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128不幸な最中~サンドラside②
しおりを挟む邸の中にいたくない。
そう思って外に出ても誰も私を見ようとしない。
酒場に入っても突き刺さるような視線を向け。
男とをひっかけようとするも。
「馬鹿言わないでくれ。王族に手を出そうとした女なんて」
「今すぐ出て行け!」
「きゃあ!止めなさい…塩をかけるなんて!」
酒場に行けば私に声をかけるだろう。
可哀想な私を見て手を差し伸べると思ったのに、追い返されたり。
お金を借りようと思っても門前払いをしただけでなく塩をかけてきたのだ。
「何て奴等なの…この美しい私に塩を!」
――絶対許さないんだから。
こうなったら私の魅力でヒッチハイクをしてやるわ。
道端で倒れた振りをすればと思いきや。
「あの…どうかお待ちください」
かなり良い馬車だった。
家柄は伯爵以上である事が解り馬車を停めようと試みたが。
「邪魔だ!」
「きゃあ!」
御者が私に目もくれず鞭で打つ。
「何をするの!」
「この乞食が!」
この私が乞食ですって!
「どうした」
「何でもございません旦那様。乞食が物乞いを」
「何だと?なんて卑しいのだ。早く馬車を」
「はい!」
窓を開けることなく馬車はそのまま進んで行く。
「待ちなさいよ!」
私は馬車を掴もうとするも御者が鞭で再び私を叩きその場に倒れてしまう。
どうして…
何で私がこんな目に合うのよ!
「どうして止まらないの…誰も私に声をかけないのよ」
雨が降り始め、沢山の人が私に声をかけることなく通り過ぎていく。
こんなに人がいるのに。
権力の脆さを思い知らされる。
伯爵令嬢で会った時は誰もが私に振り返った。
ただ伯爵令嬢から子爵令嬢になっただけ。
それだけの事なのに。
私は選ばれた存在なのに。
誰からも愛される存在なのに。
シオンは私が愛してあげると言ったのに拒絶をして。
私が不幸になっても今まで情を交わしてあげた男達は私を救おうとしない。
優しくしてやったのに。
笑顔を向けてあげたのよ。
なのにどうして私に従わないの?
何で何で何で!
雨に濡れ体が重くて動けない。
意識が遠のく中、声が聞こえた。
『憎いだろう』
微かに聞こえる声だった。
憎い‥ええ、憎いわ。
許せないわ。
『だったら復讐しろ』
――復讐?
『私から大切なものを奪った女を地獄に』
あの女を地獄に叩き落す。
そうだわ。
私が受けた屈辱を、苦しみを味合わせてやりたい。
私以上に不幸になってもらわないと。
私は――。
許せない!
『復讐しろ』
声が強くなり、目の前には私がいた。
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