蝶、燃ゆ(千年放浪記-本編5下)

しらき

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赤・ひとつ

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 外を歩いていると所々に人が倒れている。恐らく彼女の仕業だろう。
「なんだ、俺の火力が活躍する機会はないな。」
「ない方がいいんですよ。…しかしこれを御門さんが…?」
「普通に歩いている人間もいる。邪魔をしてきたものを最低限って感じがするな。」
人が倒れている中平然と歩いている人がいるのもおかしな光景だ。
「心無し、だな。とんでもねぇぜ、あいつの作品は。」
「ですね。一体何を考えてこんなものを作ったのでしょうか…。」
「お前、知らないのか?」
「え、先輩、知ってるんですか!?」
「元はと言えば一文路は自白剤のようなものを作ろうとしていたんだよ。一族が昔やらかした黒歴史を知ろうにも誰もが口を固く閉ざしていたからな。あいつが杉谷と異なるのは微妙に出来が悪いから狙い通りのものが作れないというところだな。」
「あれでも十分ヤバいとは思いますが…。」
「あれは事故みたいなものらしいがな。そんで失敗作が逃げ出して勝手に増殖して、大惨事。寄生虫に頼って人から無理矢理情報を引き出そうとするのもイカれているが一文路は結構被害者だぜ。」
「だとしても俺は一文路を許せません。」
「そりゃそうだわな。しかし、長崎や一文路を止めても日常を取り戻せる保証はないかもしれない。」
「そもそも人々が元通りになったとして、俺は一度彼らの裏を見てしまってますからね…。そういった点では元通りになったとは言えないのかな。」
「水に流せばいいんじゃないか。お、目的地に着いたぞ。」
しばらく前に来た建物ではあるが、なんとなく雰囲気が違うように思えた。ここに長崎が…そして一文路がいるのか。
「噂には聞いていたが随分とデカい建物だな。こりゃ中でも相当歩くぜ。」
「ですね。俺も中の構造は詳しくは知りませんし。」
「御門が道しるべを残しておいてくれているとありがたいんだがなぁ。」
「人間の道しるべなんて嫌ですけどね…。」

 「意思を持った人間…。ホルニッセさんだ。」
「麝香…!外で会ったのは初めてだな。」
「…そうでしたっけ…?確かに俺ずっと学校の実験室にいたかもー…。」
「…細かいことは覚えていないのも相変わらずだな。しかし何故今になって外を歩いている。特に目的も無さそうだが。」
「そうですねー、特に何もないですけどねー。まあ、俺だって散歩くらいしたくなりますよー。」
「何を隠している。」
「何もー?」
「ますます怪しいではないか。」
「うーん、ほんとに何も無いんだけどなぁ。」
「絶対何かあるだろう。」
本当に何も無いのだが自ら胡散臭い動作をしてしまったからには何か特別な話題を見つけなければならない。そう簡単にこの人は諦めてくれないだろう。
「…そうですねぇ、何かが終わる気配がしますねぇ。いや、何かが始まるのかな?」
「はあ?それはどういう…。」
「俺にもわからないです。でもそんな感じがしませんか?」
「…どうだか。人間の気配がないという点では何も変わらないだろう。この静けさは今に始まったことではない。」
「それもそうですね。ええ、なんでもありませんよ。俺はなんとなーく、何か感じたので外を散歩していただけです。」
「そうか。…つくづく何を考えているのかわからないやつだ。」
「ああ、そうだ。個人的に今ホットなスポットは生態研究科本部ですかねぇ。」
「本部だと?」
「俺は本部に行ってみようかなって思います。ホルニッセさんはどうしますー?」
「本当に何かあるんだろうな。だったら俺も行こう。」
「ええ。99%くらい何かありますよー。たぶん。」

 案外呆気ないものだ。長崎には抵抗する間も無いほどの不意打ちだったのか、それとも死ぬことに抵抗が無かったのか。そこに転がる赤い有機物の塊は数分前まで長崎司という名前を持った思考する生物だったらしいが、私にはそれが疑わしくなってきた。それは最期の瞬間痛みに藻掻くことはなかった。私と同じ生物なら刃物で刺された痛みは相当なもののはずである。いや、私は物理的な痛みは感じたとしても今こうして冷静に分析しているように人を殺めることに何も感じないくらいには心の感覚は死んでいる。この部屋には動かなくなった赤い物体と私だけ…であったのだが…。
「あれ…?人がいる…。長崎か…?」
恐る恐る部屋を覗くのは青条だった。
「青条…何故ここに…!?」
「御門さん…!やっぱりここに来ていたんだ。…長崎は?」
「ああ、そこからじゃ見えないのか…。」
「それはどういう…。」
扉を開けて中に入ってきた青条は何かを見て立ち止まった。
「御門さん…それって…血、だよな…?」
「ああ、そうだが。」
「なんで…しかもかなりの量…。」
この血の源を探ろうとしているのか青条は歩みを進める。
「おっと、何か足元に…」
塊につまづいた青条は足元を見て固まった。
「これって…。御門さん、どういうこと?」
「どういうことと聞かれても見た通りのことだが。」
淡々と答える私を青条は見たこともないような険しい顔で睨みつけた。
「やっぱりお前も周りの奴らと同じで心が無いんだな。なんで人を殺して平然としていられるんだよ!」
「私はただ悪を成敗しただけだ。」
「だからって殺す必要は無かっただろ!」
「なんだ、そっちもその目的でここに来たのではないのか。」
「違う!俺が長崎を殺すはずがないだろ!」
「お前も悪魔の味方だったんだな。それとも友達だから殺せない、とかそんな生ぬるい考えか?」
青条は目を見開き私に殴りかかろうとした。が、咄嗟に部屋に飛び込んできた何者かに止められた。
「先輩…!離してください!」
じたばたする青条を押さえつけているのはあの異邦人だった。小柄だが案外力はあるらしい。
「諦めろ、過ぎたことだ。ここで御門を殴って何になる。」
「でも…!」
「お前が誰を止めようとしていたか今わかった。だが遅かったんだよ。まさかその刃物を奪って御門の息の根を止めるわけではあるまいな。いや、今のお前は俺がいなければやりかねないな。」
どうもこの人は青条のストッパーのようだ。
「驚いた、青条の肩を持つ訳ではないのですね。」
「俺は中立だからな。だが俺としても長崎は生かしておいて欲しかったなぁ。」
「何故です。」
「そりゃあじっくりとお話を聞きたかったからさ。生け捕りにしてもらうのが一番だったな。」
「あっ…。」
確かに私は冷静さを失っていた。そうだ、何故このような事をしたのか、その動機を知る術を自ら消してしまった。
「それにしても呆気ないものだねぇ。こう簡単に黒幕がいなくなるとはねぇ。」
「…。」
「青条、どこ見てんだ。ショックなのはわかるがお前にはまだやることが残っているだろ。」
「…やること、ですか?」
「会うべき人物がいるだろ。…カッとなって殺さないようにな。」
「ああ…あの人ですか。でも、自信がないですね。何も起こらないように見張っててください。」
「…御門サンはどうする?そこで死体とお話でもしてるか?」
「…ええ、そうですね。何か得られるかもしれないし…。」
死体と会話なんてできっこないが私は少しこの部屋で頭を冷やす必要がありそうだ。

 …「なんで人を殺して平然としていられるんだよ!」
脳内で青条の言葉が繰り返される。何故と言われてもわかるものではないのだが。あえて言えば長崎や一文路は様々なものを私から奪ったから、だろうか。とにかく私は復讐をしたまでだ。これは仕方ないことだったのだ。それに青条とは違い私にとって長崎は赤の他人である。他の蟷螂の斧で退治した者と何も変わらない。もっとも彼らは確実に死んでしまったわけではないが。
 思考が止まった。沈黙が続く。こんなところ早く出てしまえば良かったのかもしれないが何故か私はここにいた。本当の黒幕を倒したことで私の戦いは全て終わったのだ。もう終わったのだ―

 「ねえねえ、トモちゃん。またお手紙が入ってた。」
「えっ、またですか!?今月に入ってからもう5通は…」
瑞希さんは誰にでも愛想がよく、頭もよく、顔もよい。彼のことが気にならない女子の方が少ないのではないだろうか。
「今度はどんな子なんでしょう。…綺麗な文字ですね。きっといい子ですよ。」
「うーん、文字の綺麗さと性格の良さって関係するのかなぁ。」
「手紙の主とはいつ会うのですか?」
「え?会わないよ。」
「えっ、なんでですか!?」
「どうせ返事はNOだからだよ。」
「だとしても勇気を出して手紙を書いてくれたわけだし直接会って断った方が…。」
「最初はそうしてたんだけど、何人か過激なのがいてねぇ。会いに行かない方が楽だし確実なんだよ。」
「そんな…。」
この人は時々こう、薄情なところがある。
「そもそも、彼女達の思いに応えようとは思ったことはないのですか?」
「あるわけないでしょ。他人からの愛なんて最も信用出来ないものだ。」
「そんな…」
「人の感情なんてすぐに変化するものなんだよ。でっかいプラスがマイナスに転じた時が一番恐ろしい。…そうだな、トモちゃんは適度に距離感があってちょうどいいよ。君は余計な感情に振り回されない。…まだ完璧ではないけどね。」
「それは…ありがたいことです。」
常に理知的であれ、という我が家の教えは意外なところで役立った。子どもとは思えないほど冷静だ、といって周りからは嫌味のようなことも言われたがこの人に気に入られているのならそれにまさる喜びはない。しかし同時に私の希望は潰えたのである。この人は誰かに好かれることを拒む。それはもちろん私も例外ではないのだ。感情を殺せ。全てを包み隠せ。それが私がこの人の隣にいる権利を得る唯一の方法。

 ―視界がぼやけている。まさか死体と二人きりの部屋で眠ってしまうとは。懐かしい夢だった。あれから私は人を殺しても動じない程の無機質な人形に育った。これならあの人の思い通りだろうか。いや、もうあの人はいないのだ。ならば私は感情を殺す必要はあるのか。
 「やっと起きた。」
視界がはっきりして初めて人がいることに気付いた。
「殺人現場で眠るなんて驚いた。彼女には感情がないのか。」
「どうでしょうねぇ。敵討ちが終わって気が抜けてしまったのかもしれませんよ。」
「麝香…それに…。」
「御門も知ってる?留学生のホルニッセさんだよ。」
「何故2人がここに…?」
「麝香がここで何か起こると言っていたから来たのだ。確かにその通りのようだな。」
留学生と麝香は長崎の死体を一瞥した。
「あーあ、あんなことしていたからだよ。…青条はこれを見たのかい?」
「何故人を殺して平然としていられるのか、だって。青条もあんな顔するんだな。」
「彼を殺したのは正義感か?それとも復讐心?」
「…少なくとも前者ではありません。復讐…なのでしょうけれど、だとしても私は誰の仇をとったのかはよくわからないです…。」
「杉谷先輩じゃないの?」
「既に亡き者とはいえ仇をとったことにはなるだろうな。でも違うと言うのだろう?では一体…。」
「元々はあの人のためにやっていた…。蟷螂の斧だって遺志を継ぐために…。でも、もう全部終わった…。あの人もいない…。私はどうすれば…。」
「ああ、御門が寄生虫に負けなかった理由がわかった。それ以上のものに寄生されていたんだね。」
「寄生されていただと?一体何にだ。」
「正確には言葉に出来ませんが、そうですねぇ、杉谷瑞希という人間に、でしょうか。」
「…私が…瑞希さんに…?」
「…だと思うよ。だがもう自由だ。御門が望むならね。」
「私は…自由…?自由って…?」
私は自由がわからない。
「私はもう感情を殺さなくていい…?」
「感情を…?…やっぱりそうか。中学での御門は以前見かけた時とはだいぶ印象が変わっていた。…杉谷先輩がそうしろと?」
「いや、そうではない…。でもあの人は感情がない人間が好きだったらしい。」
「彼の理想を演じ続けようと努力した結果がその振る舞いか…。でもさっきも言ったけど御門はもう自由だ。杉谷先輩にとらわれる必要はない。感情を殺す必要はない。」
感情を殺す必要はない…?確かにもう瑞希さんはいないのだ。それに戦うべき相手もいないのだ。私が感情を殺す理由はない。
「だが私はずっとこうして生きていた。今更感情を殺す必要はないと言われても…。」
「もうそれに慣れてしまっているなら仕方ない。じゃあ君は本当に人を殺して何とも思っていないのか?彼は知り合いだったのではないか?」
「あ…。確かに私と長崎はそれほど仲が良かったわけではない…。けれど…同じ学校の生徒で…青条の友人で…」
「でも彼は悪人だろう。」
「おい、麝香…!」
「そう…長崎がやったことは許されない…。でも私はこの手で人を…!」
長い間忘れていた感覚。胸が苦しくなって目元が変な感じがする。雫が垂れて眼鏡のレンズが濡れてしまった。
「…なんで…なんで私はこんなこと…。なんで何も感じなかったの…!?それだけ心が死んでいたってこと…?」
感情を殺すことで何でもできるつもりになっていたとでもいうのだろうか。先程の私が別人のようだ。
「嘘…、なんで…なんで…私……」
「なんでかなんてわからなくていいよ。今はただ久々に感情ってやつを味わえばいい。どうせ杉谷先輩が亡くなった時だって涙のひとつも流してないでしょ。」
「…だって泣いたら瑞希さんに嫌われる…」
「死んでも悲しんでもらえないなんて随分可哀想な人だね。…きっと本当はそんなことないと思うよ。だって自殺を選んでおきながら希望を遺したのでしょう?誰かの記憶に残っていたいとは思っていたんじゃない?」
「…確かに…。あれから聞こえていた瑞希さんの声はもしかして幻聴じゃなかったのかも…。」
「杉谷先輩の声…?まさか御門が海に飛び込んだのって…!」
「…呼ばれていた。でもあれは私の知っている瑞希さんとは少し違った。」
「少し違った?どういうこと?」
「人間不信のあの人は海という聖域に私を呼ぶわけがない。全ての人と同じ距離感を保っていたもの。」
「…魂というのは案外生きている時より素直なものかもしれないけどね。」
「瑞希さんも本当は寂しかった…?」
「…わからないけどね。でも生前の杉谷先輩の言動が彼自身の魂から御門の命を守ったのかもねぇ。」
「…私はあの時海の藻屑になっても良かったのか…?…わからない…。」
「難しいもんだねぇ。死者とはお話出来ないから。…さてと、俺はまだ行くところがあるんだ。落ち着いたら御門も来なよ。というか御門の力がたぶん必要となるから落ち着いたら来て。場所は…まあ、わかるでしょ?」
「…青条には会いたくないのだけれど。」
「まあまあ、あいつだってわかってるはずだよ。…ホルニッセさん、お待たせしました。もう一仕事行きますよ。」
「別に待たされたとは思ってないが。」
麝香たちを見送った。先程のようにまた眠ってしまうなんてことがないようにしよう。だいぶ心も落ち着いたが新たな問いは増えてしまった。

ひとつ
 「なあ、麝香。彼女は果たして感情を取り戻した方が良かったのだろうか。」
次の場所へ向かう途中ホルニッセさんはとても難解なことを聞いてきた。だが場の流れからして話題にするのは当然かもしれないことであった。
「なんでそんなこと俺に聞くんです。…わかりませんよ、そんなの。」
「そうか…。そうだよな。ところでもう一仕事とは一体?」
「そっちも後始末でしょうかねぇ。出来れば俺の出番がないといいけど。」
「お前はなんでも知っているように見えるが、どうなってるんだ。」
「そんなことはないですよ。なーんか気配がするだけです。」
実際これから何が起きるかなんとなくしかわからない。俺がその場所へ向かうのも万が一のためだ。御門とは違い青条にはストッパーがいる。本当に俺の出番は万が一の際。最悪の、最悪の事態のための予備戦力だ。とは言ってもそんな場合に俺がなんとかできる自信があるわけでもないが。
「それにしても俺たちはどこへ向かっているのだ。」
「恐らく一文路さんがいるところですよ。」
「こんな広い建物の中で見当がついているのか?」
「凡そは。まあ、貴重なものとラスボスは最上階って風潮がありますから。」

 ああ、なんて俺は馬鹿なんだ。なんで俺はもう少し早くここに来なかったんだ。あと少し到着が早ければあの冷酷な悪魔を止めることはできていたはずだ。
「先輩、あの人に会うってのはわかりましたが、一体どこへ向かえばいいんでしょうか。」
「あー…、それは俺だってわからん。」
「わからんって…。」
きっとこの人は一文路直也に会わせるつもりだ。俺にとっては諸悪の根源。あの寄生虫が出来てしまったのは色々な事情があるのは間違いなさそうだがそれを聞いたところで俺は一文路を許すことは出来ないだろう。ああ、そうか。御門智華にとっては長崎は赤の他人で憎いだけの存在だったのだ。だから殺した。俺だって一文路直也が相手ならそうかもしれない。そもそも長崎が変わってしまったのも一文路のせいではないのだろうか。そうでなくても一文路が俺の家族を奪ったのは事実だ。
「おいっ、青条!蝶が…!」
「蝶、ですか…?」
白城先輩が指さした方を見るとそれまで俺の周りを飛んでいた蝶たちが勝手に向こう側へ飛んでいくのが見えた。
「どうしたんでしょう。向こうに何かあるのでしょうか。」
「だろうな。もしかしたら一文路の居場所を示してくれているのかもしれないぜ。」
蝶は何もない方へ飛んでいく。確かにそうかもしれないと思った。
「階段、ですね。あっ、上の方へ飛んでいきます!」
「ほんとに人気がないところだな。まさに隠し玉って感じだ。」
それにしても何故この人は俺を一文路と会わせようとしているのだろう。中立派と言っていたが長崎や一文路の行動に何も感じないのだろうか。とはいえ悪人を成敗したかのようにもとれる御門さんの行動に賛同するわけでもなかった。
「あの…何故あなたは俺に付き添ってここに来たのですか。」
「お前が火力が必要だと言ったからだろ。」
「た、確かにそうですが…。本当にそれだけのためにこんなところに?」
「随分変なことを聞くんだな。別に何も目的は無いさ。俺個人としては一文路にも、長崎にも、御門にも裁きを下すつもりはない。」
「だとしたら単に俺の護衛のため…?」
「まあ、そういうことになりますなぁ。」
「あなたの考えていることはまったくわかりませんよ…。」
「そんなことわからんでいいんだよ。…可哀想だからここに来たもうひとつの目的も教えてやろう。“ 物語”のクライマックスを見に来たんだよ。」
「え…、物語…?どういう…。」
「さて、おしゃべりしていたらそろそろ最上階じゃないか。ここに一文路がいるんだろうな。」
「えっ、ああ。そうだと…思います。」
蝶は角の部屋の扉の前を飛び回っている。恐らくこの扉の向こうに一文路直也がいるのだろう。ずっと会ってみたかったが顔も見たくない人物。性根の腐った狂人なのか、世間離れした天才なのか、はたまた普通の人間なのか…。喉がカラカラに乾いている。ドアノブを掴むことが出来ない。何度か繰り返してようやくドアノブを掴むことは出来たがそれを動かすのにもまた時間がかかった。
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