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『復讐レシピ』の注意事項
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『復讐レシピ』の注意事項。
『レシピに沿って誰かに噂を吹き込むときは、カート自身に問題があることを、明確に伝えてください』
これを最初に聞いたときは、意図がよくわからなかったのでモモに質問をした。
「モモ、それはどういうこと?」
『あからさまにネガティブな悪口を言うだけでは、私の『復讐レシピ』は完成しない、ということです』
「……つまり、わたしは何をすればいいの?」
『難しく考えることはありません。噂を吹き込むとき、最後にさりげなく、『それでもアイラ・ザクセンはカート・ヴィゼンを信じている』と相手に思わせればいいのです』
「そんなこと、できるかしら。わたしはまったくカートのことを信じてなんていないのに」
『あらあら。そうですね……噂を吹き込んだ最後に、微笑みながら『でも、カートはやればできる人だと思うの』とでも言っておけば、十分ですよ』
わたしはモモの言うとおりに行動し――そして、その通りになった。
カート・ヴィゼンはコンプレックスの塊であり、婚約者であるアイラ・ザクセンより劣っているという事実に耐えきれず他の女との浮気に逃げた。
しかしアイラ・ザクセンは健気にもカートを信じ、彼が戻ってくるのを、彼の仕事を肩代わりしながら待っている。
あの二人が浮気に励み、恋にうつつを抜かしている間にわたしが多くの人に吹き込んだ噂は、次第にわたしの手を離れ、貴族社会全体で囁かれるようになった。
噂話はほとんど事実として扱われ、カートとリオナにまともに相手をしようとする者はいなくなった。
だが、カートたちは、自分たちが孤立していることに気づいていない。社交界にすでに味方が誰もいないことを知らないまま、今も呑気に浮気を続けている。
この状況は、モモの作戦通りだった。
そのことが、わたしは少し怖い。
モモの『復讐レシピ』の通りに動いたのはわたしだ。しかし、あまりにもうまくことが運びすぎていることが、ほんの少し、怖かった。
「モモ……ものすごく性格が悪い作戦よ、これ! 本気でこんなレシピを、実行していいの!?」
レシピに従って行動するたび、善良な人々を騙している気がして良心が摩耗してきたわたしは、自室で誰もいないことを確認するとモモから預かった人形に話しかける。
すると、人形はすぐに動き出して、上品な仕草で自分の手を自分の口に当てた。
『まあ! 心外です。私が考えた中では、これが一番穏便な方法ですよ』
「他にどんなことを考えていたっていうのよ……!」
『あらあら、アイラさん。本当に知りたいですか?』
「……いいえ、やめておくわ。何を聞かされるのかわかったものじゃないから」
わたしはそう言ったのだが、モモの言葉を伝える人形は、次にこんなことを語りだした。
『アイラさんにはわからないと思いますが、人は、虐めようと思って人を虐めるわけではありません。それが正しい行いだと信じているからこそ人を虐めるのですよ』
「……? 何の話よ、モモ?」
『標的に復讐するために大切なのは、周りを巻き込むことです。周囲の人間に、標的を陥れ、貶める理由……『正しさ』を用意してあげることが大切なんです。たったそれだけで、周囲の人間は標的を見限り、容赦ない攻撃を始めるんですよ』
モモが何を言っているのか、よくわからなくて黙るしかないわたしの前で、人形はこてんと首をかしげると態度を改めた。
『さて、もう十分にアイラさんの流した噂は知れ渡った頃でしょう』
そして、モモの言葉を代弁する人形は、モモのようなガラス玉の瞳をまっすぐにわたしに向けて、こんなことを言い出した。
『それではそろそろ、『復讐レシピ』その5の手順。リオナ・ヘッセへの嫌がらせを始めましょうか』
『レシピに沿って誰かに噂を吹き込むときは、カート自身に問題があることを、明確に伝えてください』
これを最初に聞いたときは、意図がよくわからなかったのでモモに質問をした。
「モモ、それはどういうこと?」
『あからさまにネガティブな悪口を言うだけでは、私の『復讐レシピ』は完成しない、ということです』
「……つまり、わたしは何をすればいいの?」
『難しく考えることはありません。噂を吹き込むとき、最後にさりげなく、『それでもアイラ・ザクセンはカート・ヴィゼンを信じている』と相手に思わせればいいのです』
「そんなこと、できるかしら。わたしはまったくカートのことを信じてなんていないのに」
『あらあら。そうですね……噂を吹き込んだ最後に、微笑みながら『でも、カートはやればできる人だと思うの』とでも言っておけば、十分ですよ』
わたしはモモの言うとおりに行動し――そして、その通りになった。
カート・ヴィゼンはコンプレックスの塊であり、婚約者であるアイラ・ザクセンより劣っているという事実に耐えきれず他の女との浮気に逃げた。
しかしアイラ・ザクセンは健気にもカートを信じ、彼が戻ってくるのを、彼の仕事を肩代わりしながら待っている。
あの二人が浮気に励み、恋にうつつを抜かしている間にわたしが多くの人に吹き込んだ噂は、次第にわたしの手を離れ、貴族社会全体で囁かれるようになった。
噂話はほとんど事実として扱われ、カートとリオナにまともに相手をしようとする者はいなくなった。
だが、カートたちは、自分たちが孤立していることに気づいていない。社交界にすでに味方が誰もいないことを知らないまま、今も呑気に浮気を続けている。
この状況は、モモの作戦通りだった。
そのことが、わたしは少し怖い。
モモの『復讐レシピ』の通りに動いたのはわたしだ。しかし、あまりにもうまくことが運びすぎていることが、ほんの少し、怖かった。
「モモ……ものすごく性格が悪い作戦よ、これ! 本気でこんなレシピを、実行していいの!?」
レシピに従って行動するたび、善良な人々を騙している気がして良心が摩耗してきたわたしは、自室で誰もいないことを確認するとモモから預かった人形に話しかける。
すると、人形はすぐに動き出して、上品な仕草で自分の手を自分の口に当てた。
『まあ! 心外です。私が考えた中では、これが一番穏便な方法ですよ』
「他にどんなことを考えていたっていうのよ……!」
『あらあら、アイラさん。本当に知りたいですか?』
「……いいえ、やめておくわ。何を聞かされるのかわかったものじゃないから」
わたしはそう言ったのだが、モモの言葉を伝える人形は、次にこんなことを語りだした。
『アイラさんにはわからないと思いますが、人は、虐めようと思って人を虐めるわけではありません。それが正しい行いだと信じているからこそ人を虐めるのですよ』
「……? 何の話よ、モモ?」
『標的に復讐するために大切なのは、周りを巻き込むことです。周囲の人間に、標的を陥れ、貶める理由……『正しさ』を用意してあげることが大切なんです。たったそれだけで、周囲の人間は標的を見限り、容赦ない攻撃を始めるんですよ』
モモが何を言っているのか、よくわからなくて黙るしかないわたしの前で、人形はこてんと首をかしげると態度を改めた。
『さて、もう十分にアイラさんの流した噂は知れ渡った頃でしょう』
そして、モモの言葉を代弁する人形は、モモのようなガラス玉の瞳をまっすぐにわたしに向けて、こんなことを言い出した。
『それではそろそろ、『復讐レシピ』その5の手順。リオナ・ヘッセへの嫌がらせを始めましょうか』
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