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天族の正体
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いきなり自分を無視された形になったリドさまは、顔を赤黒くさせて怒鳴った。
「おい、ついに正体を現したな。僕だけでなく、父上に向かってそんな口を開くなんて無礼だぞ!」
鼻血でも出すんじゃないかと心配になるような顔色で、周囲に向かって怒鳴りつける。
「衛兵、衛兵! 今すぐこの道化を捕まえろ!」
しかし、衛兵さんたちは陛下が片手を挙げて制しているため動かない。
それを確認してから、ルールーさんはもう一度口を開いた。
「王よ。我らの正体、ここで明かしてもよろしいか?」
――正体?
きっとみんな、頭に疑問符が浮かんだと思う。
天族はさすらいの民。芸事を鍛え、交易品を持って各地を回り、旅をしながら商売をする一族。
この国では天領というわずかな土地を王に与えられ、そこにしがみつくように暮らしている人々もいるが、総じて貧しい。文化も教育も教養も、自分たちには遠く及ばない。
そういうイメージを、貴族はみんな持っている。
価値があるのは彼らの見目の美しさと芸術だけ。そう決めつけて見下している。
わたしもまた、ルールーさんたちと接するまでは、彼らの技術や知識があれほど優れていることを知らなかった。
ルールーさんの言葉に違和感をもった会場のすべてのまなざしが、
吹き抜けの大階段の上から見下ろしている陛下に集中する。
陛下は苦いものでも無理やり飲み込んだような顔をして一連の話を聞いていたが、
ルールーさんの問いかけに長い時間をかけてようやく頷いてみせた。
そのとたん、大広間の雰囲気ががらりと変わる。
爽やかな風が吹いてきて、澱んだ空気が一掃されたかのように。
舞の披露時に楽器を奏でていた天族たちが、もう一度壮大な音楽を大広間に響かせているのだと、
この場にいるどれほどの人が気づいただろう。
「我らは天領の守護者より遣わされた使者である! 王の求めに応じ、王の子と祝福された娘を見定めるために、今日まで雑技団と身分を偽り情報を集めていた!」
ルールーさんの声色が変わる。いつもの女性のような言葉遣いをやめて、
演劇みたいな口調で堂々と口上を述べる。
「我ら天族、王の子の正体見たり。他者を侮り、陥れ、貶める器量は王の器にあらじ!」
周囲のまなざしは混乱を極め、ただ彼の言葉を受け入れることしかできずにいる。
わたしはその様子を見て、ふと以前のことを思い出した。
『人の心を動かすのに必要なのは、ドラマなのよ』
以前ルールーさんは、そう言っていた。
すべては、この劇を盛り上げるための演出なのかもしれない。
道化師から突如明かされる正体、荘厳な音楽。
まるで本物の芝居に取り込まれたかのように、周囲から現実感が失われていく。
ただ、ルールーさんの言葉、その姿から目が離せなくなる。
「我ら天族こそ、盟約の主。古の聖女の守り手にして、古き王の友人。
古の聖女が王に嫁いだことで天族は王に服従したが、その末裔であるシェンブルクの娘を王の子が汚すのであれば、我ら天族は王との盟約を放棄する。
これより先、天領がこの国に実りをもたらすことはないだろう」
陶然としていた人々の中で、最初に正気を取り戻したのはリドさまだった。
嘲るように笑って、余裕たっぷりと言った風情で、
「天領がなくなったところで、痛くもかゆくもない。国土の二パーセントにも満たない領地だ。たかが知れている」
と言ったが、その言葉にかぶせるように忠言する声が大広間に低く響いた。
「……恐れながら、殿下。天領の実りとは、古の聖女が天族に与えた知識と技術で産み出される交易品の数々です。
優れた化粧品のみならず、医薬品ひとつとっても、天領の実りが我が国に与える恩恵は計り知れません」
声を辿ると、そこにいたのは父だった。
いつものように眉間に皺を浮かべ、厳しい表情でリドさまを見ている。
「……嘘だろ?」
リドさまは戸惑ったように視線をさまよわせ陛下を見るが、陛下は黙ったままだった。
天族が用いる化粧品が、この国でよく使われるものよりもずっと品質がよいことは、わたしはすでに知っている。
しかしなぜ父が、それほどまでに天族に詳しいのだろう。
知っていたのなら、どうしてもっと前からわたしたち姉妹に話してくれなかったのだろう。
「な、なぜ僕が知らない? なぜ今まで教えなかったんだ?」
わたしと同じ疑問をもったリドさまの質問に、父は淡々と答えた。
「盟約の一部です。天族に関わりをもつ家、その跡目を継ぐものにだけ、天族の正体を教えるべし。隠匿と保護の代償として、天領は実りを我が国に分け与える。
天領の実りは数が少ない。争って奪い合えば、今のような実りをもたらすことができなくなりますから」
そこで父は、わたしとムールカの方をちらりと見やった。
その視線を受けて、もしかしたら、と思う。
わたしたちに天族のことを教えなかったのは、わたしたちが家を継ぐ男児ではなかったからなのかもしれない。
ほとんど家にいない父だけど、もしわたしがちゃんと立派にリドさまに嫁いでいたら、教えてくれることもあったのかもしれない。
「我らがこの地に参ったのはもとより、王の子を見定めるためであった。聖女の血を引くシェンブルクの娘を嫁がせるにふさわしい人物かどうか。天領を委ねるのにふさわしい人物かどうか」
「天族の使いよ、結果はどうでしたか?」
ルールーさんは口上を続ける。
それを受けて、陛下がずっと閉じていた口を開いた。
天族に、陛下が問いかける。
それは、ルールーさんの口上がすべて真実であると、陛下が認めたということだ。
つまりルールーさんたちはただの雑技団ではなくて、天族の長から継嗣となるリド殿下を見定めるために遣わされた使者だった、ということになる。
足元が、先ほどとは違った意味でふわふわしてきた。
今日までの二か月間、ルールーさんたちはリドさまとわたしを見極めるために、ずっと一緒に過ごしてくれたのか。
リドさまは、わたしは、彼らの目にどう映っていたのだろう。
「落第だ。この者が継嗣である限り、我ら天族が王に従うことはない」
ルールーさんの冷え切った言葉に、リドさまがまた反応する。
「言ってろよ! 天領なんてちっぽけな土地、軍を差し向ければすぐに制圧できるんだからな!」
だがその反応に、今度はバッカード伯が反論した。
「天領は高山。練兵も進軍も並大抵のことではございません。地の利を知り尽くしている天族相手に戦ったところで、わが軍にも多大な被害が出るでしょう」
長らく国境の守護を任されている辺境伯だからこそ言える正論だった。
「また、天族の実りとは聖女の知識を発展させ、天族自身が蓄えた技術によるもの。
武力で制圧したところで、天族の協力が得られないのであれば、我が国が今と同様の実りを得るのはほぼ不可能です」
父もまた、リドさまを止める。
父はなぜか、すっきりしたような顔をしていた。憑き物が落ちた、とでも言うような。
それでいて、リド殿下を見る目は冷たい。
わたしが彼と婚約したくないとどれだけ言っても聞く耳をもたなかったあの人だが、
あの人なりに、何か考えたことがあったのかもしれない。
「ちょっと、待ちなさいよ! どうして私を無視して話を進めているの?」
父の反論にまた殿下は押し黙り、一度は静寂が包もうとしていた大広間にまた響く声。
リドさまがもう頼りにならないと思ったのか、躍り出たのはムールカだった。
「ルミシカの手で傷ついたのは私。ルミシカの罪状を訴えたのも私よ。
私が言っているのは、ルミシカが殿下の婚約者にふさわしくないという話だわ。それがなぜ、リド殿下の進退に関わってくるっていうの?」
「おい、ついに正体を現したな。僕だけでなく、父上に向かってそんな口を開くなんて無礼だぞ!」
鼻血でも出すんじゃないかと心配になるような顔色で、周囲に向かって怒鳴りつける。
「衛兵、衛兵! 今すぐこの道化を捕まえろ!」
しかし、衛兵さんたちは陛下が片手を挙げて制しているため動かない。
それを確認してから、ルールーさんはもう一度口を開いた。
「王よ。我らの正体、ここで明かしてもよろしいか?」
――正体?
きっとみんな、頭に疑問符が浮かんだと思う。
天族はさすらいの民。芸事を鍛え、交易品を持って各地を回り、旅をしながら商売をする一族。
この国では天領というわずかな土地を王に与えられ、そこにしがみつくように暮らしている人々もいるが、総じて貧しい。文化も教育も教養も、自分たちには遠く及ばない。
そういうイメージを、貴族はみんな持っている。
価値があるのは彼らの見目の美しさと芸術だけ。そう決めつけて見下している。
わたしもまた、ルールーさんたちと接するまでは、彼らの技術や知識があれほど優れていることを知らなかった。
ルールーさんの言葉に違和感をもった会場のすべてのまなざしが、
吹き抜けの大階段の上から見下ろしている陛下に集中する。
陛下は苦いものでも無理やり飲み込んだような顔をして一連の話を聞いていたが、
ルールーさんの問いかけに長い時間をかけてようやく頷いてみせた。
そのとたん、大広間の雰囲気ががらりと変わる。
爽やかな風が吹いてきて、澱んだ空気が一掃されたかのように。
舞の披露時に楽器を奏でていた天族たちが、もう一度壮大な音楽を大広間に響かせているのだと、
この場にいるどれほどの人が気づいただろう。
「我らは天領の守護者より遣わされた使者である! 王の求めに応じ、王の子と祝福された娘を見定めるために、今日まで雑技団と身分を偽り情報を集めていた!」
ルールーさんの声色が変わる。いつもの女性のような言葉遣いをやめて、
演劇みたいな口調で堂々と口上を述べる。
「我ら天族、王の子の正体見たり。他者を侮り、陥れ、貶める器量は王の器にあらじ!」
周囲のまなざしは混乱を極め、ただ彼の言葉を受け入れることしかできずにいる。
わたしはその様子を見て、ふと以前のことを思い出した。
『人の心を動かすのに必要なのは、ドラマなのよ』
以前ルールーさんは、そう言っていた。
すべては、この劇を盛り上げるための演出なのかもしれない。
道化師から突如明かされる正体、荘厳な音楽。
まるで本物の芝居に取り込まれたかのように、周囲から現実感が失われていく。
ただ、ルールーさんの言葉、その姿から目が離せなくなる。
「我ら天族こそ、盟約の主。古の聖女の守り手にして、古き王の友人。
古の聖女が王に嫁いだことで天族は王に服従したが、その末裔であるシェンブルクの娘を王の子が汚すのであれば、我ら天族は王との盟約を放棄する。
これより先、天領がこの国に実りをもたらすことはないだろう」
陶然としていた人々の中で、最初に正気を取り戻したのはリドさまだった。
嘲るように笑って、余裕たっぷりと言った風情で、
「天領がなくなったところで、痛くもかゆくもない。国土の二パーセントにも満たない領地だ。たかが知れている」
と言ったが、その言葉にかぶせるように忠言する声が大広間に低く響いた。
「……恐れながら、殿下。天領の実りとは、古の聖女が天族に与えた知識と技術で産み出される交易品の数々です。
優れた化粧品のみならず、医薬品ひとつとっても、天領の実りが我が国に与える恩恵は計り知れません」
声を辿ると、そこにいたのは父だった。
いつものように眉間に皺を浮かべ、厳しい表情でリドさまを見ている。
「……嘘だろ?」
リドさまは戸惑ったように視線をさまよわせ陛下を見るが、陛下は黙ったままだった。
天族が用いる化粧品が、この国でよく使われるものよりもずっと品質がよいことは、わたしはすでに知っている。
しかしなぜ父が、それほどまでに天族に詳しいのだろう。
知っていたのなら、どうしてもっと前からわたしたち姉妹に話してくれなかったのだろう。
「な、なぜ僕が知らない? なぜ今まで教えなかったんだ?」
わたしと同じ疑問をもったリドさまの質問に、父は淡々と答えた。
「盟約の一部です。天族に関わりをもつ家、その跡目を継ぐものにだけ、天族の正体を教えるべし。隠匿と保護の代償として、天領は実りを我が国に分け与える。
天領の実りは数が少ない。争って奪い合えば、今のような実りをもたらすことができなくなりますから」
そこで父は、わたしとムールカの方をちらりと見やった。
その視線を受けて、もしかしたら、と思う。
わたしたちに天族のことを教えなかったのは、わたしたちが家を継ぐ男児ではなかったからなのかもしれない。
ほとんど家にいない父だけど、もしわたしがちゃんと立派にリドさまに嫁いでいたら、教えてくれることもあったのかもしれない。
「我らがこの地に参ったのはもとより、王の子を見定めるためであった。聖女の血を引くシェンブルクの娘を嫁がせるにふさわしい人物かどうか。天領を委ねるのにふさわしい人物かどうか」
「天族の使いよ、結果はどうでしたか?」
ルールーさんは口上を続ける。
それを受けて、陛下がずっと閉じていた口を開いた。
天族に、陛下が問いかける。
それは、ルールーさんの口上がすべて真実であると、陛下が認めたということだ。
つまりルールーさんたちはただの雑技団ではなくて、天族の長から継嗣となるリド殿下を見定めるために遣わされた使者だった、ということになる。
足元が、先ほどとは違った意味でふわふわしてきた。
今日までの二か月間、ルールーさんたちはリドさまとわたしを見極めるために、ずっと一緒に過ごしてくれたのか。
リドさまは、わたしは、彼らの目にどう映っていたのだろう。
「落第だ。この者が継嗣である限り、我ら天族が王に従うことはない」
ルールーさんの冷え切った言葉に、リドさまがまた反応する。
「言ってろよ! 天領なんてちっぽけな土地、軍を差し向ければすぐに制圧できるんだからな!」
だがその反応に、今度はバッカード伯が反論した。
「天領は高山。練兵も進軍も並大抵のことではございません。地の利を知り尽くしている天族相手に戦ったところで、わが軍にも多大な被害が出るでしょう」
長らく国境の守護を任されている辺境伯だからこそ言える正論だった。
「また、天族の実りとは聖女の知識を発展させ、天族自身が蓄えた技術によるもの。
武力で制圧したところで、天族の協力が得られないのであれば、我が国が今と同様の実りを得るのはほぼ不可能です」
父もまた、リドさまを止める。
父はなぜか、すっきりしたような顔をしていた。憑き物が落ちた、とでも言うような。
それでいて、リド殿下を見る目は冷たい。
わたしが彼と婚約したくないとどれだけ言っても聞く耳をもたなかったあの人だが、
あの人なりに、何か考えたことがあったのかもしれない。
「ちょっと、待ちなさいよ! どうして私を無視して話を進めているの?」
父の反論にまた殿下は押し黙り、一度は静寂が包もうとしていた大広間にまた響く声。
リドさまがもう頼りにならないと思ったのか、躍り出たのはムールカだった。
「ルミシカの手で傷ついたのは私。ルミシカの罪状を訴えたのも私よ。
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