伯爵令嬢の受難~当馬も悪役令嬢の友人も辞めて好きに生きることにします!

ユウ

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第二章

26恋の微熱

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人目がある。
恥ずかしいしこれ以上はダメだと思っているのに。


「待って…」

「本当は気長に待つつもりだった。だけどやめた」

「何を…」

何を言っているの。
私の両腕を掴み、荷物は地面に落ちてしまった。

そっと耳元で囁かれる。

「君の中にある過去の男を消したい」

「男っと言われても」

「愛情がなくても嫌だ。君の中であの男の記憶を全部塗りつぶしてやりたい。思い出してほしくない」

どんどんと距離が近くて、鋭い瞳が私を捕らえる。

「いや…見ないでください。そんな…」


恋愛初心者でもわかる。
そんな鋭い目で見られたら私は。

「止めて」

「嫌だ。俺をちゃんと見て」

今彼を見たらどうにかなりそう。

「君を愛しているんだ」

「止めて…言わないで」

「君が好きで仕方ない。好きで好きで仕方ないんだ」

逃げようにも壁に背が当たり逃げられない。
周りは恋人が多く私のやり取りに気づく人はいない。

「周りは恋人だけだ。ここは愛を誓いあう場所…カップルロードだ」

「そっ…そんな場所が!」

「だからここで俺が君にキスをするのは自然な事」

「なっ!」

顔を上げた瞬間、私は言葉を失った。
私の言葉をふさぐようにキスをされ、身動きが取れない。



熱い…

互いの行動が聞こえてしまう。


違う…

彼の鼓動の方が早かった。


ドクン、ドクンと聞こえてくる。


「キャサリン…」


私の手を握る手が震えている。
手慣れていると思いながらも私の手を握る手がわずかに震え、キスは優しものだった。


強引さはない。

「すまないキャサリン…君を傷つけて」

「私は…」

「でも、嫌だ。君があの男に傷つけられた記憶があるのが。愛してなくてもあの男が君の中に残っているなら全部消したい」

「待って…」

「ごめん」


今度は唇ではなく頬にキスをされる。
唇にされるよりも恥ずかしいのに、嫌悪感はなくて。


「嫌がらないんだな」

「うっ…」

「嬉しい…すごく」

初夏の日差しの所為なのか。
避暑地での空気に浮かされているのか。

私は頭の中がクラクラしていた。


まるで恋の病に浮かされてしまったかのように、私はそのまま受け入れるしかできなかった。


恋の微熱に私は――。


愛されるという意味を本当の意味で知ってしまった。



決して男性に抱かれないと思っていた強い思いに囚われてしまった。


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