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129救いの手~サンドラside①
しおりを挟む私は絶対に幸せになるはずなの。
伯爵令嬢は仮の姿で女王になるべき存在なのよ。
子供の頃から憧れていた。
でも、憧れではなくてそうなるのが当然だったのよ。
だから今の生活は仮の姿。
そう、本当の私は違うんだから!
目を覚ますときっと悪夢から目覚めている。
「おや?目が覚めましたか」
「ここは何処?」
あのみそぼらしい邸ではない。
豪華絢爛な部屋にお姫様のベッドだった。
「私はこの邸の主です。ルーアン・エスカルダと申します」
「エスカルダ?」
私も名前だけは聞いたことがある。
貴族派で王家とは距離を置いている貴族で、数多の鉱山を持ち宝石商をしていると聞く。
王族の本家筋の血を持ちながらも王家のやり方に異論を唱えていると。
「貴女を探しておりました」
「私を?」
「ええ、王家の企みで人身御供にされたお気の毒な姫君を」
「人身御供…」
その言葉に夢で言葉が木霊する。
「王家は貴女を悪に仕立て上げて、ハズレ姫を祭り上げようとしたのです。貴女は彼等に邪魔だった」
「邪魔…」
「そうです。何故なら貴女の婚約者、シオン殿を傀儡にしてハズレ姫を押し付ける者が必要だった。あの方は王家に忠誠を誓う家柄…これ程都合の良い生贄はいません」
シオンが生贄?
「彼も不憫な方でした。愛する婚約者を幸せにできないと身を引きながら未練を捨てられず、使命感もあり望まない婚約を強いられ洗脳されあのような…そして今は」
ルーアン様は私に見せたのは新聞の一部だった。
「これは…」
「先日、シオン殿が立太子すると公に発表されました」
「何で‥」
どうしてシオンが王太子に!
ありえない。
だってへんきょい伯爵家とはいえど次男で、恩恵も受けてないのよ!
「優柔不断な弱気王にこの国を纏めることはできません。王妃のいいなりです。このままでは他国に国を乗っ取られます。しかも会議で貴族から税を取る案が出ているのです」
「貴族から税を!」
「次は何をするか…この国の貴族を廃止するなんて言いかねませんね?いいえ、王族派以外の貴族の廃止でしょうか…これまで尽くして来たというのに」
酷い。
酷すぎるわ。
そんなことをしたら平民が調子に乗るじゃない。
「貴族が優遇され過ぎている法律だと異論を述べる王女にはほとほと呆れます。貴族が優遇されるからこそ平民を力で抑え込める。貴族は民より優遇される代わりに自由が少ない。それを」
「こんな連中に任せてたら国が亡ぶわ」
貴族を何だと思っているのよ。
第一税金が高い?
自分達が貴族と同じ人間だなんて呆れるわ。
「もう王家には国を導く力がありません」
ルーアン様の言葉が私の心にすとんと入って来る。
既に王家は堕落したのだと思った。
もう必要ないのだと。
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