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モモの目的
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美しい微笑みは、かえって作り物みたいだ。彼女の操る、ガラス玉の瞳の人形と同じように。
そんな笑顔を見ながら、わたしはこんなことを考える。
おそらくモモは、最初からわかっていたのだ。
きっと、姉のロザリーが癒しの魔力を発現させたときから。
自分はお役御免になり、何もしなくてもいつかは嵌められて、特別製の地下牢に収容されることを察していた。
だから彼女は、自ら捕まることを選んだ。そうすることで有利な条件を引き出し――自分が使役できる人形を牢屋に持ち込むことに成功した。
そしてモモはそれを使い、外の情報を集めている。
そんなことをする理由は、ひとつだ。
モモは、いずれこの牢屋を脱出し、自分をこんな目に遭わせた者たちへ復讐する機会が訪れるのを、待っているのだ。
わたしはそう考えた。
モモは昔から、自分の敵に容赦しないところがある。幼馴染であるわたしはそれを知っていたし――きっとその癖は、今も変わっていない。
「そう……モモ。あなた、自分の復讐のために、令嬢たちを利用することにしたのね?」
「あら?」
モモは驚いたような声を出したが、わたしは確信をもってこう続ける。
「とぼけなくてもいいわ。わたしがここに来たのは、令嬢たちの噂を聞いたからよ。『獄中にいる令嬢に相談すれば、裏切った婚約者へ復讐する方法を教えてもらえる』という噂」
モモが閉じ込められているこの牢屋に来れば、『獄中令嬢』から、自分を裏切った婚約者へ復讐する方法を教えてもらえる。
わたしは、その噂を聞いてここに来た。
「モモ。あなたは恋人に裏切られた令嬢たちに、相手に復讐するための策を授けているんでしょう?」
「ええ……そうです」
「そしてその見返りに、あなたが使役する人形を外の世界に連れ出させて、少しずつ貴族社会に紛れ込ませるんでしょう。そうやって、あなたは人形たちから外の世界の情報を得ているんだわ」
「……まあ、そうですね」
「そうよね。そしてその人形たちを使って、あなたは自分の復讐のための工作をしているんでしょう? 王太子やその妃、あなたを陥れた人たちに復讐するのが、あなたの目的。違う?」
「あらあら? ええと……うーん?」
小首をかしげて煮え切らない態度をとるモモに、わたしは不敵に笑ってこう告げた。
「いいわ。わたしも、その作戦に乗ってあげる」
「と、いいますと?」
「モモ、わたしもあなたの復讐に手を貸す。その代わりに、今までここに来た令嬢たちと同じように、あなたもわたしの復讐に協力してちょうだい」
所詮この世はギブアンドテイクだ。
自分に何かしてほしければ、相手に何かをしてあげるべきだ。
さらにいえば、その条件を最初に決めておくべきなのだ。どちらかの思い込みに頼らずに。
婚約者にどんなに尽くしたところで裏切られた経験から、わたしはそれを学んだ。
わたしが『お互いの復讐に協力しよう』と告げると、モモはもう一度、あの美しい笑顔を見せた。
「もちろんいいですよ。でもアイラさんが相手なら、私は対価なんて要求しませんよ?」
「そうはいかないわ。正当な労働には、正当な対価を用意するべきよ」
モモはますます笑みを深めて「アイラさんはそういう人でしたね」と言った。
「あなたのような人を裏切るなんて、カート・ヴィゼンは本当に見る目がない」
「そう、カートのことよ。モモ、あなた、どこまで知っているの?」
「そんなに詳しくはないですよ。……カートがあなたに仕事を押し付けておきながらリオナ・ヘッセと遊び惚けて浮気をしたことと、ばっちり情事の深みにはまりこんだところでリオナがあなたに浮気現場を目撃させたことくらいです」
「ほとんど全部じゃない! 『傀儡人形』でのぞき見していたのね!?」
「ええ。ですが私にわかるのは、何が起こったかという事実だけ。当事者の心情はわかりません。だからまずは、何があったか、お話してくれますね?」
そんな笑顔を見ながら、わたしはこんなことを考える。
おそらくモモは、最初からわかっていたのだ。
きっと、姉のロザリーが癒しの魔力を発現させたときから。
自分はお役御免になり、何もしなくてもいつかは嵌められて、特別製の地下牢に収容されることを察していた。
だから彼女は、自ら捕まることを選んだ。そうすることで有利な条件を引き出し――自分が使役できる人形を牢屋に持ち込むことに成功した。
そしてモモはそれを使い、外の情報を集めている。
そんなことをする理由は、ひとつだ。
モモは、いずれこの牢屋を脱出し、自分をこんな目に遭わせた者たちへ復讐する機会が訪れるのを、待っているのだ。
わたしはそう考えた。
モモは昔から、自分の敵に容赦しないところがある。幼馴染であるわたしはそれを知っていたし――きっとその癖は、今も変わっていない。
「そう……モモ。あなた、自分の復讐のために、令嬢たちを利用することにしたのね?」
「あら?」
モモは驚いたような声を出したが、わたしは確信をもってこう続ける。
「とぼけなくてもいいわ。わたしがここに来たのは、令嬢たちの噂を聞いたからよ。『獄中にいる令嬢に相談すれば、裏切った婚約者へ復讐する方法を教えてもらえる』という噂」
モモが閉じ込められているこの牢屋に来れば、『獄中令嬢』から、自分を裏切った婚約者へ復讐する方法を教えてもらえる。
わたしは、その噂を聞いてここに来た。
「モモ。あなたは恋人に裏切られた令嬢たちに、相手に復讐するための策を授けているんでしょう?」
「ええ……そうです」
「そしてその見返りに、あなたが使役する人形を外の世界に連れ出させて、少しずつ貴族社会に紛れ込ませるんでしょう。そうやって、あなたは人形たちから外の世界の情報を得ているんだわ」
「……まあ、そうですね」
「そうよね。そしてその人形たちを使って、あなたは自分の復讐のための工作をしているんでしょう? 王太子やその妃、あなたを陥れた人たちに復讐するのが、あなたの目的。違う?」
「あらあら? ええと……うーん?」
小首をかしげて煮え切らない態度をとるモモに、わたしは不敵に笑ってこう告げた。
「いいわ。わたしも、その作戦に乗ってあげる」
「と、いいますと?」
「モモ、わたしもあなたの復讐に手を貸す。その代わりに、今までここに来た令嬢たちと同じように、あなたもわたしの復讐に協力してちょうだい」
所詮この世はギブアンドテイクだ。
自分に何かしてほしければ、相手に何かをしてあげるべきだ。
さらにいえば、その条件を最初に決めておくべきなのだ。どちらかの思い込みに頼らずに。
婚約者にどんなに尽くしたところで裏切られた経験から、わたしはそれを学んだ。
わたしが『お互いの復讐に協力しよう』と告げると、モモはもう一度、あの美しい笑顔を見せた。
「もちろんいいですよ。でもアイラさんが相手なら、私は対価なんて要求しませんよ?」
「そうはいかないわ。正当な労働には、正当な対価を用意するべきよ」
モモはますます笑みを深めて「アイラさんはそういう人でしたね」と言った。
「あなたのような人を裏切るなんて、カート・ヴィゼンは本当に見る目がない」
「そう、カートのことよ。モモ、あなた、どこまで知っているの?」
「そんなに詳しくはないですよ。……カートがあなたに仕事を押し付けておきながらリオナ・ヘッセと遊び惚けて浮気をしたことと、ばっちり情事の深みにはまりこんだところでリオナがあなたに浮気現場を目撃させたことくらいです」
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