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閑話1緊急事態
しおりを挟む表舞台からリネットが姿を消してから安否確認もままならない中、様々な噂が飛び通った。
元から社交界にはほとんど出ていなかったが王宮に顔出すことはあったのだが、あの事件以来姿を見た者はいない。
結婚前夜に第二王子一派に集団で暴行を受けた。
しかも結婚前夜とくれば悪意がないはずがないと思う者は多く、ベルシュタイン家の結婚式を台無しにするべく意図的に行ったと噂になっていた。
公爵筆頭であるベルシュタイン家に喧嘩を売る行為は他国との貿易を壊す行為でもあり、王宮内では王国を長らく守り、見返り無く人々の為に尽くし続けた白の魔導士に対する仕打ちに異論を唱える国は多かった。
その所為で、国王は頭を抱えることとなった。
「陛下、未だにリネット嬢の安否は確認が取れない状態です」
「面会も敵わず、彼女が療養している病院すら分からない状況です」
大臣達はこのままの状態が続けば、他国は思うだろう。
白の魔導士を葬り去ったのは王家ではないか?
これまで友好的な関係を結んでいた大国。
同盟国の中には兵を持たない故に、結界魔術で国を守ってもらった見返りとして金銭的な支援も受けていたが、その支援を断ち切ると言う国も少なくない。
特に危惧しているのは正教皇国だった。
どんな大国よりもある意味で一番敵に回すと厄介だった。
「慈悲と寛容を旨とする聖職者は、この度の一件を大変遺憾に思っているそうで」
「治癒師を多く輩出しているのは正教皇国ですからな」
「白の魔導士の一族は信仰心も強く、先の戦争では率先して民を守り、正教皇国をも守っていました」
三大皇国といわれる内で一番影響力のあるイシュミール皇国は強い影響力と、東帝国との交流も強かった。
東帝国は銀人国家であると同時に、大国でもある。
大国を敵に回せば戦争がはじまり、他国とも諍いが生じればどうなるか。
同時に、イシュミール皇国の教皇が他の国にも悪意を持ってリネットを始末したと公言したら宗教裁判。
女神裁判が行われるだろう。
そうなったら最後、全世界から攻撃を受けることになる。
「なんとしてもイシュミール皇国の介入を止めなくては」
「そうはいっても既に、彼の国はリネット嬢の安否が確認できないなら乗り出して来るだろうな?」
緊迫する中、一人軽い口調で告げる青年。
この国の第一王子殿下、リシウス・セレスティアだった。
「殿下!そのような…」
「我が国は何所まで恩知らずなのだろうな。これまで見返り無く我が国を守ってくれた者を暗殺するとは…愛と正義の女神を信仰するイシュミール皇国が戦争をふっかけてもおかしくないだろうな」
大臣達が異論を唱えるも更に挑発的な事を告げるリシウスは笑っているが目は氷のように冷たかった。
「王都内で既に結界が崩壊して被害が出ているが…女神の怒りならば致し方ない」
「殿下!」
国の現状を嘆きながらもこれまで国の為に身を捧げて来たリネットの身を心配する者がほとんどないことが不快だったからだ。
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