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二章 討伐とその後
6 森の修復計画を立てる
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翌朝。
森の素敵な空気の中清々しく目覚めて、フィトンチットの香り……とはならなかった。空気は焦げ臭く、時々獣の焼ける匂いが流れて来てげんなり。
「当然だな」
「うん」
僕らは身の回りの世話兼任の文官に起こされてテントの外に出ると、陣営はすでに撤収作業に入っていた。居残りの食事の世話や護衛をする少人数の騎士以外は、僕らがテーブルで朝食を取っているうちに、次々に出発していなくなる。それと昨日助けたバルシュミーデの戦士は、夜のうちに国の陣営に戻ったそう。
そしてユリアン様はとっくに帰り支度がすんでいて、マントを羽織っている。
「後片付けは大変だろうが頼むな。クルト」
「はい」
僕らの食事のテーブルの椅子に座り、帰りの準備待ちでお茶を飲む。
「アンジェは終わるまでクルトについててやれ」
ギロッとパンを齧りながら、アンジェはユリアン様を睨んだ。
「当然だ。こんな森の中クルトひとり置いていくなどあり得ない。バカだろお前」
言い方……といつもの明るい調子で両手を横に広げる。
「昨日のを怒ってるんだろうが、悪かったと思ってるよ」
だが、やったものは取り返せないし、反省して前を向くしかないとお茶をすする。
「今度から自分の発言には細心の注意をします。不確定な憶測で物を言いません」
サラリとユリアン様が言うと、アンジェはブツッと音がしたんじゃ?ってくらいキレた。
「当たり前だ!俺の妻が早死にしたらお前のせいだからな!」
アンジェが珍しく怒鳴った。怒りマックスと言わんばかりに睨みつけて。
「ゔっ……ごめん」
魔物がおる……アンジェ怒るとこんなに怖いんだね。なんて僕が思ってると、ユリアン様はもう一度ごめんねとお茶のカップを置いて立ち上がり、ラムジーたちの方に走り去った。じゃあまた城でな!と迎えに来たタカの騎獣に乗り込むと、数騎で飛び立って行った。
僕はもぐもぐ食べながら、馬車や迎えの騎獣に乗り込んだり、荷物を片付けている人たちを眺めながらポツリ。
「なんか寂しいね」
「落ち着けば必要ないからな」
「うん」
食事が終わり、僕らの護衛だけになった。広々とした焼け野原に十人程度。ザアッと吹き抜ける風以外音のない森に、なんとも言えない寂しさを感じた。
ぼんやりしてても帰れないから、みんなでテーブルの地図を見ながら復元計画を練る。
「この範囲が全部焼けました。バルナバスの巣の周りから西側、バルシュミーデの国境近くまで、この範囲ですね」
ラムジーたちが朝早くに飛び回って確認してくれて、地図に赤いペンで範囲指定してくれていた。小高い山がこの森を囲んでいて、それに沿うように焼失。山の上は岩場で燃えるものがなく、そこまで全部燃えていた。地図で見ると中々の範囲だった。
「盛大に燃えたね」
「ええ、延焼を防ぐ班がいたのですが、まあ二頭で燃やしてましたし、火竜の炎は燃焼力がありますから消しにくく……ですね」
「そうなんだ……」
アンジェもあれらの吐く炎は、直に触れる部分以外も一瞬で燃え尽くし、その炎は広がって行く。魔法の炎は普通の炎とは違うんだと、説明してくれた。
「それと魔石がかなり上から見ても光っているのを確認しました」
「なら拾わないとだな」
「ええ、クルト様の修復なんかの報酬として集めるのがいいかと」
ラムジーは、焼け野原には獣も魔獣もいなくて、木々の燃え残りがくすぶってるばかり。この世の世界とは思えない有り様で、文献の地獄のようでしたと話してくれた。
「この世界でも地獄の概念はあるのか」
僕がボソッと呟くとアンジェが、シュタルクの王のように他人をたくさん殺したり、今回の森を焼き尽くす原因になった者、理不尽な暴力で人を貶めた者が行くところだと言う。
これはハーデス様の神殿で、神官が死者の国の話の一つとして、講話にあるそうだ。
あー……記憶にうっすらかな。クルトは神や自分の身近なこと以外に興味がなく、知識を増やす方には目が行かなかった。文献や物語さえ読む習慣がなく、頭になにも入ってない。
あの子なにが楽しくて生きてたんだろう?その部分の引き継ぎは、物語の「悲しかった、楽しかった」みたいに書かれてるくらいしか分からない。物語って楽しいのにね。
「クルト様の力によりますが……かなり時間がかかると覚悟した方がよろしいですね」
「はい。頑張ります」
ラムジーは土地の復活の様子は見たことはなく、当然アンジェも。どのくらいの範囲が一回で出来るか、魔力がどこまで持つのかすら分からない。当然僕は未知だ。
「ゆっくりやりましょう」
「はい」
まずはバルナバスの巣を復活させて、その後は遠くからここに向かう方向で進めようとなった。外側が元に戻れば、獣も戻ってくるかもとねってことでね。
改めて地図を僕は眺めた。クラネルト王国とさほど大きさは変わらない森の範囲。それの五分の一に赤く大きいマルで囲んである範囲。これを歩いて復活させて行くのか。うふふ……気が遠くなる。
あくまで僕の感覚だけど、クラネルト王国全体で海から半径五十キロくらいの広さがある気がしてる。海側とこの森の近くでは温度差もあるしね。
それにアンジェの領地は比較的丸く、屋敷から半径十キロある気がしていて、その掛ける三倍。おほほ……考えると脳が死ぬ。僕は目が虚ろになるのを感じた。
「クルト、現実を直視すると気分はよくない。やればその分減って行くんだからさ」
「はい……」
たった三日でここまで焼き尽くす火竜の力にも驚く。実際は他の魔獣討伐や、シュタルクとの戦闘で燃えたものも多かったんだろうけどさ。出来れば消火しながら戦闘を……と今更ながら思う。三日目にバルナバスたちだけになってから消火活動を始めたらしいから、これでも延焼を防いだんだけども。
僕は気合いを入れて頬をパンッと叩いた。気が遠くなってやる気が失せるばかりだからね。グダグダしてても仕方ないしってことで、バルナバスの巣に、アンジェとラムジーたちと向かうことにした。
だけど……これ本気でいつ終わるんだろうか。
森の素敵な空気の中清々しく目覚めて、フィトンチットの香り……とはならなかった。空気は焦げ臭く、時々獣の焼ける匂いが流れて来てげんなり。
「当然だな」
「うん」
僕らは身の回りの世話兼任の文官に起こされてテントの外に出ると、陣営はすでに撤収作業に入っていた。居残りの食事の世話や護衛をする少人数の騎士以外は、僕らがテーブルで朝食を取っているうちに、次々に出発していなくなる。それと昨日助けたバルシュミーデの戦士は、夜のうちに国の陣営に戻ったそう。
そしてユリアン様はとっくに帰り支度がすんでいて、マントを羽織っている。
「後片付けは大変だろうが頼むな。クルト」
「はい」
僕らの食事のテーブルの椅子に座り、帰りの準備待ちでお茶を飲む。
「アンジェは終わるまでクルトについててやれ」
ギロッとパンを齧りながら、アンジェはユリアン様を睨んだ。
「当然だ。こんな森の中クルトひとり置いていくなどあり得ない。バカだろお前」
言い方……といつもの明るい調子で両手を横に広げる。
「昨日のを怒ってるんだろうが、悪かったと思ってるよ」
だが、やったものは取り返せないし、反省して前を向くしかないとお茶をすする。
「今度から自分の発言には細心の注意をします。不確定な憶測で物を言いません」
サラリとユリアン様が言うと、アンジェはブツッと音がしたんじゃ?ってくらいキレた。
「当たり前だ!俺の妻が早死にしたらお前のせいだからな!」
アンジェが珍しく怒鳴った。怒りマックスと言わんばかりに睨みつけて。
「ゔっ……ごめん」
魔物がおる……アンジェ怒るとこんなに怖いんだね。なんて僕が思ってると、ユリアン様はもう一度ごめんねとお茶のカップを置いて立ち上がり、ラムジーたちの方に走り去った。じゃあまた城でな!と迎えに来たタカの騎獣に乗り込むと、数騎で飛び立って行った。
僕はもぐもぐ食べながら、馬車や迎えの騎獣に乗り込んだり、荷物を片付けている人たちを眺めながらポツリ。
「なんか寂しいね」
「落ち着けば必要ないからな」
「うん」
食事が終わり、僕らの護衛だけになった。広々とした焼け野原に十人程度。ザアッと吹き抜ける風以外音のない森に、なんとも言えない寂しさを感じた。
ぼんやりしてても帰れないから、みんなでテーブルの地図を見ながら復元計画を練る。
「この範囲が全部焼けました。バルナバスの巣の周りから西側、バルシュミーデの国境近くまで、この範囲ですね」
ラムジーたちが朝早くに飛び回って確認してくれて、地図に赤いペンで範囲指定してくれていた。小高い山がこの森を囲んでいて、それに沿うように焼失。山の上は岩場で燃えるものがなく、そこまで全部燃えていた。地図で見ると中々の範囲だった。
「盛大に燃えたね」
「ええ、延焼を防ぐ班がいたのですが、まあ二頭で燃やしてましたし、火竜の炎は燃焼力がありますから消しにくく……ですね」
「そうなんだ……」
アンジェもあれらの吐く炎は、直に触れる部分以外も一瞬で燃え尽くし、その炎は広がって行く。魔法の炎は普通の炎とは違うんだと、説明してくれた。
「それと魔石がかなり上から見ても光っているのを確認しました」
「なら拾わないとだな」
「ええ、クルト様の修復なんかの報酬として集めるのがいいかと」
ラムジーは、焼け野原には獣も魔獣もいなくて、木々の燃え残りがくすぶってるばかり。この世の世界とは思えない有り様で、文献の地獄のようでしたと話してくれた。
「この世界でも地獄の概念はあるのか」
僕がボソッと呟くとアンジェが、シュタルクの王のように他人をたくさん殺したり、今回の森を焼き尽くす原因になった者、理不尽な暴力で人を貶めた者が行くところだと言う。
これはハーデス様の神殿で、神官が死者の国の話の一つとして、講話にあるそうだ。
あー……記憶にうっすらかな。クルトは神や自分の身近なこと以外に興味がなく、知識を増やす方には目が行かなかった。文献や物語さえ読む習慣がなく、頭になにも入ってない。
あの子なにが楽しくて生きてたんだろう?その部分の引き継ぎは、物語の「悲しかった、楽しかった」みたいに書かれてるくらいしか分からない。物語って楽しいのにね。
「クルト様の力によりますが……かなり時間がかかると覚悟した方がよろしいですね」
「はい。頑張ります」
ラムジーは土地の復活の様子は見たことはなく、当然アンジェも。どのくらいの範囲が一回で出来るか、魔力がどこまで持つのかすら分からない。当然僕は未知だ。
「ゆっくりやりましょう」
「はい」
まずはバルナバスの巣を復活させて、その後は遠くからここに向かう方向で進めようとなった。外側が元に戻れば、獣も戻ってくるかもとねってことでね。
改めて地図を僕は眺めた。クラネルト王国とさほど大きさは変わらない森の範囲。それの五分の一に赤く大きいマルで囲んである範囲。これを歩いて復活させて行くのか。うふふ……気が遠くなる。
あくまで僕の感覚だけど、クラネルト王国全体で海から半径五十キロくらいの広さがある気がしてる。海側とこの森の近くでは温度差もあるしね。
それにアンジェの領地は比較的丸く、屋敷から半径十キロある気がしていて、その掛ける三倍。おほほ……考えると脳が死ぬ。僕は目が虚ろになるのを感じた。
「クルト、現実を直視すると気分はよくない。やればその分減って行くんだからさ」
「はい……」
たった三日でここまで焼き尽くす火竜の力にも驚く。実際は他の魔獣討伐や、シュタルクとの戦闘で燃えたものも多かったんだろうけどさ。出来れば消火しながら戦闘を……と今更ながら思う。三日目にバルナバスたちだけになってから消火活動を始めたらしいから、これでも延焼を防いだんだけども。
僕は気合いを入れて頬をパンッと叩いた。気が遠くなってやる気が失せるばかりだからね。グダグダしてても仕方ないしってことで、バルナバスの巣に、アンジェとラムジーたちと向かうことにした。
だけど……これ本気でいつ終わるんだろうか。
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