【悲報】人気ゲーム配信者、身に覚えのない大炎上で引退。~新たに探索者となり、ダンジョン配信して最速で成り上がります~

椿紅颯

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第四章

第24話『困難を好機と捉え、挑む』

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「――これで30体か」
「ふぅー。いい感じだね~」
「うん、いい感じ」
「楽しくなってきた」

 快勝を続けている一行は、ほど良い汗をかいて表情も明るい。
 辺りにはモンスターや他の探索者の姿はなく、好き勝手に立ち回って試行錯誤を繰り返していた。

「みんなの連携力が上がってきたな。常に視野を広く持てているだけで安心感が違うっていうか、心に余裕が出てきている感じがする」
「だよねー!」

 和昌かずあきは【叶化の剣エテレイン・ソード】を握っている右手首をクルクルと回す。

「それにしても、この剣って見た目からしたら重そうなのにそうでもないから不思議だよな」
魂紅透石ソールスフィアが、そもそも重さがあるのか疑うぐらいに軽いのも関係してたり?」
魂紅透石ソールスフィア基準で考えると、確かに全部そうかも。しかーし、その話が始まると金額がががががが」

 今まで頭の片隅へ追いやっていた、提示された金額を一気に思い出してしまい、【叶化の剣エテレイン・ソード】へ向ける目の色が変わってしまう。

 焦りのあまり剣を手放したくなるが、もしも壊れたらという気持ちが強固なものでなんとか留まることができた。

「連携力も上がってきたことだし、強いモンスターと戦ってもいい感じに勝てるんじゃない?」
「私も芹那せりなと同じ考え。今だったら、なんでも勝てそう」
「こらこらー、私もそう思うけど無茶するのはダメだよ。ダメだったら撤退ってしていいわけじゃないんだから」
真綾まあや、ありがとう。でもそうだ。俺も強いモンスターに挑戦してみたいけど、目的を達成するためには無茶は禁物。窟蒼透石カタスマイト鑛石こうせきを発見しても、採掘する時間を稼ぐ必要だってあるんだし」
「そうだね、無茶は禁物」
「はいはーい。命大事に、油断せずってね」

 今は、『あばよくば』が起きないでほしいと和昌かずあきは願っていたが、すぐに選択を迫られることになった。

「ねえ、あれって」
「うわぁ……明らかな強敵発見」

 4人の前に出現したのは、大型のスライム【バルンスライム】。

「あれって【バルンスライム】だよね」
「たぶん、な。てか、デカいな」

 高さは1.5メートル、横幅が2メートル。
 先ほど遭遇したカラフルなスライム達は全てが半分だった。
 そして今回の中ボスに部類される【バルンスライム】は、綺麗な水で形成されているのでは、と錯覚するほど透き通る水色。
 ぽよんぽよん、ぷるっぷるっとしていて、見た目だけなら心地良さそうなクッションのような見た目をしている。

「でもたしか、見た目通りの重量で体当たりしてきたり、耐久力が半端ないんじゃなかったっけ」
「ゲームでも一緒。キング――」
「例えは凄くわかりやすいが、真綾まあやがわからないからやめておこう」
「たしかに、ごめん」
「おしいね。私も、凄くわかりやすい例えだと思ったよ」
「むーっ。また私だけ仲間外れにしようとしてー」

 まだまだゲームの知識が浅い真綾は話に入っていけず、唇を尖らせる。

 しかし談笑していられる時間はない。

「【バルンスライム】は見た目通り移動速度が遅いだけだから、無視して先に進んじゃう?」
「……」

 和昌かずあきは、受付嬢から受けた情報を元に思考する。

(ここら辺のモンスターは、たしかに無視して先行してもいい。だが、こいつを放置してしまった場合、街に侵攻するんじゃないか? 途中で他の探索者が対処してくれたらいいけど、住人が襲われたらひとたまりもないはず)

 時間を気にするなら、芹那せりなからの提案通りに無視して進行した方がいい。
 戦闘前から【バルンスライム】の特徴を把握していて、討伐するまでに体力を消耗することがわかりきっているから、なおのこと。

 自身の事情と仲間のことを考慮しつつ、その判断によってなんの罪もない人々が危険に晒される可能性に葛藤する。

「ごめん、みんな。ここであいつを倒そう」
「何を謝ってんのよ。リーダーがそう判断したんだから、胸を張りなさいよ」
「うんうんっ。私も大賛成っ!」
「連携力が高まっているのか、ここでしっかり試そう」
「みんな、ありがとう」

 全員の意識が、ジリジリと近づいてきている【バルンスライム】へ向く。

「基本的に攻撃は俺が防ぐ。自分で立ち回るし、攻撃されそうになったら俺の後ろへ来てくれ」
「うんっ」
「わかった」
「了解」
「じゃあ俺から――!」

 和昌は【朱護の盾ヴァーミリオン・プロテクトシールド】を両手を前で握り締めながら展開。
 完全に攻撃を防げるよう、縦2メートル×横3メートルの正方形を形成し、勢いそのままに盾で体当たりをした。

 たかだか数メートルの助走だけであったが、【バルンスライム】は後方へ押し飛ばされる。

「みんな、今だ!」

 和昌の先制攻撃を合図に、3人は一斉に飛び出して剣を突き刺し、薙ぐ。
 だが、高耐久の【バルンスライム】は全くと言っていいほど攻撃が通っている様子を見せず、攻撃している3人へのしかかろうとする。

「させるか!」

 再び大盾で攻撃を防ぐも。

「重すぎるっ。みんな、今のうちに」

 和昌が大盾で【バルンスライム】を斜めに抑えている状況。
 盾のおかげで重量そのまま支えていることにはなっていないが、何も感じないわけではない。
 顔を真っ赤にして踏ん張り続けている最中、3人は何度も何度も攻撃を繰り返す。

「硬すぎー!」
「全然硬くないよー! でも倒せなーい!」
「攻撃し続けるしかない」
「みんな、頼むぅううううう!!」

 和昌は、『みんなで戦おう』ということばかり考えていたから今こうなっている。
 それ自体はいいことなのだが、こんな状況になったからこそふと思う。
『もしかして、叶化の剣エテレインソードで攻撃しても良かったんじゃ』と。
 追加で、『その方が連携を意識した戦い方もできるし、時間もかからなかったのでは』とも。

「んぐぐぐぐぐぐぐぐ!」
「そのまま耐え続けてー!」
「本当に硬すぎ!」
「空気を斬ってるみたいな感覚になる」
「早く倒されてくれぇええええええええええっ!」

 和昌はなんとか耐えているが、少しずつ姿勢が崩れ始め、踏ん張っている後ろ左脚が次第に地面へ近づいていく。

「んあああああああああああああああっ――っあ」

 全身に掛かる体重が一気に消えて、スッと楽になる感覚を味わう。
 そして目の前に居た【バルンスライム】が消滅していることを確認し、盾を戻して地面へへたれ込む。

「ふぁあぁ~、きつすぎ」
「お疲れ様、ナイスガッツだったよっ」
「その根性のおかげで無事に倒せたね」
「良い耐えだったよ」
「みんなも攻撃し続けてくれてありがとう」

 真綾まあや天乃そらのから差し出された手を取り、和昌は立ち上がる。

「このまま進めそう?」
「……ごめん。歩けるんだけど、さっきみたいな立ち回りはできそうにない」

 芹那からの問いに、素直に答える和昌。

「まあ、あんなに踏ん張ってたんだから仕方ないよね」
「情けないけど」
「ぜーんぜんそんなことないよ。じゃあ、ゆっくりと進んで行こう。練習の成果を見せる時が来たっ!」
「だね。さすがにさっきのは連携の成果を見せることができた、とは言えないから」
「私もそう思う。3人で頑張ろう」
「みんな、ありがとう」
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