乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!

ユウ

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90フェンリルの集い①






リーシュフェル帝国は、皇族、貴族、国民が知らない聖地が存在する。
人外種と呼ばれる彼らが隠れ住む地だ。


別名ワンダフル王国。
セレンティア王国とリーシュフェル帝国の間に位置する。


国を守るのは代々フェンリルの王と呼ばれる存在だった。
魔獣とされるが、フェンリルの王は聖獣と同格とされる種族故に光魔法も保持している。


「ご主人…」


フェンリルの王ことアルフは強い魔力を感じながら悲しそうに空を見上げた。


「王よ。光が…」

「我らが主が覚醒をしたのです」


その横顔は悲しげだった。


「お優しいご主人は力を求めない。なのに天は残酷ですね」


前世の記憶を持つアルフは知っている。
平凡であるが、心優しく争いを好まない優しい飼い主を。

警察犬になれず短命だと言われたアルフを大事に育て、成犬まで生きられないと言われながらもその運命を変えたのだ。


献身的な世話をしたことで、アルフは病を克服し丈夫な体を手に入れた後は警察犬として活躍を果たした。


すべては優しい主人を守りたいがためだ。
前世ではこの世界のような争いごとはなくとも危険がいっぱいだった。

警察犬になったのは世間の役に立ちたいわけではない。
犯罪者を捕まえたいとか、警察の役に立ちたいなんて理由ではない。

大事な主人を守りたいだけだった。
最初は嘱託犬から始まり特例でお呼びがかかったが、アルフからすれば不愉快だった。

捨てておいて今更だった。
しかし当時は誘拐事件や、殺人事件も多く主人が悲しむならばと了承した。


同時にアルフのような理不尽な扱いを受けた警察犬見習いの犬もいた。
ならば自分がお手本になればいい。

警察犬失格のレッテルを貼られても活躍の場があればいいと思った。


「ご主人が覚醒した以上ごく潰し共は動くでしょう」

「ならば今のうちに食い殺しますか?人間の国一つ滅ぼすなど一瞬です」

「そうです!我らの主が傷つくなら今のうちに埋めましょう!」


アルフの周りに集まるのは通常のフェンリルだ。
ただし見てくれは愛らしい子犬にしか見えないのだが、言っていることはかなり残酷だ。


「待ちなさい。我らのご主人はお優しい方です。食い殺して済むなら簡単ですが」

「ですが!主を利用する人間に使われるなど誇り高き我が一族の名折れです」

「そうです!人間如きに馬鹿にされるなど許しがたい!」


フェンリルに限らず長命種族はプライドが高い。
故に寿命が短く、弱い人間に対しても従魔契約は許さない。


従魔契約をしても服従しない種族だったのだが…


「我らの主を悲しませることをしてはなりません」

「むっ…では、どうされるのです」

「早く我が国に主をお迎えしたいのに」

「これでは、何時まで経っても毛づくろいをしていただけません」


フェンリル一族は主人となる者に毛づくろいをしてもらう事こそが信頼の証だった。
あわよくば人間の国ではなくワンダフル王国に住んでほしいと思っていた。


「ご主人に毛づくろいをしてもらう為にも今は辛抱です!」


例え世間では伝説の獣と呼ばれようと中身は犬だった。



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