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53従魔契約
しおりを挟む「大変です旦那様!」
普段、冷静沈着なレナが珍しく声を荒げた。
対する私は、ワンちゃんが大人しいことをいいことに膝に乗せてブラッシングを始めたりしてモフモフを堪能していた。
「レナ様、どうなさったんですか?トイレですか」
「ジル。淑女としてアウトよ」
最年少のジルはレナが声を荒げたことにキョトンとしながら淑女としてはアウトな質問をしたことをメープルに注意をする。
「どう見ても違うでしょ?それに自分よりも地位の高い方にそんな質問はダメよ」
「すいません」
ジルの発言はまぁ、問題かもしれないけど。
今は何があったか聞くのが先なのだけどみるみる顔色が悪くなっている。
「レナ。本当に具合が悪いんじゃ…」
「申し訳ありません。そうではなく…いいえ、ある意味具合が悪いと申しますか」
要領を得ない言い回しだわ。
普段のレナらしくないと思ったのだが…
「なんてことだ」
「レオ?」
今度はレオまでも同じ表情をしている。
「魔眼で見たんだが…君、従魔契約をしているぞ」
頭を抱えながら告げられた言葉に首をかしげた。
「んん?」
従魔契約とはその名の通り、人間が魔物と主従関係を契約する。
「嫌ですね。私はこの国に来て一度も魔物に遭遇していないのに」
どうやって従魔と契約するんだ。
通常は魔物と戦い弱らせて服従するのが従魔契約だ。
これまで領地で共に過ごした魔物はいたが、従魔契約をしたことがない。
…というか従魔契約をした経験はないしできない。
「君の膝にいるのがだ」
「え?ワンちゃん?」
「ワン!」
私の膝の上で大人しくしているワンちゃんが魔物?
「それ…フェンリルです」
「は?」
フェンリルって北欧神話に出て来る巨大な狼だっけ?
伝説の魔獣と言われ、国によって神の使いとも言われている存在だった。
「あはは…レオったら冗談でしょ?」
「私が胃を抑えながら冗談を言うと思うか?」
言わないことは知っている。
でもでも、ありえないでしょ?
「君、ワンちゃんよね?フェンリルじゃないよね?」
「ワン!」
「どっちのお返事なの?」
お願いだから違うと言って!
「ご主人!私はフェンリルです」
「「「は?」」」」
私達は固まった。
他の誰かが言ったのではない。
間違いなくワンちゃんだ。
「えーっと。君しゃべれるの?」
「普通のフェンリルは無理でございます。純血種ならば可能です!」
「純潔のフェンリル…フェンリルの長か!」
フェンリルの長って何?
彼らにそんなものがあるの?
だって子犬でしょ?
「人間界には知られておりません我らのような種族は生まれながらにして長となることは珍しくありません」
「そーですか」
「私はフェンリルの中でも純潔です。同時に女神より祝福を頂き生を受けてる聖獣なのです」
魔獣でありながら聖獣なんて聞いたことがない。
魔獣に関しては人間側の資料しかないのだけど、嘘を言う必要はない。
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「へ?」
「貴女がこの世界に再び転生して貴女が貴女になる日を…」
私が私になる日って何?
まるで私を知っているかのような言い方だった。
「まだ私が名もなき子犬だった頃。人間の理不尽で捨てられた価値のない犬だった私」
いやいや待てよ。
耳を下に向けて首をかしげながら鳴くしぐさ。
思いっきり見覚えが…
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