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三章 どこになにが潜んでるかは分からない

最終話.いつもの朝

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 時が経ち、広翔は元の役職に戻りバリバリ働いていた。僕はそれなりに。
 生活はあまり変わらず、広翔と共に過ごす時間も増えはしなかった。でもそんな生活に僕も慣れきって穏やかに過ごしている。

「なにしてんの?」
「ああ、柳瀬と美術館巡りとかしてるんだ。それをSNSにアップしてるの。例えばこの絵の時代背景、作者の気持ちとか解説かな。それに僕の感想を添えて」
「ふーん……どれどれ」

 僕から携帯を取り上げてスレッドをスクロール。

「俺のおすすめにも上がってたな。これお前か」
「うん。けっこう見てくれる人が増えてきたんだ」

 すごいね、いい文章だと思ってたと褒めてくれた。

「そんな趣味あるなんて言ってなかったじゃん」
「あ~会社でチケットあげるってもらって、ふたりで行ったことがあったんだ。そこからはまった」
「だから本棚に絵画の本か」
「うん」

 美術館か……俺はちょっと辛いかなって。俺は家具とかの調度品、建物のほうが好きって。

「日本のがいい。筆とか使わないけど文箱とか漆塗りのもの、螺鈿の細工とか。昔のアレの蓋の裏の絵には物語が詰まっててさ」
「へえ、じゃあ日本の展示の美術館は一緒に行こうよ」
「うん」

 他愛もない会話を休日のベッドの中で楽しんでいた。

「なにするんだよ」
「朝はしなくちゃだろ?」

 萎えてる僕のを掴みだして咥え始めた。

「ちょっ……ん」

 休み前は僕も広翔も遅くに帰宅することが多くて、更に僕が先に寝てるからね。

「口いいよな。すぐ勃起」
「もう!」

 股間に快感が集まればそりゃ勃つでしょうよ。

「支度してくれてんだろ?週末は必ずだもんな」
「ねぇ……それ聞くのやめてくれない?なんで全部口に出すんだよ」
「え?セックスは言葉も大切だろ?やりたい気分を高めるしさ。お前も期待してるからしてるんだろ?」
「うっ……そうだけどさ。ああ俺のためにありがとうと心で思うだけにしてよ」

 ローションをヌリヌリ。指で中に塗り込むように手が動く。

「それじゃつまんない。最近はあからさまには恥ずかしがらないけど、それでもちーは恥ずかしがってるのがいいし」

 時が経つとしなくなるカップルは男女とも多い。でもそれはよくないんだよ、心が離れる一歩になる、寝室を別けるとかね。

「もういいかな」
「うん」

 抱き合って見つめ合って押し込まれる、幸せを感じる瞬間だ。愛は普段の触れ合いだけでは保てない。そうとう年取ればありかもだけど、気が付かないうちにゆっくりと、確実に一歩ずつ愛は後ずさりする。

「ハァハァ……ちー愛してる」
「うん……あうっ僕も」

 時々会社でも夫のいびきがうるさすぎて別にしたなんて聞く。そして何年かすると、その人は夫の愚痴が増えてくる。しない日が多くなってるんだろうと僕は勝手に思ってる。そして熟年の夫婦の離婚とか聞くと、随分前からセックスはしてなかったなんてことは多い。

「ちー……俺もう持たん」
「僕も……うっ…あっ……ひっ」

 こうしてかわいがってもらうのも愛を感じるんだ。まあ、女性の場合は、妊娠もあるから産みたくないのに避妊をしてくれないなんて、ブレイクルームで聞こえたり。だからしなくなるなんてのもあるんだろうとは思う。これは完全に男が悪い。

「あーーっ」
「くっ…ちー痛い、締め過ぎ」
「だってぇ……あぁ」

 僕がゲイなのは柳瀬にはバレた。つい名前出したんだよね……どれだけ気を抜いてんだか。でも今まで通りに付き合ってくれて、奥さんが実家行ったとか、いない時とかに遊んでくれる。

「ハァハァ……」
「キスして」
「うん」

 キスから首、乳首と責めてきて僕のを咥えたり。

「ちーはエッチだから、俺が咥えるとすぐ勃つ」
「ひろが上手いからだよ」
「だろ?俺はちーが悦ぶところ知り尽くしてるから」

 そう言うとずぶり。くーっ

「俺の堪んないだろ」
「あっ……うっ…いい」
「ちーはよそ見しないで俺だけ見てくれ」
「うん」

 こんな言葉はセックスのときに多いはず、きっとみんなもだろう。愛の言葉は本能剥き出しの時のほうが、恥ずかしさが少し緩和されるから。

「ハァハァ…ひろは僕しか見てないね。モテるのになんで?」
「あ?ほか見る必要あるの?お前からの気持ちで足りてるもん」

 僕は抱きついて喘ぎながら聞いてみた。疑ってる訳じゃないけど、年齢も上がってかっこよさが増して……心配でね。

「ちーは何が心配なの?」
「ハァハァ……心配というか僕も……その若くないし……あうっ」
「だから?若いほうがいいなんて人によるよ。俺は若い頃やりまくってるから、出すだけの関係に興味は………あ~全くないと言えば嘘になる」

 ずんずんと腰振りながらなんか考えてるね。

「そりゃあ好みの子に抱いてなんて言われればグラッともくるけど、それはちーもだろ?」
「あんっうん……嘘は言わないよ」

 そこじゃないんだ。ちーがいるから、悲しませたくないって気持ちが働く。これが愛でしょ?って。

「うん……」
「万が一持ち帰るなら、それはちーから気持ちが離れる時だよ。ないけどさ」

 俺は浮気とか考えられないんだ、ちーを愛してるからねって。人の気持ちに永遠なんてものはない。だからお互い気持ちが離れないように、相手を大切に思い思われなくてはならない。友だち、家族でもそうだと。

「うん」
「たぶんちーにいらないと言われるまで俺はお前の側にいるよ。俺は自分からは動けない」
「うん……ひうっ」

 ズンッと奥に突かれた!かはっ……

「出ちゃったね。奥好きだもんね」
「あ…ああ……」

 快感に震える……気持ちよすぎだ。

「俺のちんこ堪んねぇって顔がいいね」

 あまりの気持ちよさに涙が……そこにキスをしてくれる。

「ちーはよすぎる時は分かるよね」
「だって……ハァハァ」

 キスで口を塞がれるのも好き。僕何年経っても、この激しく求めるようなキスが好きなんだ。

「ちーのエロい顔大好き」
「そう……でもあんまり見ないで」
「やーだ」

 隠そうとする僕のを手を握り込んで、させまいとする。

「隠すなよ。楽しみが減るだろ」
「いらないから!その楽しみ!」

 僕は横を向いた。ひろちゃんはこんな時いじわるで、でもかっこよくて……む~ん。

 いつまでもこうやってなかよく暮らすんだ。千広って優しく呼んでもらって、僕も広翔って呼んでいつまでも。これからもいろんなことはあると思うけど、それでも。

「ちー?」
「うん。かっこいいなあって僕の広翔はさ」

 頬にそっと手を添えてチュッ

「だろ?」
「自画自賛かよ」
「おう。だってかっこいいもん」
「ふふっそんな広翔が好きだよ」
「俺もちーが好きだよ」

 見上げる広翔は優しく微笑んで僕にチュッって。

「ちー。ちんこ満足したらお腹すいた」
「はいはい。今日はアジの一夜干し!なんか食べたくてね」
「いいね。魚は久しぶり?」
「うん」

 僕からぐちゅりと萎えたのを抜いて起き上がる。体流そうぜと言いながら、名残りおしそうに起き上がった僕を抱いてくれる。

「うん、ひろちゃん大好き」
「ふふっうん」

 そんないつもの朝。
 僕の幸せは続くんだ。僕と広翔が努力をやめない限り続くんだ。僕は広翔を嫌いになることはないと感じている。こんな僕を好きだと言ってくれる奇特な人は彼だけだろう。

 大切にしなくちゃなって気持ちも新たにして、ベッドを降りるとお尻からなにやら。

「ひろ!なんでゴム使わないの!」
「ええ……だってぇちーを堪能したくて」
「はあ……?最後やたら気持ちいいとは思ったけど、お互いのために言ってんの!」
「ごめん。でもお前もよかったろ?」
「バカ!」

 怒んなよって肩を抱かれながらバスルームに向かう。こんな日常の連続でいいんだよね。
 
 ふふっ




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