お祭りの花嫁に強制参加させられたら本当に神様の嫁になってしまった

琴音

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花嫁〜獣の世界編

9 神様お仕事

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 年末大晦日の夕方、深々と降り積もる雪。

 僕は神の妻として嫁いで初めて村に戻ったんだ。お正月支度をする村の人を、社の奥の祭壇の前でゴロゴロしながら眺めていた。

「なんか気が引けるね。子供の頃は手伝ってたから」
「知っている。かわいくて俺はずっと目で追ってた」
「翠。そういうことをサラッと言われると照れます」
「ならキスして。その先でもいい」
「バカ!」

 この会話はみんなに聞こえないし見えもしない(翠が見えないようにしているから)。僕はもうこの人の世界の住人ではない。その事実に寂しさは大きいけど後悔はない。僕は社に母さんや父さんが忙しく出入りし、あの祭りの日のままの村の人を見つめていた。

「お前んとこは子が出来なかったからなあ」
「まあな。神の御利益不足は否めない。八重子の行いが悪かったんだろ」
「やめて賢治さん。あたしのせいじゃないわよ」
「そうそう。お前の子種だろ!アハハッ」

 酔っ払った近所の下品おじさん。変わんないなあ。もう真っ赤な顔している。

「どっちも問題なかったわい!医者にわかんないって言われたんだよ!」
「嘘つけ!ならお前の息子が使いもんにならんかったんだろ!」
「使えるわ!」
「やめて賢治さん。あの人に関わると下品が伝染るから。あたしが知ってればいいの」
「うん。ごめんよ」

 父さんはおじさんをキッと睨み社を出て行く。相変わらず仲良しな両親。安心した。

「失礼だよなあのおっさん。おれの加護が悪いわけねえだろ。あんなだから俺はあのおっさんには農作物の加護しかやらんかった。ざまあみろ」
「アハハッ」

 昔からの村の差配というか庄屋さんのお家の方なんだけどね。加護があろうがなかろうが、繁華街が俺の居場所とかいうおっさんに嫁はこねえよ。風俗街のおねえさんで相手してもらってねえ人はいないと豪語する股間のばっちいおっさん。家柄で誰も何も言わないけど、問題の人物であるとみな認識している。家族すらアンタッチャブルな不潔なおっさんだ。

「夏樹は純潔だ。俺のおかげだな」
「あのそれさあ。僕がどれだけ悲しかったか翠に分かるのかよ」
「今なら分かる。ごめん。お詫びにキスしてやる」
「違う!」

 僕と二人の時は翠はこんな。もう何か何でも触れ合おうとするんだ。発情期でもないのにさ。翠なんでなのと聞けば狐だからと言う。

「見たことあるはずだ。狐は家族や子供、妻や夫といつもくっついているだろ?猫とか犬もそう。だから夏樹にも触れてたい」
「はいはい」

 なら腕上げてと横になる翠の胸に収まる。

「キスしてくれ」
「ちょっとだよ」

 唇に軽く触れると頭をガシッと掴まれて貪るように。ンッ……翠ちが……翠、あんっ翠ちがうぅ……

「みんな見てる…から」
「見てない。見えてない」
「でもぉ」

 本日は誰にも見えてないけど正装である。束帯そくたい姿で、緋色の衣装で……うっ……あっ。見えないけどやめて。

「翠……したくなるからやめて」
「しよ?」
「しねえよやめて!」

 押さえつけられているけど頑張って押し返した。体が離れたらあからさまに翠は不貞腐れた。

「チッ」
「チッじゃねえ!」

 寒いからストーブガンガンに焚いてて暖かい社。目の前では休憩がてら飲んでいる村の人たち。あと少しで支度は終わり二年参りの人たちがやってくる。懐かしい光景だ。翠は不貞腐れながらも胡座に入れてくれた。

「お参りしてる人がお願いするじゃない。翠は聞いて叶えてんの?」
「ん?聞いてるだけだよ。みんなの願いって努力すれば手に入ることばっかだ。だからかんばれーって気を送るのみ。何もせん」
「うそ……受験とか願ったよ僕」
「ああ、気に入った人とかは少し後押しする。それだけ」

 さすが神様。誰でもじゃないんだな。それもそっか。

「あー……やっと収まってきた。ふんどしだと股間の違和感が嫌なんだよね。パンツ買ってよ。ボクサータイプがいい」
「イヤ」

 脱がすの面倒だからと言い切る。それに圧迫はよくないと聞く。慣れろって。

「パンツはともかく出せばよかったのに。俺はお前の飲むよ。汚れない」
「やめて!」

 動物は股間の汚れを気にしない。人の姿を取ったところで変わらないそうだ。でも僕が嫌がるから合わせてくれている。が、たまにトイレの後でも襲ってきて、支度させろって言うと俺がするからとこともなげに。僕はイヤーって逃げ回ることになる。そして風呂場に逃げ込むよう誘導されて……

「ほらあれ雪斗だろ。隣の女は願った女だろうな」
「あれ?……なんか雰囲気が。かわいい方だけどう~ん?」

 人づてに聞いていた人相と違う気が?アイドルみたいにかわいくて、聡明で街のデパートで案内カウンターの案内係をしてると聞いてたけどな。なんか素朴なお嬢さんだけど。僕の記憶違いかな?

「久美と出会えたのはここの神様のおかげだ」
「ふーん。この神様にそんな御利益あるの?」
「あるんだよ。俺は花嫁衣装着て花嫁奉納の祭りに参加した。だからこんな短期に婚約まで済ませられたんだ。大切にする」
「もちろん私ファーストでね。でも結婚までこんなに交際期間が短くてとは思わなかった。田舎に嫁ぐのも嫌じゃないし不思議よね」

 やっぱり違う人だ。でも幸せそうでよかった。雪斗は口は悪いけどいい人なんだ。自分に正直で失敗したら謝れる人。だから僕は彼を友だちだとずっと思ってんだ。彼もきっとそう思ってくれてたはずだ。

「俺は雪斗に加護を与えた。証明になったろ」
「うん。ありがとう」

 零時を過ぎるとたくさんの人がお参りに来た。街に出ていた同級生も親戚の兄ちゃんや姉ちゃんたちも。あのお祭りでも会えなかったみんながいる。

「元気そうだし隣の家のお姉ちゃん赤ちゃん生まれたんだね。すごい」
「お前も産めばいい。発情期にすればできるぞ」
「……まだいりません。そういやいくつまで僕は産めるの?」
「そうだなあ。無理なくなら死ぬ二百年前くらいか」
「ならいらない。もっと翠を知ってからでいい。僕が翠いないと苦しくなるまで好きになってからでいいかな」
「フフッ夏ごろには……か。なら来年だな」
「すごい自信だね」

 まあなってはにかむように微笑む。僕この笑い方好きなんだ。少し頬を染めて幸せそうに目を細めて笑うの。

「翠……かわいい」
「したくなる?」
「バカ!」

 僕の素敵な旦那様は常にエロしか頭になかった。性獣さまだった……なんでだ。でも……

「翠がこんなと分かっても……あーあ」
「好きが増える?」
「悔しいけど……うん」

 夏樹はかわいいと横になったまま片膝立てていた。せっかくの装束の意味がない。つかさ、こんな重い装束で普段通り動けるのはすごいよね。僕は翠より簡易の衣冠いかんと呼ばれる姿だ。これでも着慣れないから重くて大変なのに。

「神様らしく座らない?」
「夏樹がしたいなら」
「うん。したい」

 胡座から出してくれて並んで座る。寒い、夏樹もっと近くにいてと尻尾を僕に巻き付けて寒くないだろって。ふかふかで中身(芯の骨?)は少ない。大きいけど被毛ばかりと知ったんだ。

「いつもはどのくらい社にいたの?普段は来てないの?」

 普段は力を使い管理している。時々来て村を見回るかなって。ふーん。正月は?と聞けば、

「三が日は屋敷に帰らない。ご飯運んでもらってな。時々抜け出して客のフリしてさ。振る舞い酒飲んで酔っ払ったら戻ってここで寝てた」
「どんな神様だよ」
「信者と触れ合ういい神様だろ」
「まあね」

 今日は真面目に座るが明日からは好きにするからな。いるのに意味があるんだ。助けの必要な人には少しだけ力を授ける。これが人を呼ぶ秘訣で大切にされる秘訣だそう。僕の袴の隙から手を入れて股間を掴む。

「なにしてんの?」
「手持ち無沙汰」
「手が冷たいよ」
「なら温めて」
「冷たくて勃たないよ」
「時間はあるから」

 暇と感じると僕で遊ぶ翠、でも嫌じゃない。僕嫌じゃないんだよぉーどうしよう。僕もおかしくなったのかな?ねえ翠。僕こんなにエッチィ人だったのかな。少し不安なんだと振り返れば、

「いいじゃないか。俺は嬉しいよ」
「でも」
「夏樹がエッチで誰が困るんだ。誰も困らん」
「まあ……そうか」

 そうなのか?本当にそうなのか?考え込んでる間に翠のいやらしい動きの手が。

「アッ…翠……ッ」
「姫始めって今日かな?そんな言葉があると俺は聞いたことあるんだ」
「僕はそういうの実は疎くてわかんない。擦んないでぇ」

 誰にも見えないけどこれどうなの?僕が知らなかっただけで毎年こんななの?と聞けば、似たようなものだと翠。知り合い呼んでどんちゃん騒ぎ。お供えを片っ端から飲んで遊んでたからなって。はあ……そうですか。

「友とは神の獣ばかりじゃないから」
「ハァハァ……そうな……ダメ…出ちゃうぅ」
「気にしなくていい。わんわんに……」

 祭壇の大きな鏡から聞き覚えのある怒鳴り声が響く。ここが人の世界との出入り口で翠の屋敷にもあるんだ。

「やめろ!汚すかと思って来てみればやっぱりか!夏樹様、したかったらせめて下半身は脱ぎなさい!主も!シミ抜き大変なんですよ!」
「分かった」
「翠?何が分かったの?ねえ」

 翠は僕を立たせてお腹の紐にすぐに手を掛け解き袴にも。重い袴だからストンと落ちた……いやあああッ


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