異世界の英雄は美少女達と現実世界へと帰還するも、ダンジョン配信してバズったり特殊部隊として活躍するようです。

椿紅颯

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第二章

第11話『解散後、挨拶をする』

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「うわ~、もうちょっとゆっくりできそうな場所を選べなよかったなぁ」

 さくらはため息と一緒に肩を落としている。
 秋兎あきとたちは既に外へ出ているわけだが、30分という時間が経過したというのもあり、それと同時に他の客が増えてきたからでもあった。

「いやいや、短時間ながらに事細かく教えてくれてありがとう」
「もっと上手に教えられたらよかったんだけど……次はもう少し頑張ってみるね」
「かなりの比率で俺たちが学力不足だから、そこまで気にしないでほしい。もっと頑張らないといけないのは、断然こっちだから」

 中学生程度……といっても、もはやその内容すら忘れてしまっている秋兎あきと、そして、そもそも読み書きすらまともにできない3人。
 そんな4人を同時に教え導こうなんて、かなり無茶な話だったのだ。

 当然、桜はいろいろと思うところはあったものの、そこは詮索せずに勉強を教えてくれた。

「アキト様」
「ん」

 マリーが近づいてきて小声でアキトを呼ぶ。

 そして、察したセシルは桜の話し相手へ回る。

「近くに、あの変な人が」
「誰だよそれ」
「こっちの世界に来たとき、アキト様が戦意を削がれたとおっしゃっていた」
「あー」

 それだけで察することができるのを、なぜか悔しく思ってしまう秋兎あきと

「桜さん、今日はここで解散ということにしよう」
「そうだね。私も急いで帰らないといけないから」

 全員で軽い挨拶を終え、桜は急ぎ足でこの場から去っていった。

「さて、ちょうどよさそうな路地裏にでも入ったらあっちから接触してくるだろう」

 秋兎一行は、ちょうどいい細道へ入る。
 すると、想像よりも早く顔を合わせることに。

「初日の学園生活、お疲れさまでした。いかがでしたか?」
「それはもう、いろいろと大変でしたよ」
「不良たちに絡まれるのは、さすがに不運でしたね」
「学園内の生活も監視対象ということですか」
「いえいえ。さすがに初日の今日だけですよ。こちらとしましても、もしも学園で暴れられたら何かしなければなりませんか」
「まあ、それはたしかに。それで、このようなプライベートの時間に接触してくるということは、どのようなご用件で」
「要点をまとめますと、2つあります。1つ目は、皆様がこれから生活なされる場所への案内。2つ目は、これから顔を合わせる頻度が増える人たちとの顔合わせ、です」
「なるほど、わかりました。1つ目も2つ目も、ここで話を進めても埒が明かないということですね」
「ご理解いただきありがとうございます。車をご用意してありますので、移動をお願いします」

 一行は道を戻り、用意されていた大型ワゴン車へ乗り込んだ。



「到着です」

 シートベルトを外して外に出ると、夕日に染まる空の下4名の男女が両腕を後方に組み、施設の前で待機していた。

「こちらが、これから一緒に行動する機会がある特務部隊の方々です」
「じゃあまずは俺から。リーダーのコードネーム『クリムゾン』だ、よろしく」
「次は僕で。遊撃担当のコードネーム『エメラルド』、よろしくお願いします」

 秋兎は、クリムゾンとエメラルドと名乗る男性たちと握手を交わす。

 クリムゾンのパッと見の外観は、中年男性。
 清潔感のある見た目ではあるが、顔や首筋に傷跡が見て取れる。

 エメラルドは、爽やか成年男子。
 ヤンチャをしているイメージはなく、しかし体育会系というほど筋肉が隆起しているわけではない。


「よろしくお願いします」

 挨拶を交わし終え、視線を左に流す。

「それじゃあ次は私ね。サブリーダーのコードネーム『コスミック』よ、よろしくね」
「……コードネーム『クロッカス』。よろしく」

 コスミックは、若年女性。
 髪は束ねることなく、サラサラと艶のある髪は場所を定めることなく遊んでいる。

「よろしくお願いします」

 クロッカスは、青年女子。
 フォルと身長が大体同じで、秋兎を少し見上げるぐらい。
 体系の全体像はフード付きロングコートによって隠れているが、握手をするとき視界に入った腕は細身のそれだった。

 背後から注がれる視線を感じつつも、これで全員と握手を交わし終えた。

「さて、お察しの通りで俺たちは本名で活動をしていない。もちろん、だからといって本名がないわけではないというのは憶えておいてくれ。ただ、今回はその自己紹介を省いた方がよさそうだったから許してくれ」
「いえ、お気遣いいただきありがとうございます」
「ふむ。なんというか、報告にあった通りを想像していたんだが、どうも合致する点が少なすぎるな」

 秋兎あきとは理解できない疑問を投げられた、と思考を巡らせようとするも、向けられている目線の方向が違うことに気が付く。

「そうですか? そんなことはないと思いますけど」
「たしか報告では、『異世界から帰還した少年は、壮大な力を所有するだけではなく、力を行使するときのオーラや性格はまさに鬼』とあったと思うが」
「そうですか? そこまで大差はないと思いますが」
「珍しい手違いだが、なんとなーく常日頃の会話から察することはできた」
「な、なんですかそれ。もしかして、私のプライベートを覗いていたんじゃないでしょうねっ!」
「んなことするか」

 状況が呑み込めない中、急にコントが始まるものだからセシル・マリー・フォルは完全に置いてけぼりとなってしまっている。
 辛うじて理解できた秋兎が話を戻す。

「すいません、この流れだと俺たちもコードネーム? というのを決めた方がよさそうですよね?」
「お、そこに気が付くとは優秀ですねぇ」
「いや、こんな面子めんつが揃うような場所にいる人間だったら察するだろ」
「いえいえわかりませんよ? だって、4人ともまだ高校生なんですから」
「ほほお、それは興味深いじゃねえか。いくつぐらいなんだ?」
「俺たちは一応は17歳です」
「なんだか含みのある言い方だな。だが、見た感じは噓をついていなさそうだ。ふむ、銀髪の嬢ちゃんがその原因というところだろう」

 なんのヒントもなしに当てられたことに秋兎あきとは一瞬だけ動揺する。

「お主、随分と人を見る目はあるようじゃの」
「はははっ。この年と地位になって人に褒められることがあるなんて嬉しいねぇ」
「じゃが、女性に対して年齢の話をするのはいかがなものかと思うがの」
「そうね、今のはさすがにデリカシーのない話だわクリムゾン」
「先見の明がある、素晴らしいリーダーだと絶賛されるところじゃないのか?」
「あなた、だからそのとしになっても結婚できないのよ?」
「こんな仕事をしていたら、どうやったて出会いはなだろ。てか俺は、まだ29歳だぞ。俺が手遅れってんなら、コスミックだって――」
「ほら、そういうところがデリカシーがないって言ってるのよ。それより、私はまだ24歳だから全然問題ありませーん」

 もはや胸ぐらをつかみ合いそうな距離まで近づいている2人を止めるように、秋兎は咄嗟に思い付いた提案をしてみる。

「偶然にも思いついたことが」
「どうかされましたか?」
「博識ではないので当たっているかわかりませんが、皆さんのコードネームはに関係しているものではありませんか?」
「ほほお、そこにも気が付くとはやるじゃねえか」
「でしたら、ちょうど俺たちの髪の色が空いていそうなのでそのまま使ってみるのはどうでしょうか」
「ほほお、それはありだな」
「でも大丈夫? そっちの子の方がクリムゾンっていう名前は似合ってそうだけど」
「おい、俺もそう思ったけど言うんじゃねえ」
「しょうがないでしょ、事実なんだから」
「うぐっ」
「でしたら、俺から『ブラック』『ゴールド』『スカーレット』『シルバー』という感じで」

 秋兎的にはかなり完璧な提案をしたつもりではあったが、帰ってきたの静寂であった。

「もしかして、どなたかと被っていたりしましたか?」
「い、いえ。秋兎様が提案された内容は全然問題ないのですが、たぶん……誰も『スカーレット』という色をわかっていないと思います。当然、私も含めて」
「あー。同じ紅と同じ赤色系統なのですが、やや黄色が入っているような赤色です。別名、緋色とも言います」

 全員が正確な色を認識できているかは別として、納得の声が返ってきた。

「さて、そろそろ挨拶はこれぐらいにしまして。本日はこれにて解散としましょう」

 全員が一礼し、秋兎一行は再び車の中へ乗り込んだ。
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