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第4夜 おとぎ話と母の思い出
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『ココマデコイ。玉座ヲ手ニ入レロ』
オレの意識は不思議な声に導かれ、何処かの古びた宮殿の玉座に向かっていた。
宮殿の中では秘密裏に儀式が行われていた。扉は閉ざされ、さらに内部は幕屋で守られている。精霊たちが見守る中、かの帝国の魔導王は世界の全てを統べるため……その後継者を並ばせていた。
真紅の絨毯に金糸で描かれた魔法陣、数人の若い選ばれた後継者候補たちが輪を作り、呪文を唱えている。幾つかの魔法のランプ、魔法文字の刻まれた指輪、聖杯に命の水を注ぎ永遠の時間を飲み干す。
しかし、儀式に加わっていた1人の魔導師が王を裏切り破滅の呪文を唱えた。
魔導王は自分の命と引きかえに裏切り者の魔導師を封印し、魔法のランプは永い永い眠りについていた。
――新しい持ち主が現れるまで……。
「ううん……」
オレは少しずつ意識を取り戻していった。誰かがオレを膝枕してくれているようだ。懐かしい……オレが小さい頃、母さんが膝枕をしてよくおとぎ話を読んでくれたっけ。オレが自分で本を読めるようになると、次第に膝枕をしてもらうこともなくなり……代わりにオレは自分で考えたおとぎ話を母さんにきいてもらうようになったんだ。
「いつか、母さんに僕が作ったおとぎ話の続きをきかせてあげるね!」
「ふふっ、私、千夜の作ったおとぎ話大好きよ。楽しみにしてるわ」
――小さい頃の遠い約束。
母さんはオレが10歳の時に亡くなり、永遠に叶わない《おとぎ話の続きを語る約束》は、オレの心の奥にある夢の向こう側へと追いやられた。
「千夜さん……気づきましたか?」
「キュー。マスター千夜気づいて良かったですキュ!」
柔らかな温もりの正体……膝枕をしてくれていたのは精霊セラだ。傍では、ミニドラゴンのルルが澄んだ瞳でオレの顔を覗み、一瞬で現実に引き戻される。
「もう大丈夫だよ。ありがとう、セラ、ルル」
オレは起き上がって部屋を見渡しふと異変に気付く、オレが休んでいた部屋はランプ店の休憩ルームだが、室内に貼られている異国の言葉のポスターが……正確には、その《異国の言葉》が何故か全て読めるのだ。
「あれっ、もしかして……」
「如何されました? 千夜さん」
「キュウ?」
試しに部屋の棚に置いてある多国語の書物をパラパラとめくると、まるで自分の頭の中に翻訳機か何かがインストールされたかのように、スラスラと言葉が理解出来るのであった。
「読める……頭に自然と言葉が浮かんで……まるで魔法のような……」
オレの様子を見て得意げに、
「ソロモン王は魔法の指輪のチカラにより、多国語を操り、動物や精霊語をも理解し、魔導のすべてを手に入れたと言われている。残念ながらソロモン王の指輪を手に入れることが出来なかったんでね、精霊王に挨拶に行く前にキミにソロモン王並みの言語理解能力を与えたのさ……この僕の魔法のスムージーでね!」
と、説明し始めたのは不老不死の錬金魔導師リー店長だ。
「店長! 確かに効果は凄かったですけど……オレ意識なくしたんですよ! そういう飲み物なら前もって言ってください!」
リー店長はルルをちょこんと肩に乗せて、
「いやあルルが飲んでも大丈夫だったからねえ。ルルはキミの十分の1しか飲んでないけど……」
「十分の1……それだけでルルは人間語を話すドラゴンになったのか……」
「さあ、もうすぐ日が暮れる、精霊王の晩餐会まであと僅か……支度をしたら全員で精霊王の宮殿までひとっ飛びするからね!」
店長は、何処から出したのか、赤い石のついた細い杖をひと振り……するとオレたちはそれぞれパーティー用の正装に変身していた。
「えっ服が?」
セラは普段の踊り子風衣装ではなく、白い清楚なチャイナドレス……スリットから美脚が覗きセクシーだ。
ルルも首飾りに小さい青いリボンをつけている。
店長は……悔しいけれどタキシードが恐ろしいほど似合っている。モデル顔負けのスタイルだ。
「みんなは正装がよく似合ってるよね……オレにこの借りてきたようなタキシードが似合うのか似合わないのか分からないけど……」
「千夜さん、素敵ですよ」
とセラがお世辞でも言ってくれたので、まあいいか。
「でも、精霊王の宮殿って近いんですか? 」
「そのランプの名前忘れたの? 《境界ランプ》だよ。そのランプさえあれば、何処にでも瞬時に移動できるのさ。精霊王の宮殿に行きたいってランプに告げてごらん」
「行きたいところに何処へでも行く事が出来る?」
オレは手にした黄金のランプを見据えてひと呼吸してから、ランプに思い切って命じた。
「ここにいる全員を……精霊王の宮殿へ!」
ランプに行き先を告げるとキラリとした輝きとともに魔法のチカラが発動し、ランプからは黙々とした紫色の煙が立ち込めて……。
――オレたちは見知らぬ宮殿の入り口に一瞬でワープしたのだった。
オレの意識は不思議な声に導かれ、何処かの古びた宮殿の玉座に向かっていた。
宮殿の中では秘密裏に儀式が行われていた。扉は閉ざされ、さらに内部は幕屋で守られている。精霊たちが見守る中、かの帝国の魔導王は世界の全てを統べるため……その後継者を並ばせていた。
真紅の絨毯に金糸で描かれた魔法陣、数人の若い選ばれた後継者候補たちが輪を作り、呪文を唱えている。幾つかの魔法のランプ、魔法文字の刻まれた指輪、聖杯に命の水を注ぎ永遠の時間を飲み干す。
しかし、儀式に加わっていた1人の魔導師が王を裏切り破滅の呪文を唱えた。
魔導王は自分の命と引きかえに裏切り者の魔導師を封印し、魔法のランプは永い永い眠りについていた。
――新しい持ち主が現れるまで……。
「ううん……」
オレは少しずつ意識を取り戻していった。誰かがオレを膝枕してくれているようだ。懐かしい……オレが小さい頃、母さんが膝枕をしてよくおとぎ話を読んでくれたっけ。オレが自分で本を読めるようになると、次第に膝枕をしてもらうこともなくなり……代わりにオレは自分で考えたおとぎ話を母さんにきいてもらうようになったんだ。
「いつか、母さんに僕が作ったおとぎ話の続きをきかせてあげるね!」
「ふふっ、私、千夜の作ったおとぎ話大好きよ。楽しみにしてるわ」
――小さい頃の遠い約束。
母さんはオレが10歳の時に亡くなり、永遠に叶わない《おとぎ話の続きを語る約束》は、オレの心の奥にある夢の向こう側へと追いやられた。
「千夜さん……気づきましたか?」
「キュー。マスター千夜気づいて良かったですキュ!」
柔らかな温もりの正体……膝枕をしてくれていたのは精霊セラだ。傍では、ミニドラゴンのルルが澄んだ瞳でオレの顔を覗み、一瞬で現実に引き戻される。
「もう大丈夫だよ。ありがとう、セラ、ルル」
オレは起き上がって部屋を見渡しふと異変に気付く、オレが休んでいた部屋はランプ店の休憩ルームだが、室内に貼られている異国の言葉のポスターが……正確には、その《異国の言葉》が何故か全て読めるのだ。
「あれっ、もしかして……」
「如何されました? 千夜さん」
「キュウ?」
試しに部屋の棚に置いてある多国語の書物をパラパラとめくると、まるで自分の頭の中に翻訳機か何かがインストールされたかのように、スラスラと言葉が理解出来るのであった。
「読める……頭に自然と言葉が浮かんで……まるで魔法のような……」
オレの様子を見て得意げに、
「ソロモン王は魔法の指輪のチカラにより、多国語を操り、動物や精霊語をも理解し、魔導のすべてを手に入れたと言われている。残念ながらソロモン王の指輪を手に入れることが出来なかったんでね、精霊王に挨拶に行く前にキミにソロモン王並みの言語理解能力を与えたのさ……この僕の魔法のスムージーでね!」
と、説明し始めたのは不老不死の錬金魔導師リー店長だ。
「店長! 確かに効果は凄かったですけど……オレ意識なくしたんですよ! そういう飲み物なら前もって言ってください!」
リー店長はルルをちょこんと肩に乗せて、
「いやあルルが飲んでも大丈夫だったからねえ。ルルはキミの十分の1しか飲んでないけど……」
「十分の1……それだけでルルは人間語を話すドラゴンになったのか……」
「さあ、もうすぐ日が暮れる、精霊王の晩餐会まであと僅か……支度をしたら全員で精霊王の宮殿までひとっ飛びするからね!」
店長は、何処から出したのか、赤い石のついた細い杖をひと振り……するとオレたちはそれぞれパーティー用の正装に変身していた。
「えっ服が?」
セラは普段の踊り子風衣装ではなく、白い清楚なチャイナドレス……スリットから美脚が覗きセクシーだ。
ルルも首飾りに小さい青いリボンをつけている。
店長は……悔しいけれどタキシードが恐ろしいほど似合っている。モデル顔負けのスタイルだ。
「みんなは正装がよく似合ってるよね……オレにこの借りてきたようなタキシードが似合うのか似合わないのか分からないけど……」
「千夜さん、素敵ですよ」
とセラがお世辞でも言ってくれたので、まあいいか。
「でも、精霊王の宮殿って近いんですか? 」
「そのランプの名前忘れたの? 《境界ランプ》だよ。そのランプさえあれば、何処にでも瞬時に移動できるのさ。精霊王の宮殿に行きたいってランプに告げてごらん」
「行きたいところに何処へでも行く事が出来る?」
オレは手にした黄金のランプを見据えてひと呼吸してから、ランプに思い切って命じた。
「ここにいる全員を……精霊王の宮殿へ!」
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