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第一章婚約破棄と白のグリモワール
9優しい人達
しおりを挟む学園内にある別館の校舎の一室。
一般生徒も立ち寄ることができない特別科の校舎の学生寮にて。
「さぁ手をお出しになって」
「はっ…はい」
「酷くやられたな。女性に暴力を振るうとは」
優しく気障な台詞を吐いていた時とは想像がつかない程だった。
「猊下に無礼を働いた女子生徒は三親等までは死刑、その親族は領地没収、財産没収の末に国外追放、もしくは終身刑ですね」
「えっ…」
「当然でございます。猊下に無礼を働いた時点で許されません」
「いや…でも」
知らなかったから仕方ないのでは?と言いたくなったが。
「学園内で魔法の発動は禁じられている。しかも無抵抗の生徒を大勢で虐げた。その時点で罰は与えられる」
「殿下…」
「これは学園の校則だ。君が平民であっても同じだ」
包帯を巻かれた腕を両手で包み込みながらそっと告げる。
「君は治癒師としての誇りを貫き、手を出さなかった。力ある者はその力を多くの者の為に使う義務がある。彼等は破ったんだ」
「国を守り民を守る側が許されませんわ」
「でも…私に原因があるんです。彼等は守ろうとして…」
ユーフィリアを愛するがゆえに誰もが守ろうとした。
宮廷魔術師であり、この学園の聖女として慕われる彼女が好きだから。
「聖女を悲しませた私が…」
「メアリ様、どんな理由があっても人を傷つけて許されるはずがありません。噂は聞いてますわ」
「第三者が勝手に割り込んで王子様気取りではありませんか。第一メアリ様がこんな目に合っているのに助けもしないなんて聖女の名が聞いて呆れます」
「庇ってくれたました」
あの時大勢から責められる中庇ってくれたと告げるも。
「本当に君を庇おうとしたのか?」
「え?」
「本当に君が大切なら、どうして言わない。やり方が姑息すぎる」
「殿下?」
メアリの頬に優しく触れながらミカエルは怒っていた。
「私でしたら、堂々と決闘を申し込みますわ」
「えっ…」
「例えその方がギーゼラの婚約者であっても真正面から勝負を挑み愛を勝ち取ります。戦って破れたら諦めておっと素敵な男性を見つけて幸せになってざまぁ見ろと笑ってやりますわ」
「それはどうなんだリーシャ」
「フンッ!」
勝気すぎる発言のリーシアの言葉は清々しかった。
「メアリ様、貴女のご友人をもっと離れた場から見てください」
「姫様?」
「貴女が慈しみの念の強い方と存じております。名も知らぬ者の為に馬車を止め治癒を行い邸まで送るような底なしのお人好しです」
「褒めてますか?」
「婚約者に堂々と浮気をされても責めることができない程のお人好しです」
「絶対、褒めてませんよね!」
悲しいのを通り越して少し怒りたくなったが二人はメアリの手を強く握る。
「ですが、そんな優しいメアリ様が好きですわ。見る目のない男なんて忘れればいいのですわ」
「そうです!この世には良い男は沢山います。ダークエルフは美男子が多いですよ」
「いや…その」
失恋してその日に新しい恋を進められるメアリだった。
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