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第二章
12.入所希望者
夕方になると、他の寮生が引っ越しの準備に来た。
…のだが。
「あれ?何で二人が」
「なんでではありませんわ。クラスメイトが噂をしていて…心配になって来ましたの」
ジュリアン様とシルビアはプンプン怒っていた。
「これは流石にないだろ。ここはほとんど使われていない寮だ。まさかわざと…」
そして何故かロミオ様もいる。
ロミオ様は白銀のSランクなので寮も雲泥の差だ。
「いいんですよ。私から立候補しましたし。それにお庭も広くて使い放題。しかもお風呂も広いし」
「お義姉様…」
うん、シルビアの言いたいことは解っている。
でも、こっちの方が気兼ねなく過ごせるし。
森の中の生活も中々悪くないし、一番喜ばしいのは念願の暖炉やかまどがある事だ。
昔ながらのかまど!
「庭には薬草も沢山あって、素敵だわ」
「ハハハッ!中々逞しい令嬢だな!やはり噂はデマだったようだな」
胸を張って大笑いする上級生らしき人。
長身で、茶髪で腰に剣を身に着けているのを見ると騎士科だろうかと思った。
あー、攻略対象のあの人か。
「お初にお目にかかる。リオネル・スプライトだ!生徒会では会計担当だ!しかし俺は計算が苦手だ!ハハハッ!」
「笑うな。それでは困るんだ」
「成績は悪くなかったから生徒会の役員にされてしまったが、これも産運だ」
いいのか生徒会。
計算が苦手な生徒を会計にするなんて。
「心配ないぞ、計算はロミオがするからな!」
「少しは自分でやれ!」
ゲーム上ではパワーバランスが取れていたように見えるが。
実際はロミオ様が裏で動いていたのか。
「まったく美しくない。これだから脳筋は」
文句を言う眼鏡をかけるインテリ系な辞書を片手に持っている。
「お初にお目にかかります、次席のスコット・ウッズです。貴方とは同い年ですが、噂は聞いております」
「どういう噂かは想像がつきます」
眼鏡を掛けなおしながらキリッとした表情をする。
リオネル・スプライト。
辺境伯爵の三男で私よりも一つ上だが学年は同じだ。
諸事情により一学年ダブっているのだが、勉強はできるのだ。あるか科目を除いては。
スプライト家はこれまで多くの武官を輩出して来た根っからの武闘派集団であるが、官僚も多く輩出している。
リオネルはゲーム上でも、ヒロインに気さくに話しかけ困ったときは助けてくれる兄貴分。
彼も攻略対象だ。
もう一人の攻略対象はスコット・ウッズ。
文官の息子で平民であるが、幼少期に事故で両親を亡くした後は親族に養子として迎えられ、優秀だったことから学園に迎えられている。
歩く辞書と言われる程の知識を持ち、記録という特殊なスキルを持っている。
常に分厚い本を持ち歩いているが勉強はできても運動神経がダメ。
しかも貴族に対して良い感情を持っておらず、貴族から苛められるヒロインの味方だった。
でも、どうして彼等がこの寮に?
「今日から世話になるぞ!」
「はい?」
「寮から追い出された。しかも兄上からお前はもう少し協調性を学べと言われたんだ。しかもバッジを紛失してしまってな!白銀の資格を失った」
「今、とんでもない事を聞いたのですが」
「まぁ、気にするな」
いや、気にするけど!
「寮の警備が必要だろう。ある意味ではこいつは無害だから問題ない。なんせ頭の中まで筋肉で来ているからな」
頭を抱え疲れた表情をするロミオ様は相当疲れていると見た。
「何故こんな男が生徒会に…嘆かわしい」
「それで、ウッズさんは」
「私も追い出された身ですよ。貧乏人と同じ寮は嫌だと、駄々をこねる低次元な頭のネジが緩んでいる貴族にね」
何とも言えない気分だった。
しかし、攻略対象と一つ屋根の下で過ごすのか?
いや、女子と男子でも一応別けられているし。
鍵だってかけられているのだけど。
そういえばゲームの中盤でヒロインはランクが上がり、攻略対象達と同じ寮に住むようになった気が。
でも、展開が早くない?
もしかしてズレが生じているのだろうか。
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