伯爵令嬢の受難~当馬も悪役令嬢の友人も辞めて好きに生きることにします!

ユウ

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序章

3終わりと始まり

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私の命の灯はもう消えかけている。
時計の針の音が聞こえ日付が代わろうとする最中。


「キャサリン様、私は何という事を」


私の手に彼女の雫が落ちる。


何が悪かったのか、何が正しかったのか解らない。


もう私には時間がない。


「キャサリン様…私は」

「もう、いい」


全ては後の祭りだわ。
もう終わってしまった事なのだから。


ただ残念だったのは真実を何一つ解らない事だ。


「キャサリン…キャサリン!」


もう目も開けれいられない。
お別れの時が来たのかもしれない。


「お嬢様!お嬢様ぁ!」


私の手を掴みながら必死で叫ぶエリー。

ごめんなさいエリー。
最後までも私の味方になって、家族と対立してまで私の傍にいてくれたのに。


でも私はもう…


お別れのようだわ。


「キャサリン様!」

ぼやける視界の中セルシア様が必死で私を繋ぎ止めようと魔力を使うけど、無意味だった。


回復魔法では私は助からない。


初めて知る光魔法。


そうか…


こんなに温かく心地よい物だったのね。


学園にいた時は人の心を惑わす魔力だと言われていた。


でも私も目が曇っていた。


――私の大切な物。


それは王家でも友人の彼女でもない。




私は未来の王妃となる親友を盲目なまま信じて。
婚約者を信じて優先すべきものを忘れてしまったのだから。


今更後悔してももう遅い。



そう思いながら目を閉じた。


「キャサリン様?キャサリン様!」


「キャサリン!目を開けてちょうだい」

「キャサリン!」


時計の針は十二時を指し、日付は変わった。



私は18歳の誕生日を迎えた日にこの世を去った。


若すぎる死だった。



今度生まれ変わる時は。


もっと自由に、長生きをしたい。


そう願いながら光に包まれた。



――はずだった。



「…リン。キャサリン!」


誰かに肩を揺すられ目を開けるとそこは。


キャサリンが目を開けると、そこはいつもの伯爵家の家の自室のベッドであった。



真っ白いシーツに柔らかい布団、大きな窓にかけられたカーテンからは朝の光が差し込んでいる。




ただ違っているのは侍女のエリーの容姿が少し幼ないように感じる。


「お嬢様、本日は学園に入学する初日でございますよ」

「えっ…」


学園とは何を言っているのだろうか。
もう卒業をしたはずだと思ったが、エリーが手に持っているのは新しい制服だった。


「早くお支度をしませんと」

鏡を見せられると、私の髪の色が白髪じゃなかった。


頬をペタペタ触る。
何度も鏡を見比べると15歳に戻っていた。


摩訶不思議な光景をすぐに信じる事は出来なかった。

しかしこの後入学式に出て私はあの時の時間に戻っている事を察した。


最悪な終わりをした私が、最悪になる前に戻ってしまったのだった。


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