巻き込まれて婚約破棄になった私は静かに舞台を去ったはずが、隣国の王太子に溺愛されてしまった!

ユウ

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45.堕ちたヒロイン

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ナターシャ様の背後から嫌な影が覆いつくしていた。
恐らく彼女は光から闇に変わってしまった。


もし、ゲーム上ならば彼女は光の道を歩んだはずだ。
けれど好き勝手に行動して欲に溺れた結果、彼女は染まってしまった。

そして攻略対象を間違った形で自分に向けさせたのかもしれない。


「こういうのを考えたのよ。最高のシナリオを」

「最高のシナリオ?」


不敵に微笑む彼女の笑みが恐ろしく感じた。

「本当の悪役令嬢がヒロインを襲おうとした。けれどヒロインは悪役令嬢を止めようとしたけど止む無く不幸となったとね?」

「そんな…そんな事許されるわけないでしょ」

「大丈夫よ。死なない程度にしてあげる。前も死にかけたんだし大丈夫でしょ?どうせ傷物になっているんだしいいじゃない」


足元に電撃が走る。


逃げるにも歩けない。
結界を作るにしてもさっきの攻撃で怪我をして魔法を発動できない。

出来たとしても完全に暴走している彼女の魔法を防ぐなんてできない。

「そうね…顔に傷を作って二度と外に出られないようにすればいいわ」

「やめて…」

「醜い顔になればウィル様も目を覚ますわ。フフッ…私の為に犠牲になりなさい」


嫌だ。
そんな…私は!


「やだ…ウィル様」


怖い。
死の恐怖を味わったのに。

ウィル様に醜くなった顔を見て拒絶されたら。


――耐えられない!



「雷よ轟け!彼の者に激しい一撃を!」


もうダメ!


私は覚悟をして目を閉じようとした時だった。



「えっ…」


「なっ!」


私に雷が落ちる事はなかった。


「見えない壁?」

「どうしなっているのよ!雷よ!」


再び私に雷をぶつけようとするも。


バチバチ!


「えっ…きゃああああ!」

今度は雷がはね返り、ナターシャ様に激しい一撃が当たる。


「これは…」


「魔女めが」

低い声が響いた。



「ウィル様…」

「ジル、申し訳ありません。遅くなって」

「どうして」


「ジゼル!無事か!」

お兄様とお父様が真っ青な表情になりながら部屋に入って来た。
服が破れ、傷を負っていた。


「アンリエット様から連絡が来た。あの女が逃げ出したと…邸にはカントリー夫人が倒れていたそうだ」

「それって…」

「ああ、禁じられた魔法を」


彼女があそこまで強い魔力を得たのは古の魔法を使ったからだと?

その為に義母を犠牲にしたなんて。


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