二人でシオンを守ってやろうと誓った学生時代の約束を違えるとは。


「何もシオンを王室の牢に入れろとは…」

「同じだ！王の仕事はそう簡単ではない」

ディアッカは王妃陛下の側近であるから解らないのだ。
あの方は後ろ盾がる。

だが現国王陛下が大臣に何と言われてか。
優柔不断で先代国王と比べられて猫国王等と言われているのだぞ。


「いかに私達が支えようとも辛い立場に合わされ、矢面に立つのはシオンだ」

「まぁな」

「そんな場所にシオンを…もう断る事は不可能だ」


既に両陛下に大臣がいるその場では私は何もできない。

せめて今すぐではなく…

「後二十年…いや十年先だったら」

新体制にして、ゆっくり学ぶ時間があればどうにかなった。

あるいはリディア様とシオンの間に子が出来てその子を継ぎの王太子殿下にする方が現実的だ。


なのにこんな惨い仕打ちを！

私は両陛下が真面な沙汰を下したとは思えない。