月の破片を受け取って 〜夢の続きはあなたと共に〜

琴音

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五章 平穏から一転

3 リーヌス様はすごかった

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 ガタゴトと舗装のない道を走っていると、突然石畳に道が変化したのを感じた。たぶん街に近づいたんだ。森や麦畑を走ってるばかりの間、ティモとどんなお屋敷かなあって楽しみに話しながら馬車に揺られていた。そのうち森が切れて林になり、道の脇の木々の間から屋敷が見えて来た。

「初めてユリアン様のお屋敷見たけど……」
「すごいですね……」

 遠くからでも分かる、この国としては異質な屋敷。僕とティモは屋敷の見た目に呆然として、窓に張り付いて凝視。華やかでおしゃれで、たぶんお金を掛けたんじゃなくて、彼のセンスの問題だろう。
 
 この国の領主の屋敷はよくヨーロッパとかにある屋敷に似ている。真っ白ブロックに屋根、二階に民になにか発表するようなポーチとその下の玄関は太い神殿の柱のようなデザインで屋根のように作る。そして三階建てってくらい。豪華な作りではなく、貴族用の宿屋の方が豪華な場合ありだね。大扉も重厚な、盗賊避けみたいな分厚い扉で、装飾はあまり凝っていないことが多い。屋根の色も好みで違うだけが通常で、貴族の屋敷とすぐ分かるんだ。ちなみにお城は全体に大きく、貴族より少し装飾があり、四隅に城らしい塔があるくらい。ここんち……なに?至るところに凝った装飾がある。

「出窓の柵も、牢屋的な落ちなきゃいいだろではなく、蔦の意匠でその隙間に小鳥やリス。大扉は蔦とお花のレリーフで色がありますね。なんて美しい屋敷なんでしょうか。僕このお屋敷好きです」
「うん僕も。アンジェにねだろうかな」

 ティモは、僕に聞こえるか聞こえないくらいの声で「無理だろ旦那様は」と。まあ、アンジェは屋敷にこだわりないから、傷んでなければね。庭のお花の入れ替えも「善きに計らえ」で済ませたもんね。
 僕らの馬車は正門の道をガタゴト進む。庭の植栽もかわいく動物に刈られ、お花もよく手入れされている。まあ、うちの庭師も上手いから素敵だけど……センスの違いは感じる。車止めに馬車が止まると、こちらの執事が馬車のドアを開けてくれた。

「お手をどうぞ。クルト様」
「ありがとう」

 おいおい……執事は顔採用か?四十手前くらいの渋い、乙女ゲームの執事だよーんってイケメンで、僕は見惚れてしまった。ティモもぼー……

「クルト様……このお家変な意味で怖い」
「うん……美が溢れてるね」

 こちらへとエントランス前の階段を上がり、大扉をくぐり抜けた。うわーっなんて素敵なのと感動してたけど、僕は顔には出さず、平然を装い歩いていた。若い夫婦の邸宅って感じで、壁紙も明るい色調、家具も猫足の優美なものが鎮座していた。エントランスホール全体の調和は取れていて、僕の浅い知識の貴族の屋敷そのものだ。
 お花は派手すぎず調和を意識している感じで飾られ、中央の吹き抜けの階段の絨毯が赤じゃない!ペルシャ絨毯みたいに文様があって落ち着いた暖色系のもの。初めて見たよ。階段にこの絨毯使ってるの。

「お城とはこうだよねって物語の中みたいです」
「うん……」

 ティモの感想に同感だ。僕の知ってる絵本みたいな、あのシンデレラの絵本の豪華版みたい。どこにこんな金があるんだ?やっぱ金だよね?うちとあんまり収入は変わらないくらいのはずだよね同じ公爵だし?いや、第二王子筋だから農業以外の収入源があるのか?ほえぇ~と感心して眺めていると、

「こちらのお部屋でございます」
「ああ、ありがとう」

 扉が開くと、顔見知りの奥様が数人すでにいらしていた。リーヌス様は最後だからいないのは当たり前。ティモとはここでお別れで、帰りまで控室に待機。僕は執事に着いて中に入って行く。

「ごきげんよう、クルト様」
「ごきげんよう、皆様」

 執事は応接セットの前で一礼し下がった。すると、こちらへとハンネス様の奥様に促され、となりに座る。

「先日はありがとう。僕は気にしてなかったんだけどね」

 お手紙とお花ありがとうって、嬉しかったよと言ってもらえた。彼は、アンジェたち二人は仲よしだから、特に気にもしてなかったそうだ。それほどハンネス様とシリウス様はアンジェと仲がいいんだと笑う。まあ、それとなくは知ってたけどね。それにフロレンツ様は人見知りなだけで、仲良くなれば普通だった。

「ありがとうございます。僕は細かいことを聞いていなくて」
「確かに言わなさそうだね。アンゼルム様は」

 それにこういった城以外のお茶会の出席は珍しいし、よくアンゼルム様が許したねって。

「ええ。ユリアン様は夫の従兄弟なんですが、ここに来たことはなくて。来てもらうばかりでしたが、今回は行って来いって気持ちよく出してくれました」
「へえなんで急に……ああ。いいえなんでもありません」

 そう言って彼はにっこり微笑んだ。まあ、察したんだろうね。アンジェのことは貴族中に広がってて、分かっててみんな突っ込んでは来ない。僕はアンジェがいない間、ハンネス様や弟のクヌート様のところで訓練してて、それでも誰もなにも言わなかったんだ。クヌート様を待っている間、その髪飾りはアンゼルム様の瞳の色ですね。プレゼントですか?いいですねって、当たり障りのない会話をみんなとしていた。

 今日のメンバーはとさり気なく見渡した。来てる奥様やお子様たちは、リーヌス様の仲のいい方ばかり、当然か。エルマー様のお茶会じゃないんだからね。嫌いな人まで自宅には呼ばないよね。

「クルト様、体調はいかが?」
「え?はい万全ですが」
「そう?お疲れではないの?」
「いえ……なんともありませんよ?」

 みんな主語のない会話だね。なにか聞きたいけど言えなくて遠回りな言葉。なんだろな?

「あのね。なんかアンゼルム様がいるような?なんかそんな魔力をあなたから感じるんだよ。ねえルイーズ様」

 ええそうねって、シリウス様の奥様ルイーズ様は焦りながら笑う。

「え……」

 みんなアンジェが退院したとは聞いたけど、なんか治ってないんじゃ?と不安な感じで眉を下げた。もしかして魔力の膜が増えたのかな?僕は見えないし感じないからなあ。小首を傾げふふっと僕は微笑んだ。

「うーん何でしょうね?僕は分からないんですけど」
「そうね……自分では分かりませんものね」
「ふふっそうですね」

 みんな僕の周りに集まり、失礼と体をペタペタ。分からんなあって。

「でも、クルト様は今までよりお幸せそうですね」
「ありがとう存じます。幸せです」

 僕はそれは本当だから、嬉しそうににっこり微笑んだ。この間にメイドさんたちがお菓子やお茶を用意。どうぞと給仕されながら、リーヌス様を待っていた。そこへ、うははと楽しそうにリーヌス様が現れた。男装の麗人ばりの美しさに、いつもより……なんだ、がさつな感じに見えた。でも、そのガサツさすら似合ってて、なんとも主らしい振る舞いだと見惚れた。

「クルト様来てくれたんだね!さすがアンジェ、変わったな」
「お招きありがとう存じます」
「いいや」

 するとあん?と変な声を出して、僕を上から下に見ると、小首を傾げた。けど、なにも言わず主人の席に座る。こういった会は毎回なにか話題がある訳じゃなくて、顔を合わせるのに意味がある。それにこの会に呼ばれ出席するということはだ、リーヌス様の派閥に属したことにもなる。僕がお茶会を開くならこの派閥を中心に、どこかの奥様たちを加えるのが貴族流。
 だーが!僕はやらないからとアンジェには言ってある。公爵夫人がお茶会を開かないとかありえないんだけど、やりたくない。僕がホストなんて出来ないもん。数人仲のいい方と、まったりおしゃべりするくらいでいいと考えているんだ。ママ友のお茶会みたいなものでぜひ、誤魔化したい。アンジェは少し驚いてたけど、したくないならいいいよって。ベルントも一度もしなかったしなって。それに、俺が参加するわけじゃないしーって、他人事だった。

 お茶もお菓子も美味しいですねぇなんて始まって、時間と共にみんな仲のいい方とおしゃべりに夢中になって行った。僕は相づち打ちながら、他家のお茶とお菓子を楽しむのが、僕の今回の目的。
 やっふぅ!ここんちお菓子は美味しい。お!珍しいキッシュもある。うまっ…おかしな動きにならない程度にバクバク。美味しい……うちとは違う美味しさで、僕うっとり。
 この世界のお茶会は甘いものばかりなんだ。焼き菓子にババロア的なもの、プリンにケーキ。砂糖がこの国では採れないから、輸入品の砂糖を贅沢に使うのが富の象徴と貴族は披露する。……うん。現代人の僕にはちょっと辛い。

 みんなが楽しそうだから、僕はそっと立ち上がり窓辺に移動した。開いている出窓からは爽やかな風が入ってくる。もうすぐ秋か。麦の実ったワラっぽい匂いが、ほんのり風に混ざってる。僕は秋が好き。果物も野菜も……肉もなんでも美味しい季節だからね。この部分は以前のクルトと同じだ。

「てかさ、ここんちの庭すごくない?花もうちと違って色とりどりだし、植栽もよく手入れされてる。ミンミーやリスとかにカットしてさ。よくあんなふうに刈れるもんだ」
「だろ?ユリアンの僕への愛だよ。あれマジで職人の腕だから、お金かかるんだよ」
「ヒッ!」

 ニヤニヤとしながら隣にリーヌス様が立っていた。気配消して来るんじゃない!と、心で悪態をついた。

「こーんなにアンジェの愛に更に包まれて、退院後なにがあったの?」
「あはは……」

 おりゃあ!こっち来いと手を引っ張られ、広い部屋のみんなのいる反対側のいくつかある、応接セットの一つに座れって。キッと美しい瞳に睨まれた。仕方なくちょこんと座った。

「まずはアンジェの退院おめでとう」
「ありがとう存じます」

 リーヌス様のニヤニヤはなくならない。窓際に座らせられた僕の視線の先、リーヌス様の後ろに見える方たちも、ワクワクと聞き耳を立てているみたいで。おお……ぅ

「アンジェが復帰した、たった一日で城は大騒ぎだったんだよ。アンジェは以前とは別人みたいに凛々しいのに優しげで、話しかけやすい雰囲気に変わった。それに気がついた未婚の人たちが、アンジェを見つめて、ボーッと見惚れてたんだってさ」
「あはは……そうですか」

 あのなクルト様。この病は時々起こるもの。貴族でも珍しいことではないから、僕が卑屈になる必要はないからねと言い含める。でもみんなは、あのアンジェにはらしくはないと言っていて、あの鉄面皮には似つかわしくない病で、影ではヒソヒソされていたそうだ。実は違う病では?ってね。ても、結果はそうだったんだなって、今はあの変わりようで、みんな納得してるよって。

「そうなんですか」
「うん。クルトへの愛がダダ漏れで、以前は手負いの獣だったからね。いつかなるかなあって近くの身内は特に考えてた。思ったより早かったけどね」

 彼が苦労ばかりしてたのは承知していた。あの番のお披露目の時、僕が隣でコロコロ笑ってて、アンジェは最近は見せなかった笑顔で、幸せそうに笑っていた。これはアンジェ、僕にのめり込むだろうなってリーヌス様は感じたそうだ。あの時になんとなくそう感じたと言う。直感だうははって。

「僕もあの時はアンジェしか見えなくて」
「それはそう。番になり立てからから少しの期間は、相手ばかりになるのは仕方ない。だけどアンジェはそこから抜け出せず、ベルントのことだろうな。それがあって倒れた。違うか?」

 違わないと返事した。アンジェは今と前の整合性が取れなくなったんだと思う。番の本能を、ベルント様も自分も上手く感じられなかったんだ。アンジェが落ち着いた頃、寝物語みたいに夜ベッドでゆっくり聞いたんだ。

「アンジェは自分も番も信じられなくなっていたそうです。自分が番に不誠実だから、僕もそうだって思ってたそうです」

 あー……とリーヌス様。アンジェは君にベルントとの生活を話したか?と問われた。

「事細かには聞いてません。口が達者で常に言い返してきて、自分の名声を自慢して、アンジェを見下してたくらいですかね。簡単に言えば」
「うん。簡潔に言えばそうだね。その通りだけど、あいつはとにかく下品だったんだ」

 そうか?まあ、ガサツさは確かに言葉の端々にあったけど、僕も似たようなものだしね。こちらふうに言えば僕は「正真正銘の純粋な庶民!」だから。あんなもんだろ?彼は職人のお家の人だし。

「そうですか?僕はそんな感じは受けませんでした。多少言葉遣いが見た目より荒いくらいで、気になりませんでした」

 猫被ってたから当たり前だよと。あいつは死んでからも迷惑だとため息。

「ベルントの家の者は、少し貴族としては荒っぽいんだ。家業が武具の制作のせいもあるけどね」
「ええ。職人さんはそうなんでしょう。貴族でも色々ですよね」
「うん。それは確かだ。こんな農業国だしね」

 リーヌス様は、あいつは見目麗しいくせに口を開けば貴族とは思えない、あけっぴろげになんでも口にする一族のひとり。特にひどいと眉間にシワ。

「裏表がないと言えばそうなんだが、彼が天に召される間際にさ。僕ら夫婦がお見舞いに行ったろ」
「ええ。僕は外に出されたましたのでよく分かりませんが」

 亡くなる二週間前くらいかな。ユリアン様とふたりで来てくれたんだ。ベルント様は弱ってはいたけど、嬉しそうだったけどな。

「僕らがいると、あいつがクルト様に嫌なことを言うかと思って部屋を出したんだ。まあ、案の定だったけどね」

 僕がお嫁に来て猫は被ったけど、それは僕の前だけ。屋敷の者にも、体が上手く動かせない辛さで当たったりもしてたそうだ。エルムントなんも言ってなかったけどな。

「言うわけないよ。腐っても侯爵家の嫁だからね」
「リーヌス様も……おほほ…」
「僕はあれほどではないけど、似たようなものなんだよ」

 リーヌス様の実家の領地は馬の生産だ。これが家業で国内の馬車の馬や荷運びの馬やロバ、娯楽の競馬用の競走馬を生産をしている、とても裕福な侯爵家のお子さんだ。

「思ったより馬の生産は大変なんだよ。競技の馬は高価だから手が抜けないからね。生きてればいい馬車の馬やロバとは違うんだ。調教も大変だし生き物相手だから無理も出来ないし、魔法はご法度。競走にならないからね」
「ええ。それは分かります。僕の世界でも競走馬は高価でしたから」
「でしょ?だから僕の家も多少荒っぽいんだよね」

 リーヌス様はそこまで言うと一拍置いて、口を開いた。

「あの日ね。アンジェにあの嫁は取り柄がなさそうだが、数年すればエロくなって…その…ベッドを長く楽しめるだろって。若くかわいいのを選んだのはエッチのためだろって、アンジェに聞いたって。あの日僕たちにベルントは言ったんだ」
「え……」

 僕は言葉が出なかったけど、当然アンジェは激怒したそうだ。だろうね。

「白の賢者でもないラングールの嫁に、なんの価値もない。なにがいいやらと鼻で笑ってたよ」
「そう…ですか」

 まあよく考えればその通りだよ。僕はかわいいだけが取り柄のぼんくらだし、「クルト」も似たようなもんだ。白の賢者の加護がなかったら、公爵家に嫁げる価値は僕には見つからない。

「その通り過ぎてどうしましょうか……」

 クルト様までやめてと叱られた。白の賢者の加護がない時に、アンジェは君を見初めたんだ。堂々としてなさいって。

「君の価値はアンジェが見つけた。優しく思いやりがあって、アンジェの今欲しい言葉をくれるって、アンジェはそれは嬉しそうに僕らに話してくれるんだから」
「そっか……そうですね。よくアンジェは僕に言いますね」

 例え白の賢者の加護がなくても、君はきっとアンジェのよい妻になったはずだ。こんな話をしたのは、アンジェがこんな仕打ちに耐えていたと知って欲しかったから。彼は絶対君に言わないだろうからと。

「ベルントは死ぬ間際でも、アンジェに感謝もなにも伝えなかった。泣いて番解消をさせたのも、自分を憐れんで泣いてただけだ。嫁を探せってのも、俺よりいい人なんていないはずだと小馬鹿にするためだと僕は考えている」
「そこまで考えてたかは……アンジェのためもあったでしょうし」

 いいや、勝ち負けでしかものを考えなかったベルントなら、充分あり得ると僕と目を合わせる。

「そこまで……ですか?」
「そこまでだ。君に話してたことは嘘と思っていい」
「はあ……」

 リーヌス様はベルント様嫌いだねこりゃ。お見舞いも身内だから儀礼的にかな。
 後ろの奥様たちは聞こえる部分を拾っては、やはりそうだったのか、あの人は僕にもとかヒソヒソ。

「あの時ユリアンもいたでしょ?あの腹黒のユリアンさえ言葉なく絶句してた」
「あはは……」
「死人にここまで言うのはどうかとも思うけど、アンジェを病ませたのはベルントだと僕は考えている。許せないんだ」

 僕ら身内は、アンジェが穏やかな生活を好むのを知っている。周りを大切にするのも、妻を愛すのも当然。攻撃型の黒の賢者だけど、アンジェは争いを好まない。ユリアンの次にいいノルンなんだと力説する。リーヌス様、旦那様を持ち上げるのを忘れないんだね。とてもいい奥様だなあ。

「ありがとう存じます」
「アンジェの魔力で、まるで光ってるみたいに見えるクルト様を見ると安心する。ぶ厚すぎだけどね」
「はい。僕もとても愛してますから」

 こんなことをいうリーヌス様もかなりぶ厚くてね。ユリアン様はリーヌス様大好き過ぎだね。でも本人は分からんからな。
 よし!この話は終わりだ戻るぞと、みんなの元に戻って楽しくおしゃべりをした。当たり障りのない会話から、なぜか話が変な方にそれ出して、ユリアン様の性癖の話しまで。
 あの人……何でもするんだね。ネコもするそうだ。アンは気持ちよさそうだから僕も!って。

「僕は最近まともに抱かれてなくて、抱いている」
「まあっ……ユリアン様は…その研究熱心なんですね……」

 言葉はここまでが限界でみんな絶句。リーヌス様もぶっちゃけ過ぎだ。まあ、ゲイでなくともお尻好きな男性は、前の世界でもいたからね。不思議ではないが……

「ただ面倒臭いんだよ。香油でお尻もんで柔らかくしないと入らないから。僕小柄だけどあそこは大きいし」
「ゲボッ」

 みんな驚いて口からなんかこぼした。ちんこの話はこんなところでしてはダメだ。ここは独身ノルンのサロンでの会話ではない。

「おほほ……リーヌス様…あの……そこまで話されるのはどうかと…」

 口出ししたら僕はキッと睨まれた。今日のホストは僕だからいいんだ。ユリアンもいないし、みんなの旦那様の話しも聞きたいもーん、きゃああって楽しそう。ええ?

「そうなんですか?でも、ユリアン様のお立場もありますしね。おほほ……」
「みんなはここでの話を言いふらすの?」

 全員で首を横にブンブン。もげそうなくらいブンブンと振った。

「ならみんなで話そう!イエーイ」
「い、いえー……い?」

 なんかわからん会になり、リーヌス様の勢いに乗せられてしゃべってしまう奥様方が多かったし、独身のアンのいわゆるお嬢様と言うのかな、超ドン引きしてたのに、最後はノリノリ。結果大変盛り上がって、日が落ちた頃お開きに。お茶会の時間じゃないくらい話し込んでしまった会だった。
 僕はよそ様のベッドの中の話しは、みんなはしたないとは思ってるけど、興味津々なんだなあって。まあ、話すものでもないからね。でも楽しかったかな。うはは。


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