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帝の代替わり編
36 翠の変化
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部屋に戻る途中、案内の猫さんがこれからの予定を話してくれた。
「これで面会の予定は全て終了でございます。夜の宴会後はフリーです。明日もこちらにおいでですか?」
「そうだなあ……」
翠は考え込みながら歩いている。街の宿屋もいつもと違って楽しいし、僕にも街を見てから帰りたいだろ?って聞いてくれる。僕は上から見た街に少し興味があったから「はい」と答えた。翠は先ほどの重い話の余韻は全くなくいつもの翠だ。それどころか少し晴れやかな顔をしていて、その様子に僕の方が戸惑ってしまった。
「でしたら予約を入れましょうか?」
「そうして」
「かしこまりました。ではいつものお宿でよろしいでしょうか?」
「ああ」
猫さんについて歩いていると、あちこちから「翠いつまでここにいるの?」とか声が掛かる。その背後から睨むような視線や、明らかに蔑む目つきでヒソヒソする人たちも見受けられた。翠は好かれてもいるし、嫌われてもいるのが御所では可視化される。
僕なら優しい人たちより、敵意の人たちばかり目がいって落ち込み捻くれそうだ。そして育ちきった頃には「性格に難ありの大人」の出来上がり。名実ともに嫌われそうだよ。この人の目の中育ち、優しく思いやりのある翠。心に一本強い意志があるのだろう、その強さを尊敬する。翠が猫さんと細かな打ち合わせをしている間に部屋に到着。
「夕食会の後はどうされますか?外にお出かけします?」
「どうする夏樹」
「ここにいます。たぶん疲れるから」
「かしこまりました」
猫さんが下がると、着付け担当の方々が入ってきて装束を脱がしてくれる。帯を緩めるとあは~楽。それに正絹の装束は重いんだよね。本気で平安貴族を尊敬すると女中さんと話していると翠が、
「バーカ。帝に会うから正式な物を着てただけだ。みんな普段は狩衣か着物に袴だよ。屋敷の中はそうだったろ?」
「そうでした」
あんなので働けないよな?と翠はみんなに聞いて、確かにとみんなも楽しそうだ。まあそうね。それとね、ここの人たちは華やかな色や文様の方々が多かったんだ。動物が着てるとかわいいんだ。人の姿の人が多いのが難点ではある。女中さんたちは我らには分からない感覚だが、人の衣装だから人型の方が似合う気はするってさ。まあねえ。
「人の姿が多いのは、神の獣やそれに準じる人が多いからだ。仕方ないだろ。お前好みで着てるんじゃないし」
「わかってるよ!でも猫や犬が多いのはなんでかな?」
「帝が好きなんだよ。好みだな」
「へえ」
こんなところにも帝の好みの反映するそうだ。ここは帝の仕事場で自宅でもある。目に映る人も好みにできるらしい。ていうか、ここは能力がある犬や猫を召し抱えるのがこの数千年続いていると女中さんたち。
「私たちは知りませんけど、前はネズミやリスなどのげっ歯類だらけとか、トカゲなどの爬虫類だらけの時もあったそうです。お好きな見た目の人を重用するんですよ」
「へえ……」
ここは中央のため人も多く、近くに神の獣の屋敷も多い。仕事をするのに楽だからだそうだ。役人は当然で、近くの町や城下に屋敷を持つ人多数。翠の父君とか(理由はやむなし)は珍しいらしい部類になる。そりゃあそうか、都に用事がある度に長距離移動は大変だもんね。だから仕事に合わせてこちらに屋敷を持ち、行ったり来たりの人も結構いるそうだ。まるで参勤交代だねと言えば、翠は、
「参勤交代みたいなのは役人に多いかな。呼ばれる時期が決まっててさ。来たついでに都会の生活を楽しみまた帰る。楽しいらしいよ」
「そっか」
みんなが都会を好きな訳じゃないらしい。田舎でのんびりもいいもので、役人は自分で行きたいところを指定も出来る(空きがあればたけど)だそう。
「僕も地方の方が好きかな。この世界は特に」
「だろう?」
都会は都会のよさがあるのは確か。この世界にもメディア関係のお仕事はたくさんあって、歌手も俳優さんもいる。テレビはないから露出はコンサートや舞台が中心だ。それを録画した物をDVDにしてファンに売る。ここはタワ◯コのようなお店が現役なんだ。
「ここは電波塔だけは作れてないんだ。人から調達といっても限度はあるかな」
「神のお力で!とかはないの?」
「魔法じゃないからな。できないよ」
「万能ではないのか」
「変な期待すんなよ」
着替えてる最中こんな話をしていたら、女中さんたちはクスクス。現実問題としてテレビをそこまで見ないし、日々の出来事の情報は新聞で手に入る。あまり必要とは思ってないそうだ。でも素敵な俳優さんや歌手は見たい。番とは別ベクトルの気持ちらしい。
「お気に入りの物を短時間ですね。それ以上だと飽きるというか……暇な時間は寝ていたいとか……かな?」
「アハハッ」
人みたいに勤勉でもないし、勤勉な種族もいるけど基本はダラダラしていたいのが本音だと女中さんたち。
「人とこちらの獣の勤勉さは別物ですからね」
「そうなの?」
「ええ。人らしくなった獣たちですが、手が空けばぼんやりするか寝ますから」
「体力温存の習慣は抜けませんか?」
「はい、抜けません」
お疲れでしょう?お茶をどうぞと着替え終わった僕らに淹れてくれる。僕らが座椅子に座ると、
「ルイに聞いてますよ。翠様は栗まんじゅうが大好きなんですよね」
「栗が好きなんだよ。それと白あんかな」
「うふふ。そうお聞きしましたので、街中の有名店のを集めました」
「あ、ありがとう」
いろんなお店のが山積みでドンッとテーブルに置かれた。翠はすぐに包装紙をむいて食べ始め、ここの好きとか言っている。僕は翠を見つめ、そうだけどそうじゃないんだよね。山盛りの栗まんじゅうは美味しいだろう。でも僕の好みもなどと図々しいことが頭に浮かぶ。お呼ばれしたのは僕じゃないでしょ!僕は「おまけ」なの!と気を取り直し、見たことない包みのをパクリ。
「おお……白あんだけじゃなくて桜あんだ」
「いろんな種類があるんですよ。白あん以外にも黄味あんや抹茶味とかチョコ、カスタードや肉味噌あん、刻んだきんぴらとか漬物が入ってるとか」
「それもう栗まんじゅうじゃない。皮の違うおやき……」
「栗が欠片でも入っていたら栗まんじゅうですッ」
「そ、そうですか」
女中さんが言うには「栗好き」は多く、洋菓子店ももちろん、和菓子店には栗入りが季節問わず必ずあるそうだ。リスやムササビ、ネズミは言うに及ばずだそう。僕は珍しくて夕食会までに色々開けて食べてしまった。塩っぱいのと交互に食べるとこれまた美味しかったんだ。そして当然だけど夕食会までには消化しきれずかなり残した……よね。
「これで面会の予定は全て終了でございます。夜の宴会後はフリーです。明日もこちらにおいでですか?」
「そうだなあ……」
翠は考え込みながら歩いている。街の宿屋もいつもと違って楽しいし、僕にも街を見てから帰りたいだろ?って聞いてくれる。僕は上から見た街に少し興味があったから「はい」と答えた。翠は先ほどの重い話の余韻は全くなくいつもの翠だ。それどころか少し晴れやかな顔をしていて、その様子に僕の方が戸惑ってしまった。
「でしたら予約を入れましょうか?」
「そうして」
「かしこまりました。ではいつものお宿でよろしいでしょうか?」
「ああ」
猫さんについて歩いていると、あちこちから「翠いつまでここにいるの?」とか声が掛かる。その背後から睨むような視線や、明らかに蔑む目つきでヒソヒソする人たちも見受けられた。翠は好かれてもいるし、嫌われてもいるのが御所では可視化される。
僕なら優しい人たちより、敵意の人たちばかり目がいって落ち込み捻くれそうだ。そして育ちきった頃には「性格に難ありの大人」の出来上がり。名実ともに嫌われそうだよ。この人の目の中育ち、優しく思いやりのある翠。心に一本強い意志があるのだろう、その強さを尊敬する。翠が猫さんと細かな打ち合わせをしている間に部屋に到着。
「夕食会の後はどうされますか?外にお出かけします?」
「どうする夏樹」
「ここにいます。たぶん疲れるから」
「かしこまりました」
猫さんが下がると、着付け担当の方々が入ってきて装束を脱がしてくれる。帯を緩めるとあは~楽。それに正絹の装束は重いんだよね。本気で平安貴族を尊敬すると女中さんと話していると翠が、
「バーカ。帝に会うから正式な物を着てただけだ。みんな普段は狩衣か着物に袴だよ。屋敷の中はそうだったろ?」
「そうでした」
あんなので働けないよな?と翠はみんなに聞いて、確かにとみんなも楽しそうだ。まあそうね。それとね、ここの人たちは華やかな色や文様の方々が多かったんだ。動物が着てるとかわいいんだ。人の姿の人が多いのが難点ではある。女中さんたちは我らには分からない感覚だが、人の衣装だから人型の方が似合う気はするってさ。まあねえ。
「人の姿が多いのは、神の獣やそれに準じる人が多いからだ。仕方ないだろ。お前好みで着てるんじゃないし」
「わかってるよ!でも猫や犬が多いのはなんでかな?」
「帝が好きなんだよ。好みだな」
「へえ」
こんなところにも帝の好みの反映するそうだ。ここは帝の仕事場で自宅でもある。目に映る人も好みにできるらしい。ていうか、ここは能力がある犬や猫を召し抱えるのがこの数千年続いていると女中さんたち。
「私たちは知りませんけど、前はネズミやリスなどのげっ歯類だらけとか、トカゲなどの爬虫類だらけの時もあったそうです。お好きな見た目の人を重用するんですよ」
「へえ……」
ここは中央のため人も多く、近くに神の獣の屋敷も多い。仕事をするのに楽だからだそうだ。役人は当然で、近くの町や城下に屋敷を持つ人多数。翠の父君とか(理由はやむなし)は珍しいらしい部類になる。そりゃあそうか、都に用事がある度に長距離移動は大変だもんね。だから仕事に合わせてこちらに屋敷を持ち、行ったり来たりの人も結構いるそうだ。まるで参勤交代だねと言えば、翠は、
「参勤交代みたいなのは役人に多いかな。呼ばれる時期が決まっててさ。来たついでに都会の生活を楽しみまた帰る。楽しいらしいよ」
「そっか」
みんなが都会を好きな訳じゃないらしい。田舎でのんびりもいいもので、役人は自分で行きたいところを指定も出来る(空きがあればたけど)だそう。
「僕も地方の方が好きかな。この世界は特に」
「だろう?」
都会は都会のよさがあるのは確か。この世界にもメディア関係のお仕事はたくさんあって、歌手も俳優さんもいる。テレビはないから露出はコンサートや舞台が中心だ。それを録画した物をDVDにしてファンに売る。ここはタワ◯コのようなお店が現役なんだ。
「ここは電波塔だけは作れてないんだ。人から調達といっても限度はあるかな」
「神のお力で!とかはないの?」
「魔法じゃないからな。できないよ」
「万能ではないのか」
「変な期待すんなよ」
着替えてる最中こんな話をしていたら、女中さんたちはクスクス。現実問題としてテレビをそこまで見ないし、日々の出来事の情報は新聞で手に入る。あまり必要とは思ってないそうだ。でも素敵な俳優さんや歌手は見たい。番とは別ベクトルの気持ちらしい。
「お気に入りの物を短時間ですね。それ以上だと飽きるというか……暇な時間は寝ていたいとか……かな?」
「アハハッ」
人みたいに勤勉でもないし、勤勉な種族もいるけど基本はダラダラしていたいのが本音だと女中さんたち。
「人とこちらの獣の勤勉さは別物ですからね」
「そうなの?」
「ええ。人らしくなった獣たちですが、手が空けばぼんやりするか寝ますから」
「体力温存の習慣は抜けませんか?」
「はい、抜けません」
お疲れでしょう?お茶をどうぞと着替え終わった僕らに淹れてくれる。僕らが座椅子に座ると、
「ルイに聞いてますよ。翠様は栗まんじゅうが大好きなんですよね」
「栗が好きなんだよ。それと白あんかな」
「うふふ。そうお聞きしましたので、街中の有名店のを集めました」
「あ、ありがとう」
いろんなお店のが山積みでドンッとテーブルに置かれた。翠はすぐに包装紙をむいて食べ始め、ここの好きとか言っている。僕は翠を見つめ、そうだけどそうじゃないんだよね。山盛りの栗まんじゅうは美味しいだろう。でも僕の好みもなどと図々しいことが頭に浮かぶ。お呼ばれしたのは僕じゃないでしょ!僕は「おまけ」なの!と気を取り直し、見たことない包みのをパクリ。
「おお……白あんだけじゃなくて桜あんだ」
「いろんな種類があるんですよ。白あん以外にも黄味あんや抹茶味とかチョコ、カスタードや肉味噌あん、刻んだきんぴらとか漬物が入ってるとか」
「それもう栗まんじゅうじゃない。皮の違うおやき……」
「栗が欠片でも入っていたら栗まんじゅうですッ」
「そ、そうですか」
女中さんが言うには「栗好き」は多く、洋菓子店ももちろん、和菓子店には栗入りが季節問わず必ずあるそうだ。リスやムササビ、ネズミは言うに及ばずだそう。僕は珍しくて夕食会までに色々開けて食べてしまった。塩っぱいのと交互に食べるとこれまた美味しかったんだ。そして当然だけど夕食会までには消化しきれずかなり残した……よね。
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