蒼緋の焔(千年放浪記-本編3)

しらき

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The Encounter of Blue and Scarlet

蒼緋の出会い-2

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哲学者の嗅覚(1)
 あの事件から早15年。理研特区の悲劇はとっくに記録し終えた。いつの間にかプライドの高い隣人もユーモラスな妖怪爺も若市から姿を消していた。…後者はいよいよ寿命を迎えたのだろう。理研特区で出会った者は皆海の藻屑となった。ただ1人、岩村海翔を除いて。
 白城との契約が切れるまでまだ十分に時間はある。もうひと旅しても問題ないだろう。目的地は…適当で。

魔法都市万葉(1)
 「おやおや、タイキくんおかえり。…あら~?情報だけでなく人まで持ち帰ってくるなんて。」
華那千代に足を踏み入れると探偵姿の小柄な少年が軽快な口調で話しかけてきた。どうやら宮間の知り合いらしい。
「Hey,トモ、紹介するね。こちらカズとヒジリ。偵察先の若市で会ったんだ。」
「へーえ、若市の。なかなか可愛いじゃなーい。」
“ トモ”は俺たちを舐め回すように見た。少々鳥肌が立った。
「“ トモ”ってもしかして君が長畑友樹かな?」
「おや?ヒジリくんは僕のこと知っているのかい?」
「ああ、そこの金髪が話していたやつか!」
「なになに、タイキくん、僕の話とかしてくれちゃって。照れるじゃないかぁ。」
長畑は宮間にくねくねと身を寄せる。人懐こい宮間もさすがに少々引き気味だ。
「…ユ、ユウスケの話もしたよ。そういえばユウスケは?」
「あーもー!中峰くんにばっかり気を向けるんだから!彼ならいつものところにいるよ。」
「いつものところ?」
「魔法研究所だよ。僕も中峰くんも魔法使いなのだ。」
「あー、またあそこにいるのか。ユウスケはあまり外に出てくれないからなぁ。折角カズやヒジリのこと紹介しようと思ったのに。」
「俺たちがそこに行くんじゃ駄目なの?」
「魔法研究所には特殊な資格が無いと入れないんだ。地元の人でも立ち入れる人は少ないよ。だからこそ臆病な中峰くんはそこに引きこもっているわけだけど。」
「なんだその要塞のような施設は…。さすが魔法都市。」
「ここで立ち話もあれだし、僕の家においでよ。あ、タイキくんはさっさと王様への報告を済ませてきなさいな!」
王様というワードを聞いて俺は息を飲んだ。この国の事情は知らんが、こいつ、国王と面会できる地位にあるのかよ…。
「そうだった!俺、行ってくるよ。See you!」
宮間は全速力で駆けていった…つもりなのだろうけれど見た目に反して随分と足が遅い。
「ふう…。さて、改めましてようこそ華那千代一の魔法都市、万葉へ!私営探偵の長畑友樹です、以後お見知りおきを。」

哲学者の嗅覚(2)
 さてさて、この度やって来ましたのは見渡す限りの平原!いい景色ですね!自然を感じられる素晴らしい場所です。少し歩いてみましょう…。あー、緑が美しい。そしてなんと言っても空気がうまい!都会の仕事漬け生活に疲れたあなたに癒しを提供!所在地は知らないが是非この地まで足を運んで下さいな。では、今週の剣崎旅行記はここまで。アデュー!
 …なんてことを言っていなければやってられない。先程も述べたとおり俺は今見渡す限り何もない平原にいる。風の噂に聞くところによるとこの近くに華那千代という魔法国家があるらしいがそんなものがあるとは到底思えない程の大平原。いや、この先にきっとあるのだ。俺の進路は正しい。決して俺は迷子なんかじゃないのだ!
 …風が走り去っていく。率直に言おう、めちゃくちゃ虚しい。こんなことなら一人旅なんてしなければよかったのだ。しかしとりあえず進むことは止めない。この先にきっと何かがあるはずだと俺の勘が言っているならそれに従わなければならない。なんたって俺は神に愛された天下の剣崎様だからだ。

魔法都市万葉(2)
 「はーい、いらっしゃい。ここが僕の家だよ。あ、ここにサインをよろしくね。」
「サイン?」
「これね。ほほいのほいっと。はい、白城くんも。」
「わかってるよ。だが、何故来客の名前を残す必要があるんだ?」
「それは僕の得意とする魔法とも関係するんだけどねー。んー?聖くんは1度死んでるのねー。」
「は?何故それを…。」
「白城くんは…どれなら触れても大丈夫かな…ああ、剣崎くんっていう愉快なお友達がいるんだね。」
「剣崎?俺が知らない名前だー。」
「まさか俺達の筆跡から記憶を読み取っているというのか…?というか剣崎は友達とかそういうのじゃねぇから!」
「ふふ、だいせーかーい!厳密には筆跡というよりは名前なんだけどね。その人が直筆で書いた名前の文字の羅列から記憶を読み取れるのさ。」
「すっごーい!俺が死ぬ瞬間も!?」
「なんで自分の死に際について聞いているはずなのにそんなにテンションが高いんだい…。見ようと思えば見ることもできるよ。」
「だが、わざわざ玄関口で客の記憶を見る必要はあるのか?見ようによってはプライバシーの侵害だぞ。」
「その人がどんな人かだいたいわかるし話のネタにも困らないからいいでしょ?まあ、ほとんど趣味だけど。」
随分と悪趣味だ。さて、どこまで覗かれたのか…。過去の記憶から変に同情されても距離を置かれても困る。だがこのいやらしい魔法も探偵業には役に立ちそうだ。
「ねえねえ、部屋に入ってもいい?」
「どうぞ。そのへんのソファにでも座ってくつろいでいてくれたまえ。」
聖は大はしゃぎで部屋の奥に入っていった。
「そうそう、白城くん。」
「なんだ?聖は他人の家にあがったことが無く興奮気味なんだ。大目に見てやって…」
俺が言葉を言い切らないうちに長畑は思いもよらないことを言ってきた。
「君の大きな炎、華那千代でなら封じる必要ないよ。」
何故それを…いや、記憶が読めるのか。それよりあれを封じる必要がないってどういうことだ…!?もはや俺自身もその存在を忘れつつあった過去の悲劇…。まさか魔法都市にはそれと張り合う程の力の持ち主がいるという事なのだろうか…。
「ほら、早く入っておいで。お茶の用意をするからね。」
穏やかな空気の中俺だけが焦燥感に駆られていた。

Accident
 いつものように国王に報告を済ませて帰ろうとしたその時、国王が直々に俺を止め、こう仰ったのだ。
「宮間タイキ、お前に出撃の命令を下す。」
平和だった華那千代にもついに戦争が…そう覚悟した。
「万葉郊外に巨龍が出現したそうだ。そいつの討伐を国軍と共に行ってもらいたい。」
なんだ、dragonか…。Dragon!?表地球では伝説に出てくる程度の生き物だぞ、まさか裏には普通にいるなんて!戦争より非日常だよ!Amazing!
「ご指名頂き光栄です。しかしお言葉ですが王様、何故私が…?私はまだ齢15の子供です。国軍の力になれるかどうかは…。」
「お前の剣術、魔法は相当なものであると聞いた。きっと我が軍と共に活躍できると思ったのだ。」
「左様でございますか。ならばこの宮間タイキ、必ずや龍の首を持ち帰って参りましょう!」

「…何も聞かずに行ってしまった。しかし元気があるのはいい事だ。」
「…後で彼に使者を送っておきます。」
「うむ、頼んだぞ。」

 さて、困ったぞ。dragonの討伐を命じられたことは名誉なことだ。でも肝心の軍との合流地点を聞きそびれちゃった!お城に戻って聞くのも恥ずかしいし…、もういいや!きっと明日までには新聞にこの話が載るはずだ。大方目的地の情報も手に入るだろう。それを頼りに単独でdragonを倒すぞ!
 果たしてユウスケに報告するべきなのか…。親友に何も言わずに行くのは良くない。でもこの話を聞けばきっとユウスケは泣いて俺を止めようとする。そうなれば俺はちゃんと出発できる自信はない。ならば少し残酷かもしれないが前日、ギリギリに報告するのがベストだろう。ユウスケが思い悩む時間を減らすため…違う、俺のためだ。

魔法都市万葉(3)
 「あら、タイキくんおかえり。お茶入れたよ、飲みな。」
「Thanks、トモ。いただくよ。」
テーブルに広がる紅茶とお茶菓子は全てトモの手作りだ。ヒジリは様々なお茶菓子を次々と食べていく。どれが気に入ったか後でじっくり聞きたいものだ。カズもそれらを美味しそうに食べている。トモが作り出す穏やかな空間は全てを包み込む。なんかこういうの、いいな。
「報告は上手くいったかい?」
「上々だよ。これからも頑張れって。」
「そうかい、そうかい。人を連れてきたことは言ったのかい?」
「あー、忘れてた。まあ、旅人が滞在するくらいなら大丈夫でしょ。」
「聖、俺たち旅人だってよ。」
「うへぇ、俺家ないよ?」
「だってさ。こいつ帰るところ無いらしいぜ。」
「あらま、定住予定?…タイキくん?」
「Sorry,てっきり旅人かと…。」
だが俺たちのリアクションを見て何故かカズはくすくすと笑っている。…そうか!
「カズはともかく…ヒジリに家は必要なのかい?」
「ん?それは俺にホームレスになってことかい?いい度胸だ。」
何故喧嘩腰なのか。
「だってghostに家はいらないでしょ?」
「…いらないな。」
「いーりーまーすー!幽霊さんだっておうちに住みたいですー!」
「人間と違って雨風の影響も無ければ温度も関係ない。外敵から身を守る必要もほとんどない。」
「井戸に住み続けるような霊よりはマシじゃない?」
「こらこら、あまりいじめちゃダメだよ。幽霊さんだって家の温もりが欲しいのさ。」
「トモちゃん、わかってる!」
勢いよく立ち上がったヒジリを気にせずトモは皿を確認した。
「聖くんもうお菓子食べちゃったの?おかわりはいるかい?」
「んー、遠慮しておく。夕飯も楽しみだからね。」
「そっか。あ、部屋で休むなら角の部屋は自由に使っていいよ。来客用だから。」
「わーい!白城くんも行こうよ、ほら。」
「うわ、わかったから引っ張るな!」
2人が部屋を出て気付いた。そういえばヒジリは普通にお菓子を食べていたな…。まあそのことをつっこんだところで幽霊さんだってお菓子を食べてもいいでしょ!としか返ってこないだろうけど。
「…で、タイキくんお城で何があったんだい?」
…鋭い。伊達に探偵はやっていないということか。
「実は…」
俺は城であったことを全て話した。それをいつユウスケに告げるべきか悩んでいることも。
「中峰くんにいつ話すべきかなんて僕は知らないよ。いつ話したって彼は君を止めるだろうね。」
「だよねー…。」
「話すタイミングなんて君が決めることだ。それに君が1番重点を置くべきなのはちゃんと帰ってくることじゃないの?」
「そうだよね…ごめん。」
「とにかく!中峰くんを泣かせたら神が許しても僕が許さないんだから!」
一気にハードルが上がった。この件について泣き虫なユウスケにどう話すか…。WHENだけでなくHOWでも頭を使うことになった。勘弁してくれ。
 だがとりあえずトモからユウスケにこの事を伝えることはしないつもりらしい。

 そして迎えたその朝。と言っても出発の日の朝ではない。出発の前日の朝だ。結局俺は前日にユウスケに伝えることにした。きっとそれが安全策だ。あの後使者が来て合流地と目的地はちゃんとわかった。準備は万全だ。後はユウスケに会うだけだ―
 いつも開け閉めしている自分の家のドアが今日はやたら重かった。

矮星の魔法使い(1)
 「タイキ!冗談でしょ!?」
僕の親友、宮間タイキに出撃命令が出たらしい。タイキはまだ僕と同じ15歳だ。いくら剣と戦闘魔法のスキルがあったって中学校も卒業していない年齢の彼が軍隊の一員として戦うなんて無茶だ。しかしここでは王様の命令は絶対、僕の嘆きなど誰も聞き入れてはくれないのだ。
「It isn't a joke.でも国の為に戦うんだ、名誉な事だよ。…Don't cry,ユウスケ!」
「だってタイキが…タイキが…!」
「大丈夫だって、dragonなんてあっという間に倒してくるから!」
「うう、でも…」
「参ったな、これじゃあどんな顔して出撃すればいいかわからないよ。せめてユウスケの笑顔を見てから出発したかったよ。」
タイキは困ったような顔で笑った。どうしてこんな状況で笑えるのだろうか。ずっと一緒にいてもタイキについてはわからないことだらけでそれが時折たまらなく苦しかった。
「…出発はいつ?」
「明日だよ。もっと早く言えばよかったかな、でもぎりぎりに言った方が悩む期間も短いかなと思ったから。」
「タイキにはお見通しってわけか。」
「ん?」
「いや、なんでもないよ。」
彼のお望み通り僕は無理矢理微笑んだ。だがそれはきっとぎこちなかっただろう。
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