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第1章
第19話 3人の神VS 1000体の祟り神
しおりを挟む早朝の式神修験町は人通りもさらに少なく、交通量もまばらだ。車通勤やバス通学の者が多いため朝7時台から8時台は流石に車を多数見かけるようになるが。
正式な依頼主である、開発業者が借りている駐車場に家神一族おかかえの運転手が車を停めた。さっそく、仮事務所のプレハブ小屋で依頼主とミーティング。
本来は、開発のための工事で忙しくなる予定が中止となってしまい時間が空いているらしい。
「おおっあなたが陰陽師一族の若き当主の……。はじめまして、私この開発業者の代表を勤めている青柿(あおがき)です。今日は朝早くからお越しくださりありがとうございます」
依頼者は、50代前半の感じの良い中年男性で、ここの開発業者の社長だ。依頼のルートとしては、現世のお祓い管理連盟から異界のギルド本部にクエスト依頼が流れ、ギルド所属のオレが引き受けたという形になっている。
「家神スグルです。こちらこそ、よろしくお願いします。今日は、開発事業の滞りの原因となっている山の調査、ですよね?」
「ええ、そうなんです。いやはや、あのお山……凛堂家から数年前に買ったものの、なかなか開発が進まなくて。山を掘ろうとすると、事故が起き……それを何回も繰り返している。現場で働いている者たちも祟りか何かなんじゃないかって……。最近では、落石事故が起きたらどうするんだって問い合わせまで……」
やはり、何度も事故が起きているだけあって、祟りやいわくつきなどの噂が出ているようだ。オレやスイレンとしては、1巡目の世界で起きた落石事故のことを覚えているから何かしらの呪いであることを知っているけど。
1巡目の記憶が無いはずの人々の間にも、将来の不安要素として落石事故への懸念が残っているようだ。
「何回も、ですか。それで、祟りの原因になっていそうな像とか、小さな塚だったり……何かめぼしいものは見つかりましたか?」
「それがね、何もないんですよ。凛堂家に問い合わせても、特別ななにかを祀ったりしていないと。大抵の場合は、古くから祀っていた神様の管理を怠っていたりとか、そういうものが原因なんですけど」
業者の調べでは、めぼしい霊的なものは山に無かったという。そして、凛堂家の報告でも、何もないと……。
「凛堂家の報告を信じれば、お祀りしているものではなく土地に根付いた因縁ということになるけれど……」
オレが、大まかな推理をし始めると青柿さんはこの手の話に興味があるのか、興奮気味に自論を語り始めた。
「ええ。それなんですがね、家神さん! これは私の長年開発事業にたずさわってきた者の勘ですが……あの山には因縁深い【何か】がある! それを、超有名陰陽師一族のあなたに是非暴いて頂きたいっ! いやぁでも運が良いですよ、私も……まさかこんなエリート一族の方に来ていただけるとは……。ご一緒の巫女さんやメイドさんもお祓いのお手伝いを?」
「ええ、巫女は私の婚約者で、メイドは婚約者の付き人です」
オレの後ろで、大人しく会話をメモしていたスイレンとミミちゃんが無言で青柿さんに会釈をする。
「おおっ! ご夫婦で陰陽師の仕事を継承していくんですか、家神一族は……素晴らしいっ。しかも、美男美女カップルときたもんだ……ご家族も将来のお子さんの誕生が楽しみでしょう。では、敷地には自由に入れるようにしておきましたので……」
* * *
「ふう、それにしても結構自力で開発業者の人も祟りについて調べたりしていたんだな。めぼしいものが見当たらないってことは、霊力測定を行うところからか……」
見渡す限り、鬱蒼とした木々が続いているように見える。ところどころ、工事の名残なのか大きな岩が転がっていて危ない感じだ。
「うむ。それだったら、この神の方位磁針で霊力が高そうな場所をサーチ出来るぞ」
スイレンの手元には、小型の風水用の方位磁針が握られている。祝詞を唱えるとクルクルと針が動き出し、ある一点でピタッと止まった。
「この針が止まったポイントを目指せば……」
「おそらく、祟りの拠点となっている【何か】に辿り着くはず……」
「よし、さっそく進んでみよう」
「みゃあ!」
くるん、くるん、と時折方向転換を行いながら回り続ける方位磁針。歩き続けて15分ほど……あるポイントで針の軸がブレるようになった。
「針が安定しなくなった。トワイライトゾーンってやつか?」
「霊力だけではなく土地の磁場が安定していないようじゃな。この辺りを中心に探索を行えば……」
「にゃあ、祟りの元になっている何かが見つかるかもしれないのにゃ!」
「じゃあ、いくぞ……彷徨うあまたの式神よ、我の祈りに呼応して、この土地の邪を祓わん……。山に轟く、あまたの土地神よ……祈りに応えて目を覚ませ……。汚れを祓い、真の姿を取り戻せ……」
臨戦に備えて錫杖を片手に、お札を呪力で浮かせながら破魔の祝詞を唱える。スイレンとミミちゃんも呪印を作り、警戒態勢だ。
もし、本当に今現在いるポイントが呪いの拠点となっている場所なら、祟り神が反発して攻撃をしてくるはず。
【カエレ、我らの呪いを妨害するモノはカエレ……】
不気味な声とともに、足元の生えっぱなしになっている雑草の隙間から、黒い霊的なオーラが湧き上がってきた。
【家神だ……この男……家神だ。見ろ、憎い嫁もいるぞ……家神一族は、滅ぼさなくてはならない……呪いを……】
グシャァ……と地面から、妖しげな手が生えてくる。そして、鋭い爪で切り裂くように攻撃を仕掛けてきた。
「きゃっ。スグルどの、足元から次々に祟り神がっ……。いやっ無礼な……レンゲ流滅裂術!」
「きょぉおおおおおっ」
素早く、足を引っ張ってきたあやかしを滅裂術で退治するスイレン。
「くっ……まさか、元々ここに埋まっていた? いや、この土地にかけられた呪いに呼応して召喚されているのか? ちぃっ。式神よ、我の力となれっ」
「きゅえぇええええっ」
ぐわんっ! 絶え間なく増え続ける祟り神に対抗して、式神を召喚。10体ほど滅するが、再び同じ場所から祟り神が湧いてくる。
「みゃあ、こうなったら来る敵全部戦うしかありませんのにゃ! 猫耳忍法っ! 切り裂きの術っ」
「きゅううううぃんっ」
奇声をあげながら、一旦は消滅し……そして、再び地面から湧いてくる敵たち。まるでキリがない……これが祟り神のチカラなのか?
祟り神1体のチカラはそれほどでもないが、数が多いし一定時間で復活してしまう。すると、オレたちが苦戦している様子に勝利を確信し始めたのかリーダーらしき祟り神がオレを指差し、煽り始めた。
『クックックッ。我らは、悲願を果たすために長きにわたりこの山に潜んでいた。我々の数は1000体。お前らの数はたったの3人……しかも我々は無限に復活できる。いかに家神一族と言えども、無限に湧く1000の祟り神には叶うまい』
『くぇっくぇっ! おや、まぁどうやらこのふたり……新婚のようですぜ。つがいになりたてのニオイがしてきやがる』
『ひひっこれ以上、家神の血族が続かねえように夫婦もろとも消しさらねぇとな! ガキでも孕まれたら、その世代には呪いが効きやしねぇ……』
(ガキでも孕まれたら、その世代には呪いが効かない? 呪いが効くのは七代先まで……将来、オレとスイレンに子供が出来ると呪いが途切れる八代目になる計算か。ということは、やはり呪いの主は七代前の時代の誰かだっ)
『いやぁ……それにしてもベッピンさんだなぁ。もったいねぇ、こんな生意気な小僧に、大事なレンゲ族の女神の操を捧げちまうなんてよ……。家神なんかに嫁ぐから、女神様はその若さで死ぬんだけどなぁ。うけけっ』
『作戦変更だ、まずは嫁から狙えっ。八代目が生まれないようになぁっ』
「きゃぁっ」
祟り神が標的をスイレン1人に絞り始める。スイレンを守るように、オレとミミちゃんでガードを強化するが数が多すぎる。
「スイレンッ! 急がないと……ちっどこに呪いの拠点があるんだっ?」
「スグルどの、私はまだ戦えるから拠点探しに集中して! 祟り神め、レンゲ族を舐めるでないぞっ」
「みゃあ、スイレン様のことはこのミミが命がけでお守りしますにゃっ! エネルギーが途切れたら兵糧丸で回復するので安心してくださいにゃっ」
「スイレン、ミミちゃん……」
オレの懐にしまったお札の中から、ギルドマスターであるミシャグジ様から譲り受けたお札が眩しく光り始める。
「これは、洞察力を高めるお札が反応している……この近くに、呪いの拠点があるんだ……。我の願いを聞き届けたまえ、この呪いをそしてその主を……すべてのものを解放するチカラを!」
『……スグル、スグルなの?』
ひっそりと佇むように残る1本の木。
その周囲から聞き覚えのある声が聞こえてきて……気がつくとオレの意識は、明治時代へと流れ着いていた。
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