60 / 219
53従魔契約
「大変です旦那様!」
普段、冷静沈着なレナが珍しく声を荒げた。
対する私は、ワンちゃんが大人しいことをいいことに膝に乗せてブラッシングを始めたりしてモフモフを堪能していた。
「レナ様、どうなさったんですか?トイレですか」
「ジル。淑女としてアウトよ」
最年少のジルはレナが声を荒げたことにキョトンとしながら淑女としてはアウトな質問をしたことをメープルに注意をする。
「どう見ても違うでしょ?それに自分よりも地位の高い方にそんな質問はダメよ」
「すいません」
ジルの発言はまぁ、問題かもしれないけど。
今は何があったか聞くのが先なのだけどみるみる顔色が悪くなっている。
「レナ。本当に具合が悪いんじゃ…」
「申し訳ありません。そうではなく…いいえ、ある意味具合が悪いと申しますか」
要領を得ない言い回しだわ。
普段のレナらしくないと思ったのだが…
「なんてことだ」
「レオ?」
今度はレオまでも同じ表情をしている。
「魔眼で見たんだが…君、従魔契約をしているぞ」
頭を抱えながら告げられた言葉に首をかしげた。
「んん?」
従魔契約とはその名の通り、人間が魔物と主従関係を契約する。
「嫌ですね。私はこの国に来て一度も魔物に遭遇していないのに」
どうやって従魔と契約するんだ。
通常は魔物と戦い弱らせて服従するのが従魔契約だ。
これまで領地で共に過ごした魔物はいたが、従魔契約をしたことがない。
…というか従魔契約をした経験はないしできない。
「君の膝にいるのがだ」
「え?ワンちゃん?」
「ワン!」
私の膝の上で大人しくしているワンちゃんが魔物?
「それ…フェンリルです」
「は?」
フェンリルって北欧神話に出て来る巨大な狼だっけ?
伝説の魔獣と言われ、国によって神の使いとも言われている存在だった。
「あはは…レオったら冗談でしょ?」
「私が胃を抑えながら冗談を言うと思うか?」
言わないことは知っている。
でもでも、ありえないでしょ?
「君、ワンちゃんよね?フェンリルじゃないよね?」
「ワン!」
「どっちのお返事なの?」
お願いだから違うと言って!
「ご主人!私はフェンリルです」
「「「は?」」」」
私達は固まった。
他の誰かが言ったのではない。
間違いなくワンちゃんだ。
「えーっと。君しゃべれるの?」
「普通のフェンリルは無理でございます。純血種ならば可能です!」
「純潔のフェンリル…フェンリルの長か!」
フェンリルの長って何?
彼らにそんなものがあるの?
だって子犬でしょ?
「人間界には知られておりません我らのような種族は生まれながらにして長となることは珍しくありません」
「そーですか」
「私はフェンリルの中でも純潔です。同時に女神より祝福を頂き生を受けてる聖獣なのです」
魔獣でありながら聖獣なんて聞いたことがない。
魔獣に関しては人間側の資料しかないのだけど、嘘を言う必要はない。
「ご主人。私はこの時を待ちわびていたのですよ」
「へ?」
「貴女がこの世界に再び転生して貴女が貴女になる日を…」
私が私になる日って何?
まるで私を知っているかのような言い方だった。
「まだ私が名もなき子犬だった頃。人間の理不尽で捨てられた価値のない犬だった私」
いやいや待てよ。
耳を下に向けて首をかしげながら鳴くしぐさ。
思いっきり見覚えが…
あなたにおすすめの小説
【完結】引きこもりが異世界でお飾りの妻になったら「愛する事はない」と言った夫が溺愛してきて鬱陶しい。
千紫万紅
恋愛
男爵令嬢アイリスは15歳の若さで冷徹公爵と噂される男のお飾りの妻になり公爵家の領地に軟禁同然の生活を強いられる事になった。
だがその3年後、冷徹公爵ラファエルに突然王都に呼び出されたアイリスは「女性として愛するつもりは無いと」言っていた冷徹公爵に、「君とはこれから愛し合う夫婦になりたいと」宣言されて。
いやでも、貴方……美人な平民の恋人いませんでしたっけ……?
と、お飾りの妻生活を謳歌していた 引きこもり はとても嫌そうな顔をした。
義妹に婚約者を譲りました。貧乏伯爵に嫁いだら、溺愛と唐揚げが止まりません
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「お姉さまの婚約者が、欲しくなっちゃって」
そう言って、義妹は私から婚約者を奪っていった。
代わりに与えられたのは、“貧乏で無口な鉄面皮伯爵”。
世間は笑った。けれど、私は知っている。
――この人こそが、誰よりも強く、優しく、私を守る人、
ざまぁ逆転から始まる、最強の令嬢ごはん婚!
鉄面皮伯爵様の溺愛は、もう止まらない……!
【完結】身代わりに病弱だった令嬢が隣国の冷酷王子と政略結婚したら、薬師の知識が役に立ちました。
朝日みらい
恋愛
リリスは内気な性格の貴族令嬢。幼い頃に患った大病の影響で、薬師顔負けの知識を持ち、自ら薬を調合する日々を送っている。家族の愛情を一身に受ける妹セシリアとは対照的に、彼女は控えめで存在感が薄い。
ある日、リリスは両親から突然「妹の代わりに隣国の王子と政略結婚をするように」と命じられる。結婚相手であるエドアルド王子は、かつて幼馴染でありながら、今では冷たく距離を置かれる存在。リリスは幼い頃から密かにエドアルドに憧れていたが、病弱だった過去もあって自分に自信が持てず、彼の真意がわからないまま結婚の日を迎えてしまい――
行き遅れのお節介令嬢、氷の公爵様と結婚したら三人娘の母になりました
鳥柄ささみ
恋愛
お節介焼きで困っている人を放っておけないシアは、数多のご令嬢達から人気の令嬢だ。毎日ファンレターが届き、社交界に出れば令嬢に取り囲まれるほどである。
けれど、それに反比例するように男性からの人気はなく、二十七だというのに嫁の貰い手もないため、毎日母から小言をもらっていた。
そんなある日のこと、突然公爵家から縁談の話が。
シアは公爵家がなぜ自分に縁談など持ち掛けるのかと訝しく思いつつ話を受けると、なんと公爵の後妻として三人の娘の母代わりになれと言われる。
困惑するも、自分へ縁談を持ちかけた理由を聞いて、お節介なシアは嫁ぐこと決めたのだった。
夫になるレオナルドはイケメンなのに無表情で高圧的。三人の娘も二女のアンナを除いて長女のセレナも三女のフィオナもとても反抗的。
そんな中でもお節介パワーを発揮して、前向きに奮闘するシアの物語。
※他投稿サイトにも掲載中
ハズレ嫁は最強の天才公爵様と再婚しました。
光子
恋愛
ーーー両親の愛情は、全て、可愛い妹の物だった。
昔から、私のモノは、妹が欲しがれば、全て妹のモノになった。お菓子も、玩具も、友人も、恋人も、何もかも。
逆らえば、頬を叩かれ、食事を取り上げられ、何日も部屋に閉じ込められる。
でも、私は不幸じゃなかった。
私には、幼馴染である、カインがいたから。同じ伯爵爵位を持つ、私の大好きな幼馴染、《カイン=マルクス》。彼だけは、いつも私の傍にいてくれた。
彼からのプロポーズを受けた時は、本当に嬉しかった。私を、あの家から救い出してくれたと思った。
私は貴方と結婚出来て、本当に幸せだったーーー
例え、私に子供が出来ず、義母からハズレ嫁と罵られようとも、義父から、マルクス伯爵家の事業全般を丸投げされようとも、私は、貴方さえいてくれれば、それで幸せだったのにーーー。
「《ルエル》お姉様、ごめんなさぁい。私、カイン様との子供を授かったんです」
「すまない、ルエル。君の事は愛しているんだ……でも、僕はマルクス伯爵家の跡取りとして、どうしても世継ぎが必要なんだ!だから、君と離婚し、僕の子供を宿してくれた《エレノア》と、再婚する!」
夫と妹から告げられたのは、地獄に叩き落とされるような、残酷な言葉だった。
カインも結局、私を裏切るのね。
エレノアは、結局、私から全てを奪うのね。
それなら、もういいわ。全部、要らない。
絶対に許さないわ。
私が味わった苦しみを、悲しみを、怒りを、全部返さないと気がすまないーー!
覚悟していてね?
私は、絶対に貴方達を許さないから。
「私、貴方と離婚出来て、幸せよ。
私、あんな男の子供を産まなくて、幸せよ。
ざまぁみろ」
不定期更新。
この世界は私の考えた世界の話です。設定ゆるゆるです。よろしくお願いします。
編み物好き地味令嬢はお荷物として幼女化されましたが、えっ?これ魔法陣なんですか?
灯息めてら
恋愛
編み物しか芸がないと言われた地味令嬢ニニィアネは、家族から冷遇された挙句、幼女化されて魔族の公爵に売り飛ばされてしまう。
しかし、彼女の編み物が複雑な魔法陣だと発見した公爵によって、ニニィアネの生活は一変する。しかもなんだか……溺愛されてる!?
彼は亡国の令嬢を愛せない
黒猫子猫
恋愛
セシリアの祖国が滅んだ。もはや妻としておく価値もないと、夫から離縁を言い渡されたセシリアは、五年ぶりに祖国の地を踏もうとしている。その先に待つのは、敵国による処刑だ。夫に愛されることも、子を産むことも、祖国で生きることもできなかったセシリアの願いはたった一つ。長年傍に仕えてくれていた人々を守る事だ。その願いは、一人の男の手によって叶えられた。
ただ、男が見返りに求めてきたものは、セシリアの想像をはるかに超えるものだった。
※同一世界観の関連作がありますが、これのみで読めます。本シリーズ初の長編作品です。
※ヒーローはスパダリ時々ポンコツです。口も悪いです。