月の破片を受け取って 〜夢の続きはあなたと共に〜

琴音

文字の大きさ
57 / 92
五章 平穏から一転

2 ユリアン様の悪行と抜けない熱

しおりを挟む
 食事しながらアンジェは、自分がお休みしてた期間の仕事の話をしてくれた。城には魔石がすでに完成されて、どっさり用意されていたそうだ。ミンミーたち、弱い魔獣のやっすい魔石の物でね。

「ほほぅすげえな。付与をたくさん重ねると魔石が割れるってアンジェ言ってたよね」
「ああ、あの魔石じゃ小さい魔弾一個くらいの効果しか付与出来ないんだが、ヘルテルの大昔の王ド賢者が開発してたんだそうだ。貧乏ならではの努力だな」

 そう言うと、たぶんうちでも出来るはずなんだがなあと黙り、苦い顔してお肉を口に運ぶ。ヘルテル側は、その魔石の作り方をこちらに開示しないと突っぱねた。んで、加工済みを納品してくれたそうだ。これに付与しろって。

「あれま」
「これはこの追撃魔法ばかりじゃなく、他のにも転用出来るんだ。必要なら買ってくれってさ、分かるがな」

 まあね。あちらではそれを使って色々やってるそうで、だからお金なくても騎士が強い秘訣でもあるそうだ。

「なら無理だね」
「うん。サミュエル様が知らなかったのは、当たり前過ぎたから」
「ほほう」

 軍事国家とは、農業国とは違う開発をするんだなあ。うちはどれだけ収穫が上げられるか、優良品が作れるかが勝負。そのための開発が多い。魔術の大半はそれに費やし、ちょびっと技術。

「それと元シュタルクは、国内の野盗狩りも始めたそうで、元の国から人も集めている。だが、飢えているのは変わらずだ。冬までにまた来るかな」
「うーん仕方なしか」

 暗黒の森からお肉は手に入れられるか。だけど野菜とか小麦はなあ。森に食べられる野菜なんかないもんね。

「ああ、人は肉食じゃないから肉だけは辛いな」

 白の賢者がいないと、広範囲の荒れた土地の活性は難しいし(ガイア神は一度アルテミス神が手を入れた所しか直せず、王が代わると効果なしになる)、当然野菜の促進も出来ない。聞く限り、初めからやり直さないと畑としてはダメかなってくらい荒れたそうだ。ならさ、普通に建国して野菜売ってと言えばいいのに。

「言えないのがアレス神の加護なんだ。人に頭は下げられない。下げると憤死するくらいの気持ちになるそうだ」

 あはは。あの神は頭は下げねぇだろうな。それこそ憤死だろう。

「……僕、あの神様嫌いだな。困った時他国にお願いするってさ。それも王が頭を下げるって、国や民を思う心がないと出来ないと思うんだ。守りたいって強い心がないとね」
「俺もそう思う。強い神だがそういった部分はないんだろう」

 だからあの神を好きなやつはどこかおかしいんだよって。だろうけどね。食事がすんで部屋に戻り、お風呂入ってからユリアン様の悪行を聞く。シードル美味いなあ。アンジェに肩を抱かれて、こうしてグラスを傾けてるのは、とても美味しく感じる。

「俺もだ」
「んふふっ」

 ティモがこちらもどうぞとぶどうのお皿を出してくれた。

「クルト様、こちら、お兄様から差し入れのぶどうです。新しい品種で、果物としてのものだそうですよ。味見してって」
「へえ、なら食べる」

 一粒取って口に入れる。巨峰のような濃厚な甘さと果汁たっぷりで感動モノのお味だけど、でっけえ種がゴリッと歯に当たった。

「あまっ!粒も大きいし……でも種が邪魔なくらいだね」
「ええ、これから改良って言ってました。食べるのに面倒臭いからって」
「そっか。アンジェもどうぞ」

 僕はアンジェの口にほらって入れた。

「うん。甘いが、ンッ種噛んだ」
「大きすぎるよね」
「そうだな。だがクルト、ユリアンにこんなことするなよ。食われるから」
「しないよ」

 リーヌス様と結婚する前はよくこんなことを相手にさせて、君もって口移しとかしてニヤニヤしてたんだそうだ。アレは見た目はいいから、相手はすぐ落ちる。クソだと言う。

「あはは!目に浮かぶ。コロコロよく笑い、人なつっこそうだもんね」

 アンジェはふんと鼻を鳴らした。

「見た目で騙されるな。アレは演出だ。明るく話しやすい雰囲気を醸し出し、知らないうちに相手はベッドにいることになる。策士なんだよ」

 ユリアン様は遊び人な雰囲気があるんだよね。でも見つめられたら「そうかな?」と思わせるなにかはあるんだ。あれはその気がない人には危険人物だ。

「リーヌス様は強いから夫婦がやれてるのかな」
「ああ。彼は強く聡明で優しいからなあ」

 アンジェはぶどうの皮を剥いて口に咥え、ほらってうけ取れって。やんっ珍しいことしてくれる!嬉しいなあ、あーん。

「うふふっ美味しい」
「ほら見ろ。お前はすぐそんな顔する」
「そりゃあアンジェだからね」

 アンジェは困ったやつだと、またふんと鼻を鳴らした。

「ユリアンは知らないうちにこうするのが当然で、なにもおかしくないんだって雰囲気を作る。気をつけろ」
「はーい」

 僕も皮を剥いて口に咥えてどうぞって。アンジェは口で受けてくれて、そのまま唇が重なる……ンフッ…

「ほら。クルトは簡単だ」
「あなただからだよ。でも番がいれば落ちないんでしょ?」
「甘いな。あれは絆を超える」

 マジか!あの人は天性の遊び人なのかも。リーヌス様大変だね。彼は妻の知らないうちになにかしてそう。

「仕事も出来るが…ンッ…悪い方にも頭が回る」
「アンジェさっきしたのに……んんっ…」

 ンふぅ…ぶどうの味がするキスだ。甘い……んふふって楽しんでいると、ため息が聞こえた。目に毒だから寝室へと、ローベルトが嫌そうな顔で寝室のドアを開けた。好きなだけこちらでしろって。離れてた時間もあるから止めませんからとムスッとしている。そうだなってアンジェは僕を抱いてベッドへ。僕は両手を彼に回した。

「アンジェが欲しい。何度しても欲しくて堪らない」
「ふふっいいな。お前から求められるとゾクゾクする」

 僕は自分で脱いでアンジェをベッドに寝かせ、彼のローブの紐を解いて脱がし跨る。そして下着から硬くなった股間を出して、ねろんと舌で舐めながら咥えた。アンジェは僕の頭を優しく撫でて、

「いい……求められるのはいいな」
「んくっ…欲しくて……」

 たぶん開放された本能が、彼の魔力が足りないと言ってるように感じるんだ。もっと貰えって。彼の手は僕の体を丁寧に触り乳首を摘んで……

「ぐっ…」

 僕の背中を彼の手が……エロく触るのが…いい……ッ

「アンジェ…中が…その」
「乗れよ」

 僕は彼に跨り彼のを掴んで穴に先を押し当てた。そしてゆっくり腰を落とす。ぐぷぷって熱いアンジェのが……熱いんだ。硬くて熱くてあはっ…堪らん。

「ははっいいな、本当にいい。今までよりずっと気持ちいい。感じ方が違うよ」
「ハァハァ…よかった。アンジェの幸せは僕の幸せだ」
「ああ、今はその言葉の意味がよく分かる」

 僕はアンジェの頭を抱えて唇を合わせる。求めに答えるようにアンジェもゆっくり腰を振る。

「心から愛している。これからも共にいよう」
「あんっンンッお側に置いて…ね…」

 アンジェが僕の求めに応じてくれるのが嬉しくて、結局夜遅くまで求めていた。
 翌朝、ヤリすぎて当然だるいんけど、体中に彼の魔力が溜まった気がしたんだ。幸せに包まれているような気分がして、あの変な欲は落ち着いた。あれはほぼ初夜の情欲で、どこか恥ずかしかったけど、アンジェと触れ合うのは大好きだから嬉しかった。
 
 翌朝アンジェは疲れも見せず颯爽と出仕した。あの体力はどこからだろうと思うけど、図々しい僕は「僕の愛の力の賜物」と、自惚れた。そして僕は、ご招待されていた従兄弟のリーヌス様のお茶会に出かけるため、昼過ぎにティモと馬車に乗った。ここから近いんだ。
 僕はユリアン様のお家には行ったことはなくてというか、他家に遊びにとか、お呼ばれとかがなかった。(アンジェが全て握り潰していたからね!)
 王妃エルマー様のお茶会や城での晩餐会、舞踏会は当然あって、他家の奥様方ともそれなりに仲良くはなってたけど、あくまでそれなり。やはり、個人的なお呼ばれがないと仲良くなりにくいかなあって感じてはいる。

「クルト様。これからこういうお誘いは多くなります。味方になってくれる奥様が多い方が、なにかあった時有利です。頑張って下さいませ」
「はあ……そこまで気合い入れるものなの?」

 クワッと目を見開き甘い!と叱られた。

「この国は一見貴族同士の仲はいいです。ですが、いつなん時それが崩れるやもしれません。先を見据え、対策を取るのも貴族の嗜みです」
「はい……」

「クルト」様もその辺は甘く考えていました。あなたがそれを引き継いでどうする!とネチネチ。ティモはこんな時は怖い。

「分かりました。頑張ります」
「分かればよろしい。感覚的に分からないかもしれませんが、縦の繋がりは白の賢者がありますから分かるでしょう。ですが、奥様たちとの横の繋がりは甘く考えてはいけません」

 なにかあった時、奥様の言葉で旦那様を動かす場合ありなんですよ!ってティモが更に怖い。僕はいちいちビクッとして身をすくめた。

「はい……」
「心して参加して下さいね」

 ユリアン様の領地まで一時間ちょっとの間、城以外のお茶会の心得をクドクド……いえ、丁寧に説明されながら、馬車は順調にガタゴト走っていた。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

【完結】抱っこからはじまる恋

  *  ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。 ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら! 完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?

krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」 突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。 なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!? 全力すれ違いラブコメファンタジーBL! 支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

処理中です...