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第3夜 魔法言語インストール
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――魔法の境界ランプ、不可能と言われた不老不死の錬金術を成功させたリー老師が製作した、老師の最高傑作である。
持ち主は魔導の力を与えられ、異世界との境界線を越えることが出来るようになる。そして、そのランプの持ち主こそが、魔導世界を統べる玉座に座ることが許される……これは、リー老師がかの帝国の今は亡き魔導王に依頼されて後継者を探し出す為に作られた特別なランプだからである。
だが、境界ランプはリー老師が製作したもの以外にも数種類存在する。リー老師の友人であり、ライバルであった錬金魔導師達が彼に対抗する為に、己の全魔力を投じて他のランプを製作し、玉座を統べるチカラを得ようとしたからである。
玉座を統べる後継者が決まる前に魔導王は亡くなり、やがて帝国は幻のものとされ、いくつかの魔法の境界ランプだけが各地に取り残された。
魔法の境界ランプ達は、魔力の高い主を求めてさまざまな国や人間を渡り歩いた。そして、そのランプを持つ魔力に耐えきれずに、持ち主は次々と命を奪われ、境界ランプはリー老師をはじめとする錬金魔導師達の手によって、永きに渡り封印された。
しかし、2000年代に入り精霊王ジンから魔法世界変革の兆しを告げられ、新たな魔導王を探し出すように任務が課せられた。
リー老師達錬金魔導師は、人間界にごく普通の人間の姿でしばらく生活し、人間達の中から魔導王に相応しい才覚のある若者を連れてくるように……そしてその若者達の才知、魔力を競わせ真の魔導王を育成するように任命したのである。
「と、まあそんなカンジで……ようは、魔導王になれそうな才能のある若者をスカウトしてテストしてみよう! って話だよ。ボクの作った境界ランプが元祖境界ランプなんだけど、ボクのライバル達もなかなかに優秀なヤツらばかりでね! チートっぽい能力のランプがウジャウジャあるわけよ。それを千夜君の好奇心パワーで、ズバんと無双して魔導王になってくれたら嬉しいなーなんてね!」
「リー老師……っていうか店長……」
老師とは名ばかりの、見た目20代後半から30代前半に見えるイケメン店長は、オレに持ち主はみんな死んだという不吉極まりない魔法の境界ランプを押し付けて、しかも他のランプの持ち主相手に無双しろとか言ってきた。
「魔法のランプって、この世にひとつだけじゃなかったんですか?」
リー店長はオレの素朴な疑問を華麗にスルーし、楽しそうに今後の計画を語り始めて、店の奥にある冷蔵庫からガサゴソと取り出した。
「……まあ、ひと休みしたら精霊王に挨拶に行かなきゃ行けないから千夜君、この飲み物飲んで! ボクの特製魔法言語スムージーだよ。飲み干した人間は、どんな国の言葉でも魔法言語でも使いこなせるようになっちゃうミラクルジュース。グイッとどうぞ!」
にこやかな笑顔でオレに濃い紫色したドリンクを手渡す店長。
ヒンヤリとしたドリンクはガラスのコップに入っていて、どこにでもあるブドウジュースか何かに見える。
「……飲んで平気なんですか?」
オレが疑って躊躇していると、ミニドラゴンのルルが、
「ボクもこのジュースを飲んで人間語が話せるようになったのですキュ! 平気ですキュウ!」
と、つぶらな瞳で羽をぱた付かせながら語るので、一応信用してみることにした。
ちなみにオレが信用したのは店長の事ではなく、純粋そうなミニドラゴンの証言の方である。
ゴクゴクゴク……甘酸っぱい、けれど爽やかな喉越しのスムージーは、紫色芋を混ぜたような不思議な味が広がって……。
「あれ、なんともないや……」
――そう思った瞬間、オレの頭の中にあらゆる言語、文字列、記号、文化の知識が一気にインストールされ、オレはそのあまりの膨大な情報量に意識がなくなり……。
白昼夢か蜃気楼か、オレの意識に誰かの姿が見える。
「誰だ?」
玉座を支配する謎の影……。
『――ココマデコイ、玉座ヲ手ニイレロ』
オレの意識は、そこでプツリと切れた。
持ち主は魔導の力を与えられ、異世界との境界線を越えることが出来るようになる。そして、そのランプの持ち主こそが、魔導世界を統べる玉座に座ることが許される……これは、リー老師がかの帝国の今は亡き魔導王に依頼されて後継者を探し出す為に作られた特別なランプだからである。
だが、境界ランプはリー老師が製作したもの以外にも数種類存在する。リー老師の友人であり、ライバルであった錬金魔導師達が彼に対抗する為に、己の全魔力を投じて他のランプを製作し、玉座を統べるチカラを得ようとしたからである。
玉座を統べる後継者が決まる前に魔導王は亡くなり、やがて帝国は幻のものとされ、いくつかの魔法の境界ランプだけが各地に取り残された。
魔法の境界ランプ達は、魔力の高い主を求めてさまざまな国や人間を渡り歩いた。そして、そのランプを持つ魔力に耐えきれずに、持ち主は次々と命を奪われ、境界ランプはリー老師をはじめとする錬金魔導師達の手によって、永きに渡り封印された。
しかし、2000年代に入り精霊王ジンから魔法世界変革の兆しを告げられ、新たな魔導王を探し出すように任務が課せられた。
リー老師達錬金魔導師は、人間界にごく普通の人間の姿でしばらく生活し、人間達の中から魔導王に相応しい才覚のある若者を連れてくるように……そしてその若者達の才知、魔力を競わせ真の魔導王を育成するように任命したのである。
「と、まあそんなカンジで……ようは、魔導王になれそうな才能のある若者をスカウトしてテストしてみよう! って話だよ。ボクの作った境界ランプが元祖境界ランプなんだけど、ボクのライバル達もなかなかに優秀なヤツらばかりでね! チートっぽい能力のランプがウジャウジャあるわけよ。それを千夜君の好奇心パワーで、ズバんと無双して魔導王になってくれたら嬉しいなーなんてね!」
「リー老師……っていうか店長……」
老師とは名ばかりの、見た目20代後半から30代前半に見えるイケメン店長は、オレに持ち主はみんな死んだという不吉極まりない魔法の境界ランプを押し付けて、しかも他のランプの持ち主相手に無双しろとか言ってきた。
「魔法のランプって、この世にひとつだけじゃなかったんですか?」
リー店長はオレの素朴な疑問を華麗にスルーし、楽しそうに今後の計画を語り始めて、店の奥にある冷蔵庫からガサゴソと取り出した。
「……まあ、ひと休みしたら精霊王に挨拶に行かなきゃ行けないから千夜君、この飲み物飲んで! ボクの特製魔法言語スムージーだよ。飲み干した人間は、どんな国の言葉でも魔法言語でも使いこなせるようになっちゃうミラクルジュース。グイッとどうぞ!」
にこやかな笑顔でオレに濃い紫色したドリンクを手渡す店長。
ヒンヤリとしたドリンクはガラスのコップに入っていて、どこにでもあるブドウジュースか何かに見える。
「……飲んで平気なんですか?」
オレが疑って躊躇していると、ミニドラゴンのルルが、
「ボクもこのジュースを飲んで人間語が話せるようになったのですキュ! 平気ですキュウ!」
と、つぶらな瞳で羽をぱた付かせながら語るので、一応信用してみることにした。
ちなみにオレが信用したのは店長の事ではなく、純粋そうなミニドラゴンの証言の方である。
ゴクゴクゴク……甘酸っぱい、けれど爽やかな喉越しのスムージーは、紫色芋を混ぜたような不思議な味が広がって……。
「あれ、なんともないや……」
――そう思った瞬間、オレの頭の中にあらゆる言語、文字列、記号、文化の知識が一気にインストールされ、オレはそのあまりの膨大な情報量に意識がなくなり……。
白昼夢か蜃気楼か、オレの意識に誰かの姿が見える。
「誰だ?」
玉座を支配する謎の影……。
『――ココマデコイ、玉座ヲ手ニイレロ』
オレの意識は、そこでプツリと切れた。
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