お祭りの花嫁に強制参加させられたら本当に神様の嫁になってしまった

琴音

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帝の代替わり編

44 何やら不穏

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 ある日のこと。

 翠が都のお仕事でひと月いない時。僕は山にお出かけしようとイオにお弁当を頼んでいると、わんわんが今日から当分ダメだと言いに来た。

「なんで?今は秋で山栗拾ったり楽しいのに」
「今危険なんですよ」
「は?翠が対策したでしょ?」
「しましたけどね」

 わんわんが言うには、この季節の発情期の獣が争い伴侶を得たまではよかったが、負けた方がなぜか相手に執着した。そしてブチギレて二人とも殺害した。コワッ

「ままあることですが、そいつが逃げて山に潜伏してるそうでしてね」
「あ……」
「発情してて凶暴。なおかつこの執着は問題行動でもあり、警察部隊が山狩りしてるんですよ」

 翠の防御を破られる可能性があるらしい。だから当分山に散歩に行けないそうだ。なんてこと。

「捕まるまで諦めて下さい」
「分かりました。でもなんで?執着が問題とは?」
「では説明いたしましょう」

 わんわんは翠の席に座り、私にもお茶ってイオにお願いしている。そしてイオが湯飲みを持ってきて注ぎ、わんわんは優雅に口にする。

「夏樹様。以前にも説明しましたが、我ら獣は恋の駆け引きに負けたらすぐに次ってなるんですよ。振られた人に執着するだけ時間の無駄ですから」
「うん、知ってる」

 動物のメスは品定めして、気に入らないとなると絶対に振り向くことはない。丈夫で優秀な子を残したい気持ちが強いから。自然界で生きるための基本的な本能だね。

「相手に執着を持つのは力の強い獣。すなわち竜や神の獣になれる人で、特に人の感性に近い人々です」
「うんうん」

 この世界には強い力があっても、神様も役人もしていない人は多い。そういった人は自制心が弱い。獣らしいと言えばそうなんだけどねえって、またお茶をすするわんわん。

「この世界にもヤクザ者はいるのですよ。非合法なんて言葉はこちらにはありませんが、力がすべてと考える者たちがね」
「ふーん」

 お金に執着はあまりしないのがこの世界だった。でもこれだけ人の文化が定着すると、楽して生活したいって人も出てくるのは必然。賭け事を商売にする人もいるらしく、それに伴う金貸しとかね。銀行とは違う……ヤミ金に近いかと、わんわんは眉間にシワ。

「競馬とかそういったもの?パチンコとか?」
「いいえ、闘鶏や賭博ですね。サイコロの半丁です」
「また……いつの時代だよ」
「昔からですよ。でも最近は本当に多くなったんです」
「へえ」

 人の真っ当なところだけ取り入れるなんてのは無理で、娯楽の種類も増えた。人口も江戸の頃よりは増え、母数が多ければそういった輩も当然増えるんそうだ。まあそうか。

「ここは地方都市でさらに田舎の町です。輩にとって旨味のない場所でしたが……」

 ズズーッとお茶をすすり、イオおかわりとか言いながらね。わんわんは、その人らを軽蔑しているような態度だ。まあそうだよなあ、ここの人たちは都で役人の家柄だもんね。だから坊っちゃんと呼ばれるようなお家の人なんだろう。人ふうに言えば、ふむ。

「そんな輩の一人だったのですよ。犯人は」
「そっか」

 熊の獣で元々の力も強い。普通なら役人になってもいい力の持ち主らしいけど、性格的に向かなかったそう。え?なんで知ってるの?僕は驚いてわんわんに食いついたら嫌そうである。

「都の我が家の数軒先の子だったんですよ。子供の頃は多少やんちゃなくらいでしたがね」
「知り合い?」
「ええ」

 それはまた……なんとも言えない気持ちにもなるだろう。昔の友が変わり果てるなんて辛いだろうなあ。わんわんは彼の親は共に役人で、人の世界で働いてて行ったり来たりの生活だった。兄弟は親と同じ仕事をしているそう。だけどとわんわんは黙る。

「彼は頭が悪かったのです。我らのような役人の子は学校があり、読み書きや人の世界のことを学ぶ。そして仕事に就くのです」
「あんまり……だったの?」

 鼻からふうって息を吐いて、なんですかねえって。

「彼は好きなことしか覚えなかったのです。そして成人して、一応役人にはなったのですが、人の世界の悪いことを覚えてこちらに取り入れた。そして役人を辞めてヤクザの組のような組織を作り……ですね」
「はあ、それはまた……」

 それ自体は問題ない。脅されようがけんかしようが問題ない。金を奪われるのも奪われた人がマヌケなだけとなる。しかし、発情期の執着だけはダメなんだそうだ。なんで?その延長でしょう?と聞けば、そうだけど違うらしい。僕には分からなかった。暴力、強盗、殺人。なんでもありのこの世界にダメなことがあるの?その方が驚きだよ。

 わんわんと話し合っていると、イオも僕の隣の椅子を引き座った。夏樹様、なんでありのこの世界でもダメなこともありますよって。

「ダメなことってなによ」
「我らは天帝から力を受け取って人のような思考、二足歩行をして着物を着るなど文化を構築してきました」
「うん」
「ですがこの力には裏というか、副作用と言うのかな。そんなのがあるのです」
「え?」

 二人は嫌だねえと目を閉じた。なんだよ、説明してよと言うと二人はため息。

「強い力の獣は、自分を律する力も備わってるものなのです。この世界を守る竜の手助けができるという誇りがあるから」
「へえ」
「へえじゃありません。我らのように代々何かしらの役人の家の子は特にです」

 わんわんは公務員家庭の子と言えば分かりやすいかもと。昔の武士のように家を大切に考えるような部分がある。個人の考えを大切にする世界だけど、役人になる家庭の子はまた違うらしい。知らんかった。

「生活スタイルは同じでも考え方は違うんですよ」
「そっか」

 貴族である竜は特にだそう。力が半端ないから弱い竜ですら別格だそうだ。それは聞いてました。

「それでね。力のある獣が誰かに異常な執着するようになる。自分の感情を制御出来ないってことは、力の暴走が始まったということなんですよ」
「暴走?」
「ええ。化け物になる前兆なんです」
「は?たたり神のような?」
「似たようなものですね。我を忘れ動物以下に成り下がるのです」

 なにそれ、ものすごくヤバそうな生き物になるってことだよね?獣でも動物でもない化け物とは姿もかな?と問えばそうだと。身の丈は倍になり姿は崩れる、その者が火属性ならば火を吹き怪獣のようになる。近づく者を焼き殺し、太い爪でなぎ倒す。自分以外は攻撃対象になるらしい。やばすぎだろそれ。

「そうなる前に捕まえるか殺すんですよ。化け物になってからでは地方の警察じゃ太刀打ちできません。翠様たちいないのにもう……」

 こんな時にいないとは、なんて間の悪いことかと二人は僕をじっと見つめ……目が死んだ。

「防御のみならなんとか?かも」
「飲まず食わずで何日耐えられるんですか?力は使えばそれなりに疲れるし、夏樹様持ちますか?」
「……分かんない…です」

 声が小さくなってしまった。何日もなんて考えてもいなかったよ。それに化物になった人に対抗できるのは竜のみ。この状況はかなり不味いらしく、警察も総出で探してるそうだ。僕は早く見つかって欲しいものだと思わずにいられなかった。





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