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 お互いが実は異世界転生者であることを告白しあった日から、数日が過ぎました。クライン公爵はお世辞として私を食事を誘ったわけではなく、本気で転生者同士の交流を深めるつもりだった様子。
 その証拠に私が住む辺境のお屋敷宛に、クライン邸への招待状が届けられて、両親公認の仲となったのです。

「マリッサお嬢様、クライン公爵から次のお休みの日に一緒に食事会をしましょうとのお誘いが来ております。これは……凄いお話ですよ、お嬢様! あぁ……苦境に立たされていたアンジュール家に、一筋の希望の光が差し込んできたようだわっ」

 それなりに大きなリビングで感極まって手紙の内容を確認してから涙をこぼし始めたのは、経済的に苦しい我が家でリストラされずに残った年長のメイドさんでした。若かりし日は美人だったことを窺わせる彼女も、苦労のせいか目の下にうっすらとクマがあり実年齢よりも老けて見えます。
 ですがもし、クライン家へと私が嫁げれば、経済的信用が上がることで返済の延長が決まり、領地のぶどう農園の借金もだいぶ楽になります。結果的に、使用人達の心労も和らぐでしょう。

 すると大人しく安い紅茶を嗜んでいたうちの両親が、うんうんと頷いてクライン公爵とのお付き合いについて語り始めました。

「ふむ、その手紙。お父さんも拝見させてもらったが、どうやらクライン公爵はお前のことを随分と気に入ったみたいだな。まずはお友達から交際したいとのことだが、ゆくゆくは恋仲となり結婚したい意向がチラ見えしておる。お前が美しく生まれてくれて、本当に良かったよ」
「ええ、本当に。私とお父さんは駆け落ち結婚だったけど、愛の力を信じて本当に良かったわ。赤毛の私と金髪のお父さん、二人の血が合わさることでストロベリーブロンドのお前が誕生したのよ。奇跡のピンク髪のチカラでイケメン公爵をゲットするなんて、さすがは我が娘だわ」

 要約すると、ピンク色の髪が珍しいから見初められた的なことを言っていて、両親からすれば私の良いところってこの珍しい髪色なんだと再認識。まぁクラインさんは、私が転生者だからお友達になりたがっているんですけどね。

「クライン家って昔は王族だったんだろう? マリッサ姉ちゃん、髪がピンクってだけでお姫様みたいな生活しちゃうのかぁ。あーあ、オレにもピンク髪の美少年ってことで、誰か逆玉に乗せてくれないかなぁ」
「ミカエル御坊ちゃまなら、きっと良いお話が幾つも来ますわ! まずはマリッサお嬢様に、ルートを確立して頂かなくては」

 弟のミカエルも私と同様のストロベリーブロンドヘアを活かして、奇跡の逆玉の輿を狙いたいみたい。メイド長がルート確立だのなんだの、乙女ゲーム紛いの用語を語っていて、実はこのお屋敷自体転生者達の集まりなんじゃ……と複雑な心境に。
 貴族同士とはいえ、あちらは物凄い名門の公爵家。私の家は、今にも没落しそうな辺境の貴族。格差のあるお付き合いですが、幸い女性である私が交通費などを払ってもらう分には不審がられず。
 むしろ『もうすぐ玉の輿結婚か』という印象すら与えているようで、密かなプレッシャーも。

(あれっ……いつの間にか我が家で玉の輿計画が進んでいる?)

 ノリノリでクライン公爵との交際を猛烈プッシュする家族と使用人に押されて、私はめいっぱいドレスアップした状態でクライン家の食事会に挑むことになったのです。
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