お祭りの花嫁に強制参加させられたら本当に神様の嫁になってしまった

琴音

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帝の代替わり編

39 狐臭い?

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 翌朝、いつものように翠に愛され、程よい疲れの中目覚める。とても幸せな気分で単純な僕。

「翠……抱っこして」
「あ……うん」

 寝ぼけた声で僕を抱き寄せるとまた寝息を立てる。僕の存在意義の確認で納得した僕は甘えたくて仕方ない。……ダメだろ。

「ゾワゾワする衝動があって愛しさが溢れるような、焦燥感みたいな……とりあえず抱きついておこう」

 などと頭には浮かび、彼の胸に擦りつきまくり。トクトクと胸の音が聞こえる。んふふっと自然に笑ってしまう。

 でもね、このまま大切にされてるだけじゃこの世界の住人とは言えないと考えてもいる。月日が住人になるために必要なのは分かっているんだ。ここが僕の住む世界と心から思えるには、まだ時が足りないから悩む。きっとそうなんだろう。

 もしかすると翠について神社に出向くことも多いからかもね。行くの辞めるか?と僕は考えた。人の世界との行き来が頻繁で「心の境が曖昧」なっていた。そしてどこかで「僕は人間で、獣は別の種類の人々」なんて思ってたのかも。口では獣だよって言ってても、心の奥底はそう思ってなかった。だから都の街を見たり、普段とは違う方との会話で不安になったのかも。

 たとえば人の世界の女性ならば、都心から地方に嫁ぐなんてのもある。きっと今の僕のように戸惑いを感じてるはずなんだ。見るもの聞くもの、その土地の風習に馴染みにくいとかね。方言の難しさとか、その町のマイルール的なものとか。旦那さんの赴任についていく人なんか特にだろう。みんながみんな器用じゃないはずなんだ。

「そう考えればこの年月は僕には短いのかもしれない。うん、きっとそうだ」
「何ブツブツ言ってんの?」
「ごめん。起こした?」
「いやいいけど」

 時々声にに出てたらしく翠を起こしたようだ。もう朝かとまどろみながら微笑む翠。

「悩むな。お前がたとえ帰りたいとか言い出しても戻しはしない。そこは覚悟しろ」
「うん」

 そこは考えていない。翠に愛されてこの胸に収まるのはとても好き。安心できる僕の場所なんだ。だからこそ悩んだんだ。

 夫婦は対等でなければならないとどこか考えていた。でもこの世界では「完全に妻は庇護される対象」だとわんわんたちにも諭された。男尊女卑とは言わないけど、力の強い者が弱い者を守るのは当たり前。能力的な力と、腕力の違いなのだそう。

 僕はこの世界では物理的な力は弱く、ケンカじゃそこらの女性にも負けると思う。天帝からの力も防御に振り切ってて役に立たず、攻撃力はない。守られる対象としては完璧である。言ってて嫌だけど。昨日寝る前に二人で話しててそこに気がついたんだ。

「なんだ?言ってみろ」

 寝たから頭が整理されたかな。僕が考えてることを話したらそうだと翠。

「獣は力がものを言う。女の方が強い種類の場合は当然逆になるがな。経済的な力は考慮しないことが多いかな。お互いに助け合えばいいと考えるから」
「ふーん」

 そもそも獣の世界では男は弱い立場だそうだ。女性に選んでもらはなければ、子供を作ることすらできない。その選択権は女性にある。男性に伴侶を選ぶ権利は全く、欠片もない。子孫を残す力のある者が真の強者である。だから男性は自分をよく見せることは死活問題でもあるそうだ。男性に選ぶ権利がなんてのは人だけだ。強さも金もないのに偉そうな人はより一層意味不明だと翠。

「野生の猿ですら強いオスにメスは好意を示す。群れの危機の時、率先して戦う強さにメスは信頼をよせ惹かれるんだ。じゃなきゃメスは交尾を許さないもんだよ」
「うん……」

 ここは繁殖に関しては動物的な世界。子を産んでくれる伴侶はとても大切な存在で守るべき対象だ。世界を安定させる礎でもあるから。

「今でも毎年伴侶を代える種類も当然いるんだ。でもそれを加味した生活を構築してるから問題は起きない。俺たち固定の伴侶を持つ者には分からん感覚だがな」

 僕はくすりとした。天帝の力を賜り、伴侶はそうそうどの獣も代えない。実は珠の交換はせずとも伴侶を代えないのが一般的になって久しいそうだ。

「俺はこの相手を縛る番の珠のやり取りはさ。固定の伴侶を持たせる目的があったのかなと考えてるんだ。この世界の初期に天帝が組み込んでな」
「なぜそう思うの?」

 翠は、肉食獣は単独行動が多く、繁殖期に出会った個体と交尾し母親が子育てをする。そして子離れしたらまた別の個体と交尾して子を育てる。草食獣は群れで暮らし仲間で子育てするが、生存のための進化で複数のオスと交尾し、子孫を残す方に注力している。共に固定伴侶が厳しい自然界では当たり前の考え方になる。鳥も環境の違いで毎年と固定に分かれる。確かそんなだった気がする。僕の知識と違いはない。

「そうかもね。理にかなってる気はする」
「だろ?動物が賢くなったからとか、人みたいに二足歩行になったからといって急に意識は変わらない。無駄に本能を残しているからな」

 今は強制しなくても文化として根づき、珠を相手に与えなくても固定。するのは竜や神の獣、役人が多く、廃れた文化になりつつあるそうだ。

「命の珠は普通の人は相手に与えられない。あれは力の弱い人がやるとその場で死ぬ。わりと命がけの行為なんだよ」
「あ、ありがとう。僕はとても愛されてたんだね」
「当たり前だ。竜でも力不足があると、最悪死ぬ」
「ヒッ」

 変なことは考えなくていい。して欲しいことは俺から言うし、自発的にしたいならとニヤリとする。するとここに俺のを入れてくれって脚を掴み、いきなり押し込まれた。うっ後はいつもと同じで快感に酔いしれるのみ。

 翠の「俺上手いから」は嘘ではなく、何度してもお尻が痛くなることはなかった。ただ気持ちいいだけで発情期は別かな。体力ないくせに翠の匂いで即発情し、何もかも忘れてしまうから。

 ても寝食忘れていたすのは人には危険。空腹と脱水に耐えられる体の違いでね。時々担当の誰かに翠から引き剥がされ別室に行く。飯を食べろ、水を飲め、少し休めと隔離され死んだように眠る。でもね、本来は子を産む方が発情しオスを誘うのが正しいんだけど、僕が人だから逆になるらしい。

「でもさ。夏樹は慣れてきたよな」
「なにが?」
「俺とのセックスにさ」

 ほぼ毎日に近いくらいしてても、こう言われると恥ずかしくなる。顔を真っ赤にしてるとかわいいとキスしてくる。余計恥ずかしだろ!

「夏樹のこんなところが好き。未だに照れるとか煽られてるのかと嬉しくなる」
「煽ってません!」

 もう中も彼の形に変わってんじゃないのか?と多少疑っている。翠はたまにお店のお仕事の帰りに色街で「大人のおもちゃ」をもらったとか言って僕に使うんだよ。でね?気持ちいいけど違うんだよね。フィット感が。僕はその時のことが思い出され……お尻の中で少し柔らかくなるブツに、改めてコレがいいなどと思ったり。

「他の人とは許さない」
「しませんよ。あなたじゃないんだから」
「したくなったら色街……俺の目の前でして」
「嫌です。エッチは足りてますし、他の人に興味はありません」

 でも客観的にエッチな夏樹を見たい気はする。でもそいつ殺しそうではあるかなあって。なら言うな。

「俺はお前だけがいい」
「僕もだよ」
「うん……うん……夏樹」

 そのまま二人でウトウトとしてると、バサッと音がしてサムッ見上げるとわんわん。

「朝です。二人とも起きなさい」
「「……はい」」

 わんわんは怖い顔して布団を掴んでいた。

「なにがどうしたのかは分かりませんが、仲直りはしたようですね」
「ルイ、それは違う。初めからケンカなどしてない」
「まあなんでもいいです。朝ご飯ですがその前に風呂入れ」
「ああ」

 僕らは早くしろと追い出されお風呂。仕事がなくても規則正しい生活を心がけろ。眠ければその後昼寝などすればいいってのがわんわん流だそう。朝機嫌よく起こされることは少なめかな。翠のせいで。

「わんわんはもう……主を知ってるでしょうに」
「あれの仕事だからなあ」

 ここに来てから朝風呂は多い。僕は元々夜派だったんだけどさ。いえ、夜も入ってますが、ほぼ毎晩抱かれるからこうなっている。たまにお昼に体を流しに入ることもあるけどね。

「朝風呂とか贅沢だよね」
「まあそうかもな。お前が俺の手入れがイヤって言うからだ」
「ヴッ」

 だって……狐になって舐め回されるのはちょっと……その…ね?僕は被毛がないし、人間は舐めて綺麗にすることはない。でもさ、臭くないんだよね。そこは驚きの事実。狐臭くなりそうなんだけどない。翠が獣臭いのは発情期の時だけなんだ。それでも僕にはいい匂いにしか感じないけどね。なんで?と聞けば、

「珠のせいかもな。俺の匂いに鈍感になってる可能性もある。だから他の人からはお前は狐臭いかもね」
「え?ええ!」

 僕はこの事実に気がついてなかった。狐臭いとはなんぞや。驚愕の事実にこの後の言葉が出ない。シャンプーとボディソープも使ってるよ。なのに?と聞けばそれは関係ないそうだ。

「なにを驚いている?夏樹は俺の命の珠を渡してるんだから、見た目はともかく中身は竜で外は狐だろ?今さらなにを」
「う、うそ……ちょっと嬉しい……かも」

 ハッ!ならもらった力で耳も尻尾も生やせる?ねえ翠!できないの!ねえねえ!と向かい合ってた浴槽から立ち上がり、翠の肩をしっかり掴み揺すった。彼はガクガクされながら目を閉じてあー……と考え込んだ。

「今は無理だろうけど、百年もすれば変化へんげできるかもな。伴侶の神に似せてる御子もいなくはないから。」
「本当?」
「うん。住んでいる場所やなんかで、人型をほとんど見かけない地域もあるんだよ。目立って辛い思いをする御子もいる。便利な薬もあるし」

 耳も鱗も尻尾もない人型は竜以外にいない。ということは目立つ。役人に間違われ襲われたりもするし、御子と分かった上で犯そうとする人もいる。長い年月生きる神の伴侶だから外に出る時には化けるらしい。

「ヤダ……僕耳付けたらかわいくなれるかな……ハッなにをッ」

 僕の手を肩からするりと降ろし、クスクスと翠は笑った。

「オレと同じ耳と尻尾を付けて、狐の匂いをさせてる夏樹か。いいな」
「あ?」

 そうだろ?と翠の股の間に入って抱き合う。完全に俺に染まって同族のようになるのかと感慨深げだ。

「一心同体が視覚的にもになるのは嬉しいが……今のままがいいかな」
「なんで?」
「うん?俺は今の夏樹の姿、性格が好き。このままがいい」
「えへへっありがとう」

 なんて見合って頬を染め合ってたらまだか!とわんわん来襲。

「何もない日でもきちんとしなさいと言ったでしょ!」
「ごめんなさい、わんわん」

 指先だけ犬に戻し「チャキン」と太い爪を出した。イヤだよこの人、威嚇してくるよなんて茶化したらさらに叱られた。でもこれはいつもで、急いで浴槽から出ることに、これはかなり怒ってる印だからね。慣れちゃダメだけど慣れた。

「わんわんは父親みたいだね」
「そうですよ!いくつになっても子供なんだから!」

 大声を出すわんわんに僕らは声を上げて笑ってしまう。わんわんはいつも同じで安定しててね。とても頼りになる方で、僕の安心の一つと言っていい人だ。

 そんな人に囲まれてる僕は幸せだと、お小言をネチネチと続けるわんわんを見つめ改めて思ったり。







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