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次の世界へ

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次の世界へ

 「よう、やっと見つけたぜ。それにしても随分派手にやったよな。」
「師匠…。」
あの時俺は沸々とこみ上げてくる怒りに任せ、総理官邸周辺の一角を全て焼き払っていたらしい。俺の姿をはっきりと見た者は全員消し炭になったことだろう、おかげで国家への反逆者として牢に放り込まれることはなかった。
「何もあそこまでやる必要はなかったんじゃないか?あの爆発のような火災には相当な一般人が巻き込まれた。お前の標的はただ1人だったんだろう。」
「…そうかもしれませんね。」
「うわの空って感じだな。そりゃそうか、俺と違って殺しは本業じゃないもんな。」
「…。」
「あれからもう何年も経った。街も元通りになっただろう。…いや俺たちにとっては5年で1日過ぎたようなものか。」
「…。」
「…はー、今の状態じゃ何を言っても通じなさそうだがこれだけはちゃんと聞け。」
「…なんでしょう。」
「お前は若市から出るべきだ。」
「…!」
「国家反逆罪の問題は…まあ、そこまで心配してないが石野のように妖怪の中にはお前のことを良く思っていない奴も多い。奴らは自然法則に逆らうものを嫌う習性があるからな。それに気分転換には旅が一番だ。」
「でもどこに行けば…」
「その辺は心配いらない。俺の知り合いに旅がしたくてうずうずしている奴がいる。そいつは人間の子ども、まだ13とかそこらだったかな。1人旅をさせるには不安な年頃だ。」
「その子どものお供をしろ、と?」
「ああ、そうだ。好奇心旺盛な奴でな、お前の話をしたら飛び跳ねて是非会わせてくれってよ。」
他に選択肢もなかったし、俺はその子どもと旅をするという案を受け入れた。ただ虚無感を抱えながら若市にいるよりずっといい。この時はそう思っていたのだが…

『剣崎雄の世界論』に続く
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