聖なる祈りは届かない

浅瀬

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【Memory_2】

10.冬に来たる

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 その日は、猛吹雪の日だった。
 
 息を吸えば肺が凍ってしまいそうな程冷たい空気。
 俺が最後にいた、冬の東京よりも何倍も寒い。
 永久凍土に変わるこの土地、リードグレン王国。

 異常気象化が進み、最近では空からの雹や霰が毎日交代かと言うほどに絶えない。

 そんな中、俺は外で斧を振り暖をとるための薪を何本も割っている最中だ。
 思考を停止したらすぐに寒さに意識を持っていかれそうになる。
 斧を振っていなければすぐ手が悴んで固まってしまう。

 それ程の寒さで、暖の火を途絶えさせてしまえば命に関わる。

 ___過酷と言う言葉では片付けれない程の寒さがこの国を襲っているのだ。

 そして、この場所で生活をしてから早一年が経とうとしていた。

 国の郊外であるこの場所では外が寒い事以外は特に苦労はまだしていないが、寒いからか最近リリィが良く咳込んでいる。
 心配だが、本人は大丈夫と言い張っているので医者にはまだ行っていない。

 気軽に医者にかかれないのは理由がある。
 国内との交流が全くないこの場所にはたまにくる旅人以外は来ない。

 車やバイクの代わりになる馬を手に入れるのも徒歩で片道5時間近くは歩かなければいけない。

 聖女だからと言う名目で国から多少の援助を受けているらしいが、救世主がこの状況でも音沙汰ないため、年々金額は減っているらしい。

 だから体調不良に関しては、倒れるまでは頼らないと言い張っている。

 倒れたらどうしようもないと言っているのに聞いてくれないから家事や雑務はいつも俺の仕事だ。


 「ミコトー!外寒いからそろそろ入っておいで」

 「ああ、今日は一段と冷えるね 」

 先ほどまで割っていた薪の束を脇に抱えると、駆け込むように家に帰った。

 「寒いのにいつもごめんね。暖かいお茶飲んで」

 「大丈夫だよ、それより体調は?」

 「今日も部屋が暖かいから大丈夫だよ!」

 「…大丈夫そうなら良かった」

 部屋の問題ではない気がするが、とは言えなかった。

 マグカップの中で湯気が立っている紅茶を口にゆっくり含むとリリィは目の前で溜め息をついていた。

 「それにしても、いつ暖かくなるんだろうね」

 「救世主が永久凍土を救う…って、具体的には何をするんだろうね」

 「語り継がれているのは、この冬は精霊様が操っていて、救世主は精霊様を使役するんだって。」

 「精霊、ねえ…」

 一年経った今でも、現実離れし過ぎていて未だ慣れない。

 「救世主様の消息は未だわからないし…この国は滅びる運命なのかもね」

 「いつか、きっと春は来るさ」

 「そうだと、いいね。」


 「ああ、また_____」
 「ごめんください!!」

 俺が次の言葉を発している最中に、扉の前で人の声と激しく扉を叩く音が家に響く。

 

  こんな猛吹雪の中の来客なんて、いかにも怪しすぎる。


 俺は斧を手に持ち構えた。
 木ばっか割っているが、何も持っていないよりマシだ。
 リリィと視線を交わすと、体制は崩さないまま深呼吸をする。

 大丈夫。たとえ俺が死んでも敵は殺してから死んでやる。

 ちっぽけな覚悟を決めると、恐る恐る扉を開けた。
 轟音と強風と共に冷たい空気が雪と混ざって家に入ってくる。

 「どちら様ですか。こんな猛吹雪の日に。」

 斬りかかる前に一声かけると、あまりの風の音に俺の声が届いていないらしい。
 吹雪で見えない真っ白い人物は「なんて!?」と大声を出している。

 「何の用事だ!!!」

 「寒いから少しだけ家に入れて欲しい!!!!炬燵くらいあるだろ!」

 聞こえない事への腹立ちについ声を荒げていたがその言葉を聞いた瞬間、体が固まった。
 何故ならば、まだ技術の発展していないこの世界では、炬燵なんてものはない。


 「お前…分かった。」

 その言葉で相手の正体を察し、俺は白い雪に紛れている人物の手を引っ張り強引に家に入れた。

 「なに!?入れてくれるの!?ありがとう!!!」

 雪にまとわりつかれていた彼は、大量の雪を落としながら震えていた。

 「さっむ~~!いや!助かった!
  俺の名前はレイト!この雪の国リードグレン王国の救世主だ!」

 ワハハ、と言いながら救世主は笑顔を見せた。
 元気が良過ぎて俺には気が滅入りそうだったが、それ以外に気になる点が多過ぎた。


 
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