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第一章婚約破棄事件
20.拒否
しおりを挟むできるだけ穏便に済ませたい所だけど、遠回しな言い方では理解しないでしょうからはっきり断言して差し上げるのが本人の為でもあるかもしれません。
「この際はっきり申し上げます。私は過去に一度でも貴方に心を預けたことはありません。貴族の娘として父の命令に従っただけです」
「なっ!」
「情を持ちましたが友人未満です。私は平気で他人を利用し裏切るような方と結婚前に縁が切れて良かったと思っています。いいえ、神は私を見放さなかった…旦那様という素晴らしい運命の人とめぐり合わせてくださったのです」
「レティー…」
「私と貴女は結ばれる運命になかったのです。これがあるべき姿ですわ」
あのまま結婚していたと思うとゾッとする。
本当の意味で私は尊敬しあえる伴侶に出会えたのだから。
「私の旦那様はケネシー・アスガルト様だけです。これから先も」
「ぐっ…」
「これ以上騒ぐと言うのであれば、訴えます」
これ以上この男と付き合うのも時間の無駄でしょう。
まだ実害がないのでつまみ出す程度にしておくのが得策だと思いましたので。
「マーク、ヴィルマ」
「「はい!」」
「客様のお帰りです」
「待て…待ってくれレティー!」
そのまま視線を向け、二人に彼を追い出す様に告げた。
この程度諦めていないとは解っているけど、ここで強引な手を使えば後々から厄介な事になります。
「いいのか、あのまま帰して」
「道の往来で叫んでいましたから、ご近所でも数日後に噂になるでしょう」
悪目立ちしていたので、やり過ぎれば足元を掬われるのであくまで慈悲をかけたという事にすることでこちらに非がないと見せたのです。
「大丈夫ですわ」
「しかしな…」
旦那様は納得いかない様子だけど、すぐに何かしでかすことはできないはず。
余程の馬鹿じゃない限りはですけど。
「だが、念のために一人にならないようにしてくれ」
「はい、かしこまりました」
こればかりは譲らないわけには行きません。
旦那様もかなりゆずってくださっているのですから。
このまま何事もなければいいと思っていました。
なのに胸の奥が騒めいて仕方ありませんでした。
嫌な予感が過って仕方なかった私は、不安を拭うことができずにいながらも大丈夫だと言い聞かせていた数日後。
「伯爵夫人!」
「侯爵様、どうなさいました?」
「大変だ!」
私はただ、愛する人と穏やかな暮らしを送りたい。
大切な人にも幸せであって欲しいと思っただけだったのに。
けれど、それは叶わないようでした。
この世界はどうあがいても乙女ゲームであり、平和に過ごす事は難しいようでした。
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