転校から始まる支援強化魔術師の成り上がり

椿紅颯

文字の大きさ
16 / 129
第三章

第15話『突発的混乱』

しおりを挟む
桐吾とうごくんいくよっ!」
「はい!」

 攻撃力アップの【オフェイズ】、移動速度アップの【ムーブサポート】が付与されている守結まゆ桐吾とうごは、その言葉を合図に前方のアント二体に突進していった。
 掃討するに時間はかからない。アント程度なら2人の相手ではない。
 2人の剣撃は、アントの急所に的確に攻撃――瞬く間に消滅。
 彩夏さやか幸恵さちえも、すでに理解しているようで攻撃態勢にすら移っていない。

「あいやー、あの2人息ぴったりだね」
「本当ね。攻撃も食らわずだから私的にも気が楽ね」

 リラックスした様子で彩夏さやか美咲みさきが会話している。
 康太こうた幸恵さちえも同じように、

「たしかにね。俺も気楽でいれるよ」
「そんなんで大丈夫なのー? ってほら、左!」
「おーう、任せろ!」

 雑談をしていても康太こうたは素早く反応、モンスターのヘイトを自分へと集める。
 そして、彩夏さやかと幸恵が攻撃魔法を的確に命中させて対象は消えていった。



「なんですか皆さん、もうギブアップですか? はぁ……もう少し頑張ってもらわないと最低限の評価しかできませんよー」

 海原かいはら先生は、戦線離脱して安全地帯へ撤退してきたパーティに呆れ声を向けていた。
 開始から一時間が経過していて、単純な体力不足から諦めたグループだ。
 休憩も挟まず無鉄砲に戦闘を繰り返していれば、そうなってしまうのは仕方がない。

「まあ、離脱をやむ終えなかったパーティもいるようですが……」
海原かいはら先生のところは三パーティ……ぐらいですか」
「はい、お恥ずかしい限りですよ」

 海原先生は、首の後ろをポリポリと搔きながら二組の担任である大曲戸おおまがと先生に腰を低くしていた。
 大曲戸おおまがと先生は、きっと自信満々な表情をしていると思った海原先生は、恐る恐る目線を合わせると、

「はあ……こちらのクラスはもう残すところ、一パーティとそちらのクラスと組んでいる子たちだけなんですよ……」
「あ……そうなんです……ねぇ」

 海原先生は、察した。
 自分と同じように落胆している表情だったことに、親近感が湧き上がりため息を盛大に吐いてから姿勢を正し話しを戻した。

「今回の実技は、まだ先のほうが良かったですかね」
「少なくともうちのクラスはそうだった、と言えるでしょうね。海原先生の子たちは善戦しているようですが」
「褒めていただけで光栄ですが、まあ……もう少しでみんな戻ってくると思いますよ」
「あー、そういえばそうですね。もう少しでアレが出ますもんね」



志信しのぶごめん! 前に出過ぎた!」
「みんなー! ごめーん!」

 桐吾の鬼気迫るような声に、後衛は視線を集中させる。
 視線の先、前衛の背後には、ランスラット、ソードラットが混合した計五体のモンスターが迫ってきていた。
 二足歩行の武器持ちの鼠。もうほとんどが人間の体と一緒で、体毛がもふもふしていそうな見た目をしているけど、その上からでも分かるほど筋肉質な体。ただ、人間よりは一回り、二回りぐらい小さい。
 あのモンスターは序層より上、初層である十一から二十階層に出没するアクティブモンスターであり、先ほど戦闘したラットの上位種。

「えっ、うそっ! 志信しのぶくんあれって今までのとは強さが!」
「えっなになに美咲みさき、あいつらもしかして強いの!?」
「彩夏ってば、この間勉強したでしょ!」

 美咲みさきと彩夏が痴話喧嘩を繰り広げているけど、状況は一転している。

「あいつら、武器持ってる! 俺がヘイトを稼ぐからみんな逃げて!」
「それはできないよ! あいつに効く魔法属性は――ああ! わっかんない!」

 間違いなく、みんなは突発的なこの状況に混乱状態に陥っている。
 全員が全員の顔色や行動を窺って、後衛は足を止めてしまった。
 けど――数も数。乱れたみんなの心を一つにするため、僕は声を張り上げて指示を出す。

「大丈夫っ! 退避ではなく討伐!」
「おっけー、しーくん!」
「わかった!」

 まず初めに反応したのは守結まゆ
 敵に背を向けながら距離を取っていたところを急停止して反転。
 それに続き桐吾も反転――剣を正面に構える。

「戦術は今までと一緒! 守結まゆは桐吾と孤立したやつを! 康太こうた、残りにスキルを!」
「おっけー!」
「わかった!」
「お、おうよ、任せろ!」
「彩夏は2人に加勢、幸恵は康太を援護!」

 右往左往していた彩夏と幸恵は泳いでいた焦点をモンスターに合わせ、行動開始。
 ばらけていたみんなの心は再び一つになって、持ち直すことに成功。

 ――それから、五体のラットを討伐することに成功。
 初めて感じる一体感。
 文句の一つも出ないほどの個々の能力と連携力。
 僕はこのとき初めてパーティの楽しさを知った。
 そして、僕はこの高揚感と一体感に心が躍っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜

大好き丸
ファンタジー
異世界「エデンズガーデン」。 広大な大地、広く深い海、突き抜ける空。草木が茂り、様々な生き物が跋扈する剣と魔法の世界。 ダンジョンに巣食う魔物と冒険者たちが日夜戦うこの世界で、ある冒険者チームから1人の男が追放された。 彼の名はレッド=カーマイン。 最強で最弱の男が織り成す冒険活劇が今始まる。 ※この作品は「小説になろう、カクヨム」にも掲載しています。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

処理中です...