異世界の英雄は美少女達と現実世界へと帰還するも、ダンジョン配信してバズったり特殊部隊として活躍するようです。

椿紅颯

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第二章

第8話『セシル・マリー・フォルVS不良たち』

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 不良たちは、毅然とした態度で1歩たりとも動かず、ましてや自身らが置かれている状況に恐怖に慄くわけでもない。

「なんなんだこいつら」
「もしかして自分たちの状況を理解できていないんじゃねえか」

 そんな声がどこからか聞こえてくる。

「全部で11人か」
「ボクが4人でもいいよ?」
「いいえ、ここはわたくしにやらせてください。そうでなけれ怒りが収まらないわ」
「妾としてはそれで問題はないがの」
「まあ、この様子だったら素直に譲った方がよさそう」
「そうじゃの。後で妾たちが相手をしなければならなくなりそうじゃからの」
「あら、そんなことはなくてよ?」

 セシルはいつも通りに澄ました顔で他人事のように話をするものだから、マリーとフォルは「どの口がそれを言うんだか」と心の中で呆れる。

 しかし、やる気が満ち満ちている3人に対し、不良たちは消極的になり始めていた。

「てかさ、女に手を出すのはさすがに気が引けてきた」
「まあな。てかさ、男の方はもうボコボコにやられているだろうし、俺らが手を出すまでもないんじゃね?」

 と、いう具合に。

 完全に自分たちの世界に入っている彼女たちであるが、さすがにいつまで経ってもアクション1つすらないため疑問に思い始める。

「妾たちが言うのもあれじゃが、其方らは何かを待っているのかの?」

 フォルの言葉遣いに目を点にしている。

「どうやら、フォルの話し方はこちらの世界では非常識みたいだね」
「それはなかなかに聞き捨てならないセリフじゃの」
「ほら、そろそろ雑談の時間はおしまいよ。フォル、一応結界を分割しておいて」
「認識と音と……おまけで強化もしておくかの?」
「そうね、それでお願い」
「じゃあさ、あの人たちに防御も付与させてあげてよ。そうしたら、ボクだちも少しは力を出しても許されるでしょ?」
「ほほお、それは名案じゃ――ほらよっと」

 フォルは、彼らには見えていないが補助魔法を手のひらをひらひらとしてかけた。
 3人からは不良たち全員が薄っすらと光ったのを確認。

「じゃあボクからでいいかな」
「仕方ないわね」
「ならば次は妾じゃ」
「よーし、拳で語っちゃうよ~。誰か、ボクと戦いたい3人だけ出てきてよ」

 マリーは手首足首をぷらぷらと振りながら2歩ほど前進。
 そして提案に応じ、「余裕余裕」「女だからって手加減しない」「ふざけた態度、後悔させてやる」という感じに不良たちの中から3人が、仲間たちの声援と共に前へ出てきた。
 ちなみに、セシルとマリーは自分たちが次に何をやるかしか考えておらず、応援の眼差しすら送っていない。

「ボク、この中で手加減が1番下手なんだよね」

 マリーは自分なりに警告をするも、男たちは「この期に及んで怯えてるぜ」程度にしかとらえていない。

「じゃあ――」

 歩き出すマリー。
 男たちはポケットに手を入れたまま待機していると、最初からそこまでない距離はあっという間に詰まった。
 マリーは男たちよりも背が低いため、見下みおろされているそのままに見下みくだされている。

「――よっと」

 右手を引くマリーを、侮蔑の目線を送りつつ「まあ1発ぐらいなら、滅多に食らうことができない可愛いパンチを受け入れてやるか」と呑気のんきに構えていた。
 しかし、次の瞬間――。

「はい、おしまい」

 ――3人はまとめて結界の端までぶっ飛んでいき、白目をむいて気絶した状態で地面へ倒れた。

 セシルとフォル以外は予想すらできない状況に、残された7人の男たちは口を開けたまま固まってしまう。

「はい、じゃあ次どうぞー」
「と、言うわけじゃ。3人ほど、妾の相手をしてくれぬかの」

 マリーは何事もなかったかのように元の場所へ戻り、フォルが1歩だけ前へ出る。

 対する男たちは、子供が遊び終わった人形のようになっている仲間を観て気が動転しているも、フォルの挑発を受けて指定の人数が前へ出る。

「お前らは『どうせ何かのカラクリがある』と思っていそうじゃが――残念。妾たちが成していることは、種も仕掛けもありはせぬ。あるのはただ事実だけじゃ」

 フォルに心境を当てられ、ギクッと一瞬だけ肩を上がらせる男たち。

「妾はマリーの言う通りに手加減はできる。しかし、好奇心は抑えられぬ。そして、アキト様との時間を奪われたのも解せぬ。まあ、2つ目の方はセシルの方が――余計な話より、始めるとしよう」

 フォルは親指・人差し指・中指を立てる。

「炎・氷・風――かの」

 そう言い終えると、男たちの前に1種類ずつの現象・・が起きる。
 1人の目の前に炎、1人の目の前に氷、1人の目の前に風。

 それぞれ体が飛び上がるほど驚き、1歩退く。

「まずは炎。どれ、興味というのは『熱を感じない炎が全身を覆うとどうなるか』が気になってのぉ」

 すると、1人の男の服に赤い炎が点火。
 その炎はゆっくりと、しかし確実に広がっていく。

「な、なんだこれ! 誰かこの火を消してくれ!」

 一生懸命に訴えるも、誰も動かない――いや、動けない。

「ほれほれ、もっと面白い反応を見せなさいな。まあ、誰も動けはしないがの」

 炎に包まれていく男は必死にもがき、服を脱ごうとするも感じることのない熱への恐怖が先行し、地面をのた打ち回る他なかった。

「助けてくれ! 誰か! 助けてくれぇええええええええええ!」
「つまらぬ」

 もがき苦しみ、枯れる声を上げ涙を流す男はそのまま気絶してしまい、フォルは親指を戻して炎は消えた。

「次は、『少しばかり冷たい氷が全身を覆うと、どんな反応をするか』じゃ」
「え――」
「どうかしたかの。順番に反応を観察したいだけで、馬鹿正直に順番通りに始めるとは言っておらぬがの」

 1人の男は、『次は自分の番だ』と悟ってこの場から離れようとした。
 しかし、仲間が火だるまになっていく姿を前に思考が停止しており、自身に起きている現象へ気が回っていなかったのだ。

「う、動けない……は?!」

 そう、既に始まっていたのだ。
 地面に根が生えてしまったような感覚に陥っている男は目線を下げ、既に膝まで氷が覆っているのを目の当たりにする。

「どうじゃ、どんな気分じゃ? 冷たいか? 怖いか? 抵抗できるか?」
「どんなカラクリがあるか知らねえが、今すぐにやめやがれ!」
「口だけは回るようじゃがの。じゃが、最初にも言った通りなのじゃがの。それより、いいのか?」

 男は凍り付いていく下半身を視界に入れるまでもなく、自身の生命の危機を察知する。
 なぜなら、感覚がなくなっていくだけではなく、体温が低下していくときに起きる全身が小刻みに震え始めているから。

「叫ばないのか? 言葉も出ず?」

 観察を続けるフォルであったが、残念ながら男の思考は既に冷静ではなく、恐怖に支配されてしまっていた。

「もはや言葉も出ないか。はぁ……つまらぬの。それじゃあ――はぁ、こちらもか。残念じゃの」

 視線を移動させるも、最初から風によって呼吸を阻害し続けていた男は首を掻きむしった後だけを残して地面に横たわってしまっていた。
 それを確認し終えると、フォルは立てていた人差し指と中指を戻す。

「あまりにもつまらぬ」

 落胆するフォルと交代するように、セシルが前へ出る。

「わたくしは、あなた方を誰1人として許しません。こちらの世界に来たら、毎日アキト様と一緒に過ごせると思っていたのに。こんな学校という施設のせいでで離ればなれになるは、せっかく一緒に過ごせる休み時間とやらをこうやって邪魔されるは、アキト様が見知らぬ女と仲良く話をしているは。もう、わたくしはこの理不尽な展開の数々に悶々としています」

 マリーとフォルは首を縦に振り、残された4人の男たちは首を傾ける。

「まずそもそもにして。どうして、英雄と崇められるアキト様がこのような学び舎で時間を浪費しなければならないのか理解できません。いえ、アキト様が下した判断に不服を申しているわけではないですよ? もっと、こう、他にいろいろとあると思うんです。そう……例えば、こちらの世界で1つの国を作ってしまうというのもいいと思うんですよ」

 セシルの止まらない言葉の数々に、マリーとフォルはやれやれと首を横に振る。

 しかし、さすがに話が長すぎると判断した1人の男が拳を振り上げながら駆け出した。

「行儀が悪いのは、モテませんよ」

 だが、セシルの左の手刀薙ぎ払いによって横2メートルは飛んでいく。

「あなたたちもあなたたちです。本当に強いのかもわからない男に付き従い、恥ずかしくはないのですか? 自分の意思を他人に委ね、責任を自分で負うことはせず恥ずかしくはないのですか? 結局、そういう人は『誰かに言われたから』『他のみんなもやっているから』と、結局は自分がした判断を誰かのせいにする。自分の人生だというのに、あまりにも惨めですね」

 こんな状況で説教が始まるものだから、男たちは理解に苦しんでいる。

「どうしたのですか? そこに横たわっている人は、自分の判断でわたくしへ飛び込んできましたよ、仲間を見捨てるのですか」

 男たちは、ここまで好き勝手に発言し続けているセシルへ駆け出した。
 しかし。

「こういう人たちは、今も、わたくしに煽られたから、と思っているのでしょうね」

 と、捨て台詞を吐き捨てて右の手刀薙ぎ払いで男たちは結界端までぶっ飛んでいった。

 ――パンパンパン。

「セシル、マリー、フォルお疲れ様」

 拍手の音に振り向くと、そこには秋兎あきとの姿があり、3人は堂々と胸を張って歩み寄る。

「それで、確認なんだけどフォル」
「ええ。この後は、目が覚めた男たちに怪我はなく記憶を失うようになっておる手はずじゃ」
「さすがだね。どれぐらいで目が覚めるのかな」
「大丈夫じゃ。このまま人払いの結界は数分後に消滅、それと同時に目を覚ます手筈てはずじゃ」
「わかった。じゃあ大丈夫そうだね」
「妾たちに関する記憶もなくなっておるから、後々のことも大丈夫になっておるのじゃ。ちなみに、事の発端となったやつらの記憶もすぐに消しておく予定じゃ」
「ありがとう。じゃあ、俺たちは戻ろうか」

 地面に寝転ぶ男たちはそのままに、秋兎あきと一行は校舎へと戻っていった。
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