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【Memory_1】君と共に
9.再会
しおりを挟むあの日から1ヶ月と8日が経過した。
どうやら俺とリリィが出会ったのが冬の終わりかけだったらしい。
季節の変わり目で特段寒い時期に出会ったから、てっきり冬だと勘違いしていた。
そんなに月日が経てば、いい加減異世界の自給自足生活にも大分慣れてきた所だ。
あれから、悪夢かと言うくらいに繰り返されてきた夢は、なぜかピタリと見なくなった。
最近では朝まで熟睡でき、寝坊することも…しばしば。
毎朝起きるたびに、自分が生きている事を何度も再確認する。
もしかしたら死後の世界かもしれない、なんて事を思ったり。
どう言うことか、俺の余命は日に日に伸びつつある。
死ぬ死ぬ詐欺は、あまりにも酷い。
そんな俺は今、2人が出会った森の奥のさらに奥地。
春になったら必ず来ると言うリリィの秘密の場所へ案内してもらっている最中。
この世界には珍しい色の花や果物が多く、食用かどうかすらも分からない。
自給自足生活の難点だろうが、毎日持ち帰っては食用か否かで2人で頭を悩ませたりしている。
そんな生活も、案外悪くないと思っている。
「着いたよ!ミコト!」
草木を掻き分け陽の光と共に目に広がった世界は、とても綺麗で、どこか既視感があった。
“そこは緑が生い茂る綺麗な場所で…、”
忘れていた記憶が、急にフラッシュバックした。
最近見ないと思った夢。今思い出せば、ここの場所にそっくりな気がする。
「ミコトもこっちおいでよ!」
リリィは、目の前の花畑の真ん中に座りこちらを振り向いた。
金色の髪を揺らしながら大量の丸くて白い小さな花と、大きな黄色の花を開かせている茎の束を抱きしめ、笑った。
今まで以上に、屈託のない笑顔を向けて俺の名前を呼んでいる。
俺は、少し面倒くさそうに手をヒラヒラとさせて肩を竦める仕草をした。
照れ隠し、と言うやつか。夢で見ていた光景まんまが、目の前に広がっている。
来ない事に痺れを切らしたのか、頬を沢山に膨らまして俺の手をやや強めの力で引っ張ってくる。
彼女の蒼い双眸は、惜しみなく俺の顔を映して少し拗ねたようにくりくりで大きな瞳を細めた。
その仕草そのものが愛らしくみえて、頬が緩んでしまう。
陽の光を沢山浴びて笑う彼女は俺の目にはとても眩しかった。
この笑顔を曇らせたくない。ずっと守ってあげなきゃって、そう思えるほどに。
出来る事なら笑顔で輝くそんな君をずっと見ていたいとさえ、本気で思った。
“沢山の黄色い花が咲く花畑で、
花にも負けない、綺麗な金色の髪をしてサファイアの瞳の女の子が俺を見て笑いかけてくれる”
余りにも、驚きすぎて、込み上げてくるのは笑いと、安堵と涙。
「あーーー。そっか。うん。」
「綺麗すぎて言葉も出ない?」
「……そうだな。」
「変なの!」
_____夢を、見ていた。
この世界に来るまで、ずっと一緒の夢を見ていた。
あの時に感じたこの気持ちは、おかしくなかった。
訴えかけられていたのは、正真正銘この気持ちだった。
「リリィ」
「なぁに?」
「君を守るよ、ずっと。」
「やだ、どうしたの?」
「どうもしてないよ。」
この1ヶ月間、救世主のことについてずっと考えていた。
急に異世界に来た俺は救世主と呼ばれ、もしかしたら世界を救う資格があるかもしれなかったり、しれなかったり。
選択する機会ならこの1ヶ月間沢山あったんだろう。
この家を離れて首都に行って見ても良かった、救世主と名乗りを上げて見て国民の反応を見れば良かった。
でも俺は5人目の救世主の扱いで。
誰にも必要とされていないことなんて慣れている。
だけど、夢の中でただ1人、君だけは俺を求めてくれていた。
どうしようもないくらい悲しくなったのも、もしかしたらここに呼ばれていたのかもしれない。
彼女は一人でずっと頑張ってきた。
救世主もこないこんな場所で。
孤独になりたくなくて泣く日だってあった。
そんな子を置いて、どこに行く場所がある?
救世主なんて急にそんなこと言われても、俺だって困るさ。
それに、俺が必要とされていない救世主なら。
俺は世界を救うことより、聖女 リリィ・ナカリーを救いたい。
心から、そう思った。
俺に救う力なんて、勿論ないけれど。
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