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第2章 二周目
第19話 あなたの心に刻む数字と名前
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神聖ミカエル帝国では、卒業記念のダンスパーティーを各地域の神殿にて行う。このダンスパーティーにおいて、ラストダンスを踊ったカップルは、婚姻のお告げで夫婦になるようご神託を受ける可能性が高いと評判だ。
恋人のいない学生にとっては、ラストダンスの相手を誰にするかで、自分の将来が決まる者も少なくない。特に、今回の卒業生の中で注目されているのは、ルキアブルグ家のご令嬢であるヒルデだ。
何と言っても彼女はつい最近、婚約者であったフィヨルド元王子と、破局したばかり。かと言って、かねてより噂の勇者ジークと踊ってしまっては、悪役令嬢の御伽噺と同じ顛末となる可能性も。
* * *
「卒業、おめでとう!」
「今宵は、神聖ミカエル帝国西地区所属の中高卒業記念パーティーです。皆さん、愉しんで下さいっ」
普段はあまり砕けたイメージのない司祭や巫女シビュラが笑顔で学生達の卒業を祝福する。ノンアルコールシャンパンで乾杯し、立食スタイルで会話が進む。
思い思いのドレスに身を包み、学生達は今日という日のダンスに思いを馳せた。惚れている娘と踊る者、残念ながら断られる者など様々だが、すべて青春の思い出になるだろう。
未だに、ダンスに参加していないルキアブルグ家のご令嬢を不思議に思ったのか、友人の一人であり同じ図書委員会のマリカが彼女にダンスパートナーの有無を問う。
「ヒルデさんは、結局ジークさんと踊ることになったんですが?」
「そ、それが。わたくしの場合、最近フィヨルドと婚約解消したばかりなので、神殿のお告げによって相手を決めることになったのです」
「えっ……神殿の? それってまるで、結婚を決めるご神託のような……一体、どうして」
すぐそばで彼女達の会話を聞いていた野次馬も、まさかのご神託設定に驚きを隠せない。
『ねぇ聞いた? ヒルデ嬢のダンスパートナーだけ、神殿のご神託で決めるんですって』
『やっぱりフィヨルド元王子の手前、軽々しく相手を決定させる訳にはいかないんじゃないの?』
『いやいや、御伽噺の悪役令嬢伝説と被らないように、ジーク君との可能性を避けたいだけなのでは』
ざわつき始めた会場では、すでに注目はヒルデ一人に集中し始めていた。
(本当は、ジークとダンスして無難に終わる予定だったのに。ジークったら、何処にもいないし。フィヨルドの姿も見当たらないし、わたくしどうなるの)
「えっ……あれ、ジークさんとフィヨルド王子じゃない?」
一際目立つ美青年二人の登場に、会場内はどよめきながらも聖書のモーセの海の道の如く、人だかりが道を開けた。タキシード姿のジークとフィヨルドは、黒髪切れ長と金髪の大きな瞳で対照的でありながらも、どちらも目を惹く美形である。
ヒルデの数メートル前で二人揃ってピタリと止まる。すると、巫女シビュラが御神託の御神籤の箱を手に、ヒルデに選択を促した。
「これより、神聖ミカエル帝国の特別神託儀式を執り行います。汝ヒルデ・ルキアブルグが、ジーク・ヘルツォークと婚姻した場合の神聖ミカエル帝国滅亡の可能性、五十パーセント。ヒルデ・ルキアブルグがフィヨルド・リヒテンベルクと婚姻した場合、神聖ミカエル帝国が滅亡する可能性、五十パーセント」
流石に、このご神託には皆おかしいと思うようで、反論の意見が飛び交う。
『どういうこと? どちらを選んでも神聖ミカエル帝国は五十パーセントの確率で滅ぶじゃない!』
『多分、未来は自分達で決めろって意味なんじゃないの』
『ヒルデちゃーん! 難しいこと考えないで、自分に素直になりなよっ』
(自分の気持ちに素直になって、わたくしが本当に好きなのは……)
検討する時間を与えるためなのか、ジークとフィヨルドの一人ずつにヒルデへの想いを伝えさせることに。
「ヒルデ、僕は小さな頃からずっとキミに片想いしていた。勇者として、一人前になれば神殿に認められると信じて、懸命に努力してきた。剣技、魔法、クエスト、けれど……結局はキミの心に寄り添わなくては選ばれないと気づいたんだ。どうだい? 僕はキミの心に花を咲かせられたかい」
「ジーク……わたくしは、ずっとあなたのこと誤解していたの。いいえ、結ばれることのない初恋の人から、目を背けたかったんだわ。ずっとあなたのことを嫌っているフリをして、本当はずっと好きで……けど。フィヨルドと出会って、だんだんとフィヨルドに惹かれるようになったの。ジークという初恋を引きずりながら。そういう曖昧な気持ちとは訣別しなきゃね」
幼い頃は両思いであるにも関わらず、お互いにどこか意地を張っているようなところがあった。叶わない初恋を諦めるための、苦肉の策だったのかも知れない。
確かに、ジークは以前よりもずっと、ヒルデの気持ちを尊重するようになっていた。フィヨルドへの気持ちを理解しつつ、いつでもヒルデがジークに避難出来るように、穏やかな態度で受け止めてくれた。
もう、ヒルデもジークも照れ隠しに意地を張る年頃ではないのだ。
一方で元婚約者のフィヨルドは、申し訳なさそうな表情で、ヒルデに諦めきれない想いを伝えてきた。
「ごめんヒルデ、さっきはカッコつけて。まるでこのまま、キミの前から立ち去るようなことを言っておきながら、未練がましい真似をして。実は、オレの就職先ってキミの住むルキアブルグ家なんだ」
「えぇっ。小間使いの住み込みアルバイトってわたくしの家だったの。てっきり、わたくしフィヨルドに振られたものだと。どうして……」
「あぁ。笑っちゃうだろう、オレは想像以上にキミに惚れているんだよ。もう、神殿が決めた婚約者でなければ、王子ですらない。けど、キミに世界で一番惚れている馬鹿な男のオレを……ヒルデが選んでくれたら。オレは何だって出来る気がするんだ」
ジークとフィヨルド、二人の男の告白にヒルデは胸を押さえて祈るように答えを導き出す。それは、決して解くことが出来ないとされていた【ゴルディアスの結び目】を解くようなもどかしさだ。
外では雷雨が降ってきているのか、神殿内の照明がチカチカとついたり止んだりし始めていた。
「ヒルデ・ルキアブルグ……さあ答えを、あなたが本当に好きな相手を選ぶのですっ」
「わたくしが、本当に好きなのは……実は……」
――その時だった。
ガラガラ……ピシャァアアアアンッ!
ヒルデが男の名を告げようとした瞬間を狙ったかのように、稲光が神殿内外を襲う。まるで、ヒルデに答えを言わせないと言わんばかりに。
「嘘だろ、雷が神殿の中に……」
「ヒルデッ! 危ないっ」
「きゃああああっ」
混乱する会場、逃げ惑う人々、ヒルデを守るためにジークとフィヨルドが慌てて、彼女に覆いかぶさる。
ヒルデ、ジーク、フィヨルドの3人は雷の呪いによりこのパーティーの記憶を喪失した。その間、因縁を解くためのタイムリープが、何周行われたかは定かではない。
やがて時は過ぎ去り、ご神託により相手を決める2020年の2月を迎えた。
* * *
「ヒルデ嬢。あなた様の夫となる方が、遂にご神託で決定しましたよ」
異国の装束姿の巫女シビュラが、御神籤を片手にルキアブルグ家のご令嬢ヒルデの元へと吉報を運ぶ。彼女の婚姻相手を示す御神籤の番号【2-29】番、それが何を意味するのかは定かではない。
「あぁシビュラ様。結果が出ましたのね。お相手の名前はなんと仰いますの? わたくしの夫となる方のお名前は……」
美しいご令嬢ヒルデは、焦らすような仕草の巫女シビュラに、優しく答えを問う。その表情は穏やかで、落ち着き払っていた。
「もうっ……本当は分かっていらっしゃるでしょう。だって、神殿のご神託というのは、ただ単にあなたの心の本音を映し出しているだけなのですから!」
ご神託の巫女シビュラが手にした御神籤の内容は、刻まれた数字以外実はただの白紙である。魔法のチカラにより、ヒルデが手にした瞬間、願望に応えるかの如く想い人の名を刻むのだ。
御神籤を受け取り、ヒルデは祈るような仕草で愛する男の名前を呟いた。後日、美男美女の麗しいカップルが神殿で結婚式を挙げたという。
新婦の名はヒルデ・ルキアブルグ、新郎の名は……ご想像にお任せだ。
恋人のいない学生にとっては、ラストダンスの相手を誰にするかで、自分の将来が決まる者も少なくない。特に、今回の卒業生の中で注目されているのは、ルキアブルグ家のご令嬢であるヒルデだ。
何と言っても彼女はつい最近、婚約者であったフィヨルド元王子と、破局したばかり。かと言って、かねてより噂の勇者ジークと踊ってしまっては、悪役令嬢の御伽噺と同じ顛末となる可能性も。
* * *
「卒業、おめでとう!」
「今宵は、神聖ミカエル帝国西地区所属の中高卒業記念パーティーです。皆さん、愉しんで下さいっ」
普段はあまり砕けたイメージのない司祭や巫女シビュラが笑顔で学生達の卒業を祝福する。ノンアルコールシャンパンで乾杯し、立食スタイルで会話が進む。
思い思いのドレスに身を包み、学生達は今日という日のダンスに思いを馳せた。惚れている娘と踊る者、残念ながら断られる者など様々だが、すべて青春の思い出になるだろう。
未だに、ダンスに参加していないルキアブルグ家のご令嬢を不思議に思ったのか、友人の一人であり同じ図書委員会のマリカが彼女にダンスパートナーの有無を問う。
「ヒルデさんは、結局ジークさんと踊ることになったんですが?」
「そ、それが。わたくしの場合、最近フィヨルドと婚約解消したばかりなので、神殿のお告げによって相手を決めることになったのです」
「えっ……神殿の? それってまるで、結婚を決めるご神託のような……一体、どうして」
すぐそばで彼女達の会話を聞いていた野次馬も、まさかのご神託設定に驚きを隠せない。
『ねぇ聞いた? ヒルデ嬢のダンスパートナーだけ、神殿のご神託で決めるんですって』
『やっぱりフィヨルド元王子の手前、軽々しく相手を決定させる訳にはいかないんじゃないの?』
『いやいや、御伽噺の悪役令嬢伝説と被らないように、ジーク君との可能性を避けたいだけなのでは』
ざわつき始めた会場では、すでに注目はヒルデ一人に集中し始めていた。
(本当は、ジークとダンスして無難に終わる予定だったのに。ジークったら、何処にもいないし。フィヨルドの姿も見当たらないし、わたくしどうなるの)
「えっ……あれ、ジークさんとフィヨルド王子じゃない?」
一際目立つ美青年二人の登場に、会場内はどよめきながらも聖書のモーセの海の道の如く、人だかりが道を開けた。タキシード姿のジークとフィヨルドは、黒髪切れ長と金髪の大きな瞳で対照的でありながらも、どちらも目を惹く美形である。
ヒルデの数メートル前で二人揃ってピタリと止まる。すると、巫女シビュラが御神託の御神籤の箱を手に、ヒルデに選択を促した。
「これより、神聖ミカエル帝国の特別神託儀式を執り行います。汝ヒルデ・ルキアブルグが、ジーク・ヘルツォークと婚姻した場合の神聖ミカエル帝国滅亡の可能性、五十パーセント。ヒルデ・ルキアブルグがフィヨルド・リヒテンベルクと婚姻した場合、神聖ミカエル帝国が滅亡する可能性、五十パーセント」
流石に、このご神託には皆おかしいと思うようで、反論の意見が飛び交う。
『どういうこと? どちらを選んでも神聖ミカエル帝国は五十パーセントの確率で滅ぶじゃない!』
『多分、未来は自分達で決めろって意味なんじゃないの』
『ヒルデちゃーん! 難しいこと考えないで、自分に素直になりなよっ』
(自分の気持ちに素直になって、わたくしが本当に好きなのは……)
検討する時間を与えるためなのか、ジークとフィヨルドの一人ずつにヒルデへの想いを伝えさせることに。
「ヒルデ、僕は小さな頃からずっとキミに片想いしていた。勇者として、一人前になれば神殿に認められると信じて、懸命に努力してきた。剣技、魔法、クエスト、けれど……結局はキミの心に寄り添わなくては選ばれないと気づいたんだ。どうだい? 僕はキミの心に花を咲かせられたかい」
「ジーク……わたくしは、ずっとあなたのこと誤解していたの。いいえ、結ばれることのない初恋の人から、目を背けたかったんだわ。ずっとあなたのことを嫌っているフリをして、本当はずっと好きで……けど。フィヨルドと出会って、だんだんとフィヨルドに惹かれるようになったの。ジークという初恋を引きずりながら。そういう曖昧な気持ちとは訣別しなきゃね」
幼い頃は両思いであるにも関わらず、お互いにどこか意地を張っているようなところがあった。叶わない初恋を諦めるための、苦肉の策だったのかも知れない。
確かに、ジークは以前よりもずっと、ヒルデの気持ちを尊重するようになっていた。フィヨルドへの気持ちを理解しつつ、いつでもヒルデがジークに避難出来るように、穏やかな態度で受け止めてくれた。
もう、ヒルデもジークも照れ隠しに意地を張る年頃ではないのだ。
一方で元婚約者のフィヨルドは、申し訳なさそうな表情で、ヒルデに諦めきれない想いを伝えてきた。
「ごめんヒルデ、さっきはカッコつけて。まるでこのまま、キミの前から立ち去るようなことを言っておきながら、未練がましい真似をして。実は、オレの就職先ってキミの住むルキアブルグ家なんだ」
「えぇっ。小間使いの住み込みアルバイトってわたくしの家だったの。てっきり、わたくしフィヨルドに振られたものだと。どうして……」
「あぁ。笑っちゃうだろう、オレは想像以上にキミに惚れているんだよ。もう、神殿が決めた婚約者でなければ、王子ですらない。けど、キミに世界で一番惚れている馬鹿な男のオレを……ヒルデが選んでくれたら。オレは何だって出来る気がするんだ」
ジークとフィヨルド、二人の男の告白にヒルデは胸を押さえて祈るように答えを導き出す。それは、決して解くことが出来ないとされていた【ゴルディアスの結び目】を解くようなもどかしさだ。
外では雷雨が降ってきているのか、神殿内の照明がチカチカとついたり止んだりし始めていた。
「ヒルデ・ルキアブルグ……さあ答えを、あなたが本当に好きな相手を選ぶのですっ」
「わたくしが、本当に好きなのは……実は……」
――その時だった。
ガラガラ……ピシャァアアアアンッ!
ヒルデが男の名を告げようとした瞬間を狙ったかのように、稲光が神殿内外を襲う。まるで、ヒルデに答えを言わせないと言わんばかりに。
「嘘だろ、雷が神殿の中に……」
「ヒルデッ! 危ないっ」
「きゃああああっ」
混乱する会場、逃げ惑う人々、ヒルデを守るためにジークとフィヨルドが慌てて、彼女に覆いかぶさる。
ヒルデ、ジーク、フィヨルドの3人は雷の呪いによりこのパーティーの記憶を喪失した。その間、因縁を解くためのタイムリープが、何周行われたかは定かではない。
やがて時は過ぎ去り、ご神託により相手を決める2020年の2月を迎えた。
* * *
「ヒルデ嬢。あなた様の夫となる方が、遂にご神託で決定しましたよ」
異国の装束姿の巫女シビュラが、御神籤を片手にルキアブルグ家のご令嬢ヒルデの元へと吉報を運ぶ。彼女の婚姻相手を示す御神籤の番号【2-29】番、それが何を意味するのかは定かではない。
「あぁシビュラ様。結果が出ましたのね。お相手の名前はなんと仰いますの? わたくしの夫となる方のお名前は……」
美しいご令嬢ヒルデは、焦らすような仕草の巫女シビュラに、優しく答えを問う。その表情は穏やかで、落ち着き払っていた。
「もうっ……本当は分かっていらっしゃるでしょう。だって、神殿のご神託というのは、ただ単にあなたの心の本音を映し出しているだけなのですから!」
ご神託の巫女シビュラが手にした御神籤の内容は、刻まれた数字以外実はただの白紙である。魔法のチカラにより、ヒルデが手にした瞬間、願望に応えるかの如く想い人の名を刻むのだ。
御神籤を受け取り、ヒルデは祈るような仕草で愛する男の名前を呟いた。後日、美男美女の麗しいカップルが神殿で結婚式を挙げたという。
新婦の名はヒルデ・ルキアブルグ、新郎の名は……ご想像にお任せだ。
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