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第2章 二周目
第09話 学園に眠る御伽の書
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我が国きってのエリート魔法教育施設として『神聖ウテナ魔法学園』という中高一貫校があります。タイムリープ以前のわたくしでしたら、無縁に近い学校でしたが、二周目のわたくしは魔法使いの卵。
小学低学年の頃に、魔法潜在能力が優秀であることを認められたこともあり。推薦でこのエリート学校へと、進学することが出来ました。とはいえ、わたくしは十六歳で嫁ぐ予定なので、高校には通わず中学までなんですけどね。
女子生徒の制服は白襟にグレーのボレロ風の上下、男子生徒の制服は同じグレーカラーのブレザーデザインとシックなテイストです。
婚約者であるフィヨルド王子もこの学園の高等部に進学していて、わたくし達は親だけでなく学園公認のカップルでした。
今日も手作りサンドウィッチセットを持って、フィヨルドと中庭でランチタイムを愉しんでいたのですが。
「そういえば、ヒルデ。ギルドへの登録はどうするんだい?」
「ギルド? あぁ確か中学二年生になると、強制的に加入させられるんでしたっけ。忘れていましたわ」
「オレとしては、あんまりヒルデには危険なクエストを受けて欲しくないし。出来れば同じ、採取系のギルドでのんびり錬金の研究をしたいんだけど」
金色の前髪をふわりと揺らして、それとなく自分と同じギルドへの加入を促すフィヨルドは、やっぱりカッコいい。
未来の旦那様が、危険なクエストは駄目というのなら、わたくしは無謀なことは致しません。学生時代から良妻を目指して、バッドルート回避を心がけているのです。
「わたくし、フィヨルドと同じギルドに所属したいですわ。あんまり、戦うのって好きじゃないですし。綺麗なお花とかを採取する方が、合っていますもの」
「ふふっ。じゃあ決まりだね。これ、うちのギルドの申込書だよ。すぐに、書ける内容だから、お昼休み中に提出しておこう」
フィヨルドが見守る中、サラサラとギルド加入申込書に名前を書いて、さっそくギルド受付へ。
すると、ギルド総合受付のロビーでたむろっていた生徒の数人が、何処からともなくわたくしを見て、ヒソヒソと噂話を。
「あれっ? あの女の子って、例の悪役令嬢の生まれ変わりって噂の?」
「ああ。なんか、勇者ジーク様の取り巻きが、ライバル意識を燃やしているとかって話だったけど。なんだ……フィヨルドさんと一緒じゃん。やっぱり、ジーク様との話はデマだったのね」
「ジーク様は他校生だし、うちの学校に関する情報もあやふやなんだよ。取り巻き連中は、予言書や御伽噺を鵜呑みにしすぎなんだ。どうせ、現実はフィヨルド王子と結婚しちゃうんだから、ヒルデさんのことは無視しとけばいいのに」
また、わたくしの悪役令嬢生まれ変わり伝説の話題ですわ。けど、小耳に挟んだ話だと、どうやら元ネタとなる書籍があるみたい。
どんな内容の本なのか、分かるといいのだけれど。あいにく、わたくしのことを本当に御伽噺の悪い令嬢だと信じている人達は、詳しい情報を教えてはくれません。
何となく憂鬱な気分で手続きを終えて、ギルド館を出るとフィヨルドが耳元で優しくこう囁きました。
「ヒルデ、妙な噂話は気にしちゃダメだよ。オレが守ってあげるからね」
「……! フィヨルドありがとう。あっ……んっ」
人の気配が少ない大きな木の影で、別れ際にハグをして軽く口付け。親公認の婚約者とはいえ、まだ中学生と高校生だから、キスが限界。名残惜しいけれど、午後の授業があるから一旦別々の教室へ。
すると、一部始終見ていたのか、背後から同級生と後輩が茶化すように、わたくしのラブシーンについてつつく。
「こ……の、リア充がぁあああっ」
「学園公認とはいえ、遠慮ないですよね~。パイセン、マジ我々の前でイチャつき過ぎっす」
「はぅうううっ! 深窓のご令嬢と王子様のラブシーン。拝見させて頂きましたですぅ。はいっ」
右から、同じクラスで軍師志望のルーナ、軽いノリの後輩魔法使いリゼット、隣のクラスのオタ系メガネっ娘マリカの3人。
どういう繋がりなのかというと、図書委員会に所属する『委員会仲間』なのだけれど。いろいろと個性豊かで、賑やかな女の子達なのです。
「みっ見ておりましたの? 一体、いつの間に」
まさか、フィヨルドとわたくしが抱きしめあってキッスをするシーンを、身近な人に見られるなんて。思わず顔が、みるみるうちに赤くなってしまう。
「ふふふ、壁に耳あり障子に目ありと言うではないか! そんなことでは、神聖ミカエル帝国のご令嬢としてはまだまだである。それはそうと、朗報だっ。ヒルデ嬢の探していた悪役令嬢の御伽噺、それらしきものが見つかったぞ」
「マジ焚書って感じのコーナーに、チョロンと残ってたんで、我々がキープしておきましたっ」
ルーナとリゼットが戦利品と言わんばかりに、革の鞄に納めていたのは例のわたくしにそっくりな娘が出てくる『悪役令嬢の御伽噺』だった。
「これが、学園に眠る焚書……悪役令嬢の御伽の書」
(この御伽噺の内容が分かれば、ジークの取り巻きが騒ぐ『シナリオ』というのを回避出来るかも知れない)
わたくしはついに、自分が悪役令嬢と呼ばれる所以を掴み始めていた。
小学低学年の頃に、魔法潜在能力が優秀であることを認められたこともあり。推薦でこのエリート学校へと、進学することが出来ました。とはいえ、わたくしは十六歳で嫁ぐ予定なので、高校には通わず中学までなんですけどね。
女子生徒の制服は白襟にグレーのボレロ風の上下、男子生徒の制服は同じグレーカラーのブレザーデザインとシックなテイストです。
婚約者であるフィヨルド王子もこの学園の高等部に進学していて、わたくし達は親だけでなく学園公認のカップルでした。
今日も手作りサンドウィッチセットを持って、フィヨルドと中庭でランチタイムを愉しんでいたのですが。
「そういえば、ヒルデ。ギルドへの登録はどうするんだい?」
「ギルド? あぁ確か中学二年生になると、強制的に加入させられるんでしたっけ。忘れていましたわ」
「オレとしては、あんまりヒルデには危険なクエストを受けて欲しくないし。出来れば同じ、採取系のギルドでのんびり錬金の研究をしたいんだけど」
金色の前髪をふわりと揺らして、それとなく自分と同じギルドへの加入を促すフィヨルドは、やっぱりカッコいい。
未来の旦那様が、危険なクエストは駄目というのなら、わたくしは無謀なことは致しません。学生時代から良妻を目指して、バッドルート回避を心がけているのです。
「わたくし、フィヨルドと同じギルドに所属したいですわ。あんまり、戦うのって好きじゃないですし。綺麗なお花とかを採取する方が、合っていますもの」
「ふふっ。じゃあ決まりだね。これ、うちのギルドの申込書だよ。すぐに、書ける内容だから、お昼休み中に提出しておこう」
フィヨルドが見守る中、サラサラとギルド加入申込書に名前を書いて、さっそくギルド受付へ。
すると、ギルド総合受付のロビーでたむろっていた生徒の数人が、何処からともなくわたくしを見て、ヒソヒソと噂話を。
「あれっ? あの女の子って、例の悪役令嬢の生まれ変わりって噂の?」
「ああ。なんか、勇者ジーク様の取り巻きが、ライバル意識を燃やしているとかって話だったけど。なんだ……フィヨルドさんと一緒じゃん。やっぱり、ジーク様との話はデマだったのね」
「ジーク様は他校生だし、うちの学校に関する情報もあやふやなんだよ。取り巻き連中は、予言書や御伽噺を鵜呑みにしすぎなんだ。どうせ、現実はフィヨルド王子と結婚しちゃうんだから、ヒルデさんのことは無視しとけばいいのに」
また、わたくしの悪役令嬢生まれ変わり伝説の話題ですわ。けど、小耳に挟んだ話だと、どうやら元ネタとなる書籍があるみたい。
どんな内容の本なのか、分かるといいのだけれど。あいにく、わたくしのことを本当に御伽噺の悪い令嬢だと信じている人達は、詳しい情報を教えてはくれません。
何となく憂鬱な気分で手続きを終えて、ギルド館を出るとフィヨルドが耳元で優しくこう囁きました。
「ヒルデ、妙な噂話は気にしちゃダメだよ。オレが守ってあげるからね」
「……! フィヨルドありがとう。あっ……んっ」
人の気配が少ない大きな木の影で、別れ際にハグをして軽く口付け。親公認の婚約者とはいえ、まだ中学生と高校生だから、キスが限界。名残惜しいけれど、午後の授業があるから一旦別々の教室へ。
すると、一部始終見ていたのか、背後から同級生と後輩が茶化すように、わたくしのラブシーンについてつつく。
「こ……の、リア充がぁあああっ」
「学園公認とはいえ、遠慮ないですよね~。パイセン、マジ我々の前でイチャつき過ぎっす」
「はぅうううっ! 深窓のご令嬢と王子様のラブシーン。拝見させて頂きましたですぅ。はいっ」
右から、同じクラスで軍師志望のルーナ、軽いノリの後輩魔法使いリゼット、隣のクラスのオタ系メガネっ娘マリカの3人。
どういう繋がりなのかというと、図書委員会に所属する『委員会仲間』なのだけれど。いろいろと個性豊かで、賑やかな女の子達なのです。
「みっ見ておりましたの? 一体、いつの間に」
まさか、フィヨルドとわたくしが抱きしめあってキッスをするシーンを、身近な人に見られるなんて。思わず顔が、みるみるうちに赤くなってしまう。
「ふふふ、壁に耳あり障子に目ありと言うではないか! そんなことでは、神聖ミカエル帝国のご令嬢としてはまだまだである。それはそうと、朗報だっ。ヒルデ嬢の探していた悪役令嬢の御伽噺、それらしきものが見つかったぞ」
「マジ焚書って感じのコーナーに、チョロンと残ってたんで、我々がキープしておきましたっ」
ルーナとリゼットが戦利品と言わんばかりに、革の鞄に納めていたのは例のわたくしにそっくりな娘が出てくる『悪役令嬢の御伽噺』だった。
「これが、学園に眠る焚書……悪役令嬢の御伽の書」
(この御伽噺の内容が分かれば、ジークの取り巻きが騒ぐ『シナリオ』というのを回避出来るかも知れない)
わたくしはついに、自分が悪役令嬢と呼ばれる所以を掴み始めていた。
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