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第2章 二周目

第01話 二周目のわたくし

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 わたくしの名前は、ヒルデ・ルキアブルグ。神聖ミカエル帝国が誇る公爵家の深窓の令嬢ですのよ。将来は、この国でもトップクラスの美人になれると褒められておりますが、まだ小学二年生なので、どういう風に成長するのかは自分でも分かりません。

 最近困ることは、妙な立ちくらみや貧血が絶えないことなんですの。お医者様に診てもらっても、原因不明。心身共に健康なはずなんですが、魔力的に体内で不調が起きているみたいです。

 昨日もお友達のジークに階段から転げ落ちそうになっているのを、助けて貰いました。正直言って、この神聖ミカエル帝国の中で、最も女の子にモテる小学生ジークとフラグが立つことは、この辺りの小学生女子をほとんど的に回すことですから避けたいのだけど。

 なんだかんだ言って、ジークはとても優しいし、ちょっぴり気持ちが傾いてしまうのは致し方のないことですわ。でも、それは下宿人のフィヨルドには内緒ですわ。

 多分、フィヨルドはわたくしの許嫁というものなのでしょう。知恵の輪の大会に出場するために、我が家へ泊まりにきていますが、来年以降はずっとこの家に住むという話。

 いえ、フィヨルドは金髪碧眼の絵に描いたような王子様で、無茶苦茶かっっこいいんですけどね。女心は複雑なもので、優等生のフィヨルドのことが好きな反面、ちょっと悪っぽいジークのことも気になってしまうのです。

 それはそうと、そろそろお布団から出ないといけませんわ。メイドさんがわたくしのことを、起こしにきてしまう。お寝坊さんなご令嬢だと思われては、将来良くないですからね。

「ふぁああっ。よく寝た。今日は、学校へ行けるかしら?」

 コンコンコン! 部屋のドアが軽くノックされると、わたくしが返事をする前にその戸が開きました。まだわたくしは小学二年生ですが、せめてプライバシーを考えて、もうちょっと待って欲しいものです。

「おはようございますお嬢様。どうやらお出かけになりたいようですが、大事をとって今日はお休みされるようにと……お医者様が」
「えぇえっ。つまんないですわっ。学校へ行きたかったのにっ」
「ですが、朝礼で倒れられてはいけないとのことなので」

 わたくしの反論は、メイドさんには軽く流されてしまいました。なんせ、小学二年生のわたくしの話を真剣になんか聞いていないのでしょう。
 まったく、いつまでも子供扱いで。そんなことだからルキアブルグ家は、いずれ無実の罪で没落の危機に堕ちって……ん?


 ふと、子供用の天蓋付きベッドから降りて、鏡台の前で自分の姿を確認します。ふっくらとした小学二年生らしいほっぺ、まん丸の大きな瞳はもちろんノーメイクで、マスカラもアイシャドウもつけておりません。
 それなりに、育っていたはずのCカップのおっぱいは、成長の兆しすら見られないほどぺったんこ。

 ふと、あの忌々しい記憶が、蘇ってきます。

『神聖ミカエル帝国、市民の皆様。滅亡への可能性が50パーセントを切ったため、これから歴史改変をスタート致します。分岐ルートとなる九年前まで遡りますので、魂と肉体が分離しないようお気をつけください』

 そう……我がルキアブルグ家は、突然の没落の危機に陥りました。そして、それは即ち、神聖ミカエル帝国が滅亡するフラグでもあったのです。何故なら、ルキアブルグ家は伝統と財力で、我が帝国を支えていた最も影響力のあるお家なのですから。

 ですから、我が帝国を司る神殿は、禁呪を用いてでも。ルキアブルグ家が、没落しない道を探すのでしょう。

 例えば、没落の分岐点となる九年前迄、時間を巻き戻したとしても。
 巻き戻す? わたくし、今小学生?

「わたくし、小学生に戻っちゃったんですノォおおおっ!」

 突然叫び始めたわたくしに、メイドさんは『まだ熱があるみたい』と無理やり寝かしつけるのでした。

 わたくし、一体どうなってしまうのっ?
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