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118奮闘の末
しおりを挟む両陛下の手前引き受けなければならなかったが、どう考えても無理がある。
確かに我が国では、歴代の王の中で一人だけ。
賢王と呼ばれた方がいる。
王侯貴族の中でも名家であり伯爵家の三男で王家に婿養子に望まれた方だ。
その方は斬新な考え方を持つ方であり、尚且つ身分に囚われず平民でも他民族であろうと実力があれば側近に迎えていらしたと聞く。
当時は他国と貿易をしていなかった我が国は鎖国では生き残れないと考えられたそうだ。
だが私は…
「どう考えても無茶だろ」
「シオン様…」
「第一だ。王家への侮辱と、高位貴族も納得しないだろう」
いかに王妃陛下に強い後ろ盾があったとしても。
「本来ならば私も反対したい所ですが、王族派も一枚岩ではなくなりました」
「それは…」
「私の結婚後、貴族派が力を失った事で王族派の紛い物達と手を組んでいるとの噂があります。そして彼等もまた動き出そうとしていると」
「ディアッカか…」
何処まで先を見越しているんだ。
私なんかよりもディアッカの方がずっと王に相応しいと思うのだが。
「これまで官僚も王も臭い物に蓋をしてまいりました。裏では汚い真似ばかりを…その所為で社交界も王族も腐敗しきっています」
「しかし…」
「必要な事だとも思いますが、私欲にとらわれ過ぎた事も否定できません」
リディアの言いたいことは解る。
国民の信頼を失い過ぎてる貴族、王族が変わらなくてはならないのだ。
「政は清廉潔白っでなくてはならないのかもしれません。勿論ある程度の駆け引きは必要ですが」
民の為にすべき政は何時の間にか貴族が得をするものとなっている。
「母はこれをきっかけに我が国の法律を見直すおつもりですわ」
「法を変えるのは時間がかかり過ぎる」
「ええ、五年、十年と…」
その期間、陰で動くという事か。
「貴族だけが得をする法律を変える為です。お辛いでしょうが…」
「リディア…」
ここまで言われては何も言えないではないか。
「それに…私達の子が次代を背負ってくれます」
「そうか…私達の子が」
そうだな。
私達の子が――。
「は?」
今なんて言った?
「リディア、今何と」
「はい。私、子を身ごもりましたの」
さらりと笑顔で告げられた。
「最近食欲がありませんでしたの。それで先日侍医に見てもらいました」
地獄から天国だ。
「そうか…そうか!」
子供が出来ない体と言われていたリディアに子が出来た。
とても喜ばしい事だ。
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