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第三章

第14話『小戦闘と会議』

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 僕たちは円状に集まり準備運動を開始。
 それぞれの得意な戦闘スタイルを発表し合うことになった。

「じゃあ僕から。クラスはアコライト、状況把握が得意かな」
「へえー! 志信しのぶくんってアコライトなんだぁ、珍しいね! 私はメイジだよ~。ん~、範囲型魔法が得意かな」
「じゃあ次は私でいいかな? 私もメイジだけど、対象指定魔法が得意!」
「次は私で大丈夫かな、私はプリースト。得意なことは特にないけど、焦って回復しないくらいかな?」

 ここまでで後衛の僕、幸恵さちえ彩夏さやか美咲みさきの順に発表を終えた。クラスだけでもかなりバランスがいい。
 次いで、守結まゆが待ってました、と言わんばかりの勢いで挙手した。

「はいはーいっ、次は私ー! ウォーリアで遊撃が得意だよっ」
「次は僕かな。同じくウォーリア、突撃、遊撃、反撃って感じにオールラウンダーって感じかな」
「じゃあ最後は俺だー。カッチカチのナイトだけど、攻撃はかなり苦手なんだよなぁー。でも、攻撃の被弾率はかなり低い自信はあるぜ」

 個々の戦闘スタイルはバラバラではあるけど、全体的なバランスはかなりいい。
 全員が発表し終えると、康太こうたがある疑問を呟いた。

「人数は申し分ないけど、作戦とか戦術とかってどうすればいいかな?」
「ははーん、それはねー、うちの志信に任せなさーいっ」
「ほほう、つまり?」
「へえ、私も気っになるー!」

 守結まゆは自分のことでもないのに、謎の自信に満ちた顔をして胸を張っている。
 他の3人は疑問に思わず、ましてや守結の言葉に賛成と頷いている。その流れを見て、康太こうた幸恵さちえは目を合わせて不思議そうに首を傾げた。
 守結は右手を胸に当てて大きく息を吸い、目を閉じて人差し指を立てて得意気に言葉を続ける。

「うんうんうん、なるほどなるほど、この場で知らないのは君たちだけと見たっ。ならばこの私が説明しよう――」
「いやいや、そんなのやめてよ恥ずかしい。そんなことより情報交換は終わったんだから、先の話をしようよ」
「あっはは、そうだな。別に構わないから流れに任せる」
「まあね、私もそれでいいよー。何にせよ、私はそういうのは確実に向いてない、てか絶対そういうの無理だし」
「じゃあまずは――陣形とか決めずに少数のモンスターを相手に戦闘してみよう」

 康太と幸恵は目を合わせて、流れから予想だにしていない言葉を聞き、拍子抜けの様子。
 軽い打ち合わせも終わり、パーティ戦が開幕。

 他のパーティは既に戦闘を開始している。好奇心から進む者、評価欲しさに進む者、それらは駆り立てられるように進んでいき、安全地帯付近には僕たち以外のパーティは既に居なくなっていた。
 メンバー全員が装備展開を終え、準備が整ったところで標的を定める。
 まず初めに、一番近く授業でも戦闘経験のあるラットやアントで様子見をすることにした。

「五体行くぞー!」
「一体は僕が引き受けるよ!」
「あいよっ、任せた!」

 康太が声を張り合図を出して――戦闘開始。それに合わせて、桐吾が一体引き受ける。

桐吾とうご行くよー! ファイアボール!」

 彩夏が炎の対象指定型の攻撃魔法スキルを発動。
 対象に向けられた片手杖、その先端に炎の玉が形成され対象へ飛んでいく。距離的に、一対一ならば避けられる速度ではあるけど、今は交戦中――目の前の敵に集中しているラットには必中。

「よーしっ」

 直撃したラットはダメージを負い、悲鳴にも似た声を上げながら目を瞑って三歩ほど退いた。その隙を狙い、桐吾が剣先をラットへ突き刺し、流れるようなダメージ蓄積はラットを瞬く間に消滅させた。
 反対側では、康太が四体のアントを引き寄せている。

「いっくよー! トルネードフレイム」

 スキル名を合図に康太は大きく後ろに跳躍――幸恵が持つ両手杖の先端が向けられた位置にスキルが発動。アント四匹を囲むように炎の渦が発動しダメージを加えた。
 弱点属性であり見た目も派手だけど、スキルが消えた後もアントは生き残っていた……が、金切り音にも似た声を上げていることから、体力が少ないのは目に見えている。
 そこに守結と桐吾が飛び込んでいき、各々がスキルを発動させて二体ずつ攻撃して殲滅完了。

 ――この流れを保ちつつ、数回戦闘を繰り返した。全員に疲れは見えないけど、一旦確認を含めて休憩に入ることにした。

「みんなナイスナイスーっ!」
「今のすっげー! 2人の息がピッタリすぎて見惚れてたわ」
「特にタイミングとか合わせたつもりはなかったんだけどね」
「彩夏と幸恵の魔法も凄かったね。私の回復なんて全然必要なかったし、かなり安定してると思う」

 声出しも良し、連携も良し、火力も良し、危な気なく初見のメンバーにしてはかなりの連携力。
 これなら、ある程度だけ決めたら色々と挑戦できるのではないか。
 各自がかなり満足している様子、興奮気味に褒め合いの声が飛び交っている。傍から見たらお世辞の交換、そんな風に見えるだろうけどここまで順調だとそんなことはない。
 先ほどの戦闘体験を元に、ある提案を持ちかけた。

「みんなも薄々気づいているだろうけど、このパーティの連携はかなりいいと思う。だから、もう僕たちも先に進んで大丈夫だと思うんだ」
「私もそうだと思う。戦闘にも慣れてきたから、スキルも正確に出せてるしね!」
「うんうん、幸恵のスキルで戦闘がスムーズに進むからね~」
「いやいや、彩夏の単体火力が高いからだよっ!」
「まあ、そんな感じだから、ガチガチに作戦とか、陣形とかを決めない方がいいかなって思ったんだ。ただ自由過ぎると、もしもの時に対処ができないから、後衛だけ陣形を決めておきたいなって思ってね。だから、ちょっと後衛だけで話してる間に前衛も何か話し合ったりしてて」

 全員の快諾の後、それについて話し始めた。

「じゃあ、手っ取り早く済ませちゃうね。後衛は基本的に立ち位置を意識するのが大事だと思うんだ。それで、このメンバーの最適な陣形は三つあると思って――扇状、菱形、三角の三つなんだけど、どれがいいとかって希望はあるかな?」
「へぇー、すごーい! こんな短時間でそんなに考え付いてたの!? うーん、陣形かぁ……今までそんなこと言ってくれる人いなかったし、私自身そういうの全然わからないからなぁ」
「希望ねー。扇状は火力を集中するためってのはわかるんだけど、他の二つがわかってなかったりするんだよねー」
「なんとなくだけど、幸恵さんが中心になってるってことじゃない? それに、端に該当するのは私と志信くん、そして彩夏が割り振られてるってことだよ」
「え? 私も?」
「うん、たぶん私たちの盾が関係してくると思うの。そうでしょ志信くん?」
「うん、全部正解。前衛が自由な戦闘をするということは、もちろんモンスターが後衛に向かって来た時、対処が遅れるからそれを補う陣形になってるんだ」
「ははぁ~なるほどね。だから盾を持ってない私は中心で、みんなに守ってもらうってことなのね。あいやぁ、なんかごめんね」
「それなら、私はどの陣形も賛成だけど、そこら辺を重点的に考えるなら三角の陣形が一番合ってると思ったんだけど、どうかな?」

 美咲からの提案に、彩夏と幸恵は唸りながら考え始めた。だけど、程無くして幸恵が吹っ切れたように口を開き、それに彩夏も続いた。

「うん、考えてもわかんない! 私は守ってもらう立場だから、その意見に一票!」
「あっはは、そうだね。私も美咲の意見に賛成! 初の試みだけど、やってみよー!」
「よし、じゃあそれで決まりだね。それと、最後に意識して貰いたいことがあるんだ」

 3人はこちらを視線を僕に集中させ首を傾げている。そして美咲が「まだ何か?」と質問を投げかけてきた。

「これから先は今までの戦闘と違って、予想していない方向からモンスターが襲撃してくる可能性がある。だから、戦闘中のモンスター以外にも、できるだけ周りに注意を向けておいてほしいんだ」
「私が言うのもあれだけど、それってかなり難しくない?」

 幸恵からの疑問に2人も「うんうん」と言いながら、首を縦に二回振っている。

「最初は難しいと思うから、僕が全体を見ながら警戒をするよ。だから、戦闘に慣れてきたらやってみてほしいんだ」
「けど、考えてみるとそうよね。今までは、目の前から来る敵とだけ戦闘していれば良かったけど、本来のダンジョンではそんなことはないものね。そうね――うん。回復も頻繁にすることもなさそうだし、できるだけやってみるね」
「うん、ありがとう。彩夏は攻撃があるから、そこまで意識できなくても仕方ないと思うから、僕と美咲が主に担うことだと思っておいて」

 こうして戦闘と作戦会議が終了し、本格的に戦闘開始……!
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