聖なる祈りは届かない

浅瀬

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【Memory_1】君と共に

5.冬の国

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 「いや、リードグレン王国こそ、俺は知らないけど……。」

 静かな森に、俺の弱々しい声が吸い込まれた。
 教養が薄く、外国のことはあまりわからないが、そんな地名がないことくらいは何と無くわかる。

 「…もしかして、ミコトはここの世界ではない、他の世界から来たの?」

 「気が付いたら、ここに居たんだ。それもわからない」

 「帰る家は?」

 「…そんなの、もともとないよ。」

 彼女と終わりのない平行線の会話をしていると、段々と虚しくなってきた。
 俺はこの土地では異端なのだろう。
 どうせ脚も動かないだろうし、ここで野犬に襲われるのを待つか、凍死を待つだけだ。
 なんなら、火葬より数倍タチが悪い。


「_____なら」

 リリィは立ち上がった。
 彼女に呼応するかの様に優しい風で綺麗な髪が靡く。
 風で乱れた髪を少し鬱陶しそうに整えると、俺に手を差し伸べてきた。

 行く宛もなく途方に暮れかかって1人で病んでいたが、強い戸惑いをみせる俺。
 少女はそんな俺を、まるで野良犬でも拾うかのように笑った。

 「怖がらなくてもいいよ。でも一つだけお願い。」

 少女は恥ずかしそうに一度俯くと、すぐに顔を上げた。
 少し頬が赤く染まっている。

 今すぐ目の前から立ち去れとかそんなお願いだったらどうしよう。
 確かに俺は何もできないし立てもしないしなんならいつ死ぬかわからないし、いっそ…

 「私が…「いっそのこと殺してくれ!!!!」

 「ミコト。何があったのかはまだ分からないけど…命は粗末にしちゃダメだよ。」

 「______え?」

 「もう、そんなことが言いたかったんじゃないの!
  私が、帰る家になるから!だから一緒に帰ろうって言ったの!」

 すごく身構えてしまったのが恥ずかしい。
 彼女も相当恥ずかしかったのか、2人してお互いに視線を合わせることが出来ない。

 「ごめん、リリィ。君の言っている事は分かるが意図がイマイチよくわからない。
  君のメリットが見当たらないんだ。
  ただでさえ、俺素性がわからないと思うし…。」

 「ごちゃごちゃうるさいなぁ。
  ミコトの時間を私に頂戴って言ってるの!余計なこと考えるのは後!」

 どんだけ考えても俺にはマイナス要素しか見当たらない。
 言ってることが支離滅裂なのはわかっているけれど、歩けもしない足手まといがこんな森みたいな場所歩けるわけもない。
 
 「待って、リリィ「行こ!本当に日が暮れちゃう!」

 俺は自分の足のことを説明しようと彼女を制す為手を差し出したが、その手を取られ、引っ張られて無理矢理立たされた。
 
 「おいおい、嘘だろ…。」

 彼女に引っ張られて立ち上がったら、自分の足で立つことが出来た。
 足も変な方向に曲がっていない。人間として立てている。歩行ができる。
 あまりの事実に驚きが隠しきれないが、それをリリィに話すのはまた後にしよう。

 「どうしたの?」

 「リリィ…その、俺なんかで良ければ。」

 遅れたけど、と付け加えて先程の返事を返してリリィの握ったら折れてしまいそうなくらいか細い手を握り返した。

 「返事が遅いよ、ミコト!」

 そう言ってまた、笑った。
 出会ってから数分で色んなことが起きすぎた。
 色んな自分を取り巻く環境が変わっていた。

 記憶が混濁している初対面の俺を拾った君も変だけど。
 初対面のしかも女の子の家に泊まらせていただく俺もどうかと思う。

 だけど、どこか嬉しそうな彼女に断り文句なんて何も言い出せずにいた。
 駆け落ちみたいな口説き文句で口説かれ、意味不明だけど、それが、俺と君との始まり。
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