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「この一連の証言をまとめると……」
ここでチラと長官を見るルフィーリア。
長官の肝が握られる。
「これらから連想されるのは、一年生のピンク頭がソフィーリア様の私物を盗んだということでしょう。」
学院内で行われた不正行為の発覚である。
「皆様もご存知の通り、貴族家名を名乗っての証言、証人尋問は、法廷において行われ証拠として認められています。」
更に汗が噴き出る真っ青な顔の長官。
「証拠で示されたこれらは、ストーカー化したピンク頭により、今後も続くことが予想されました。ソフィーリア様はバルドー邸に帰られ家族に相談なさり、お怒りになられたバルドー公爵様がソフィーリア様の隣国への留学を即断。」
あ……おわった……私の教育生活50年のキャリアが……との呟きが漏れる長官の顔は白い。
「代わりに、ソフィーリア様と背格好が良く似た私が、影武者としてこの国に参った次第にございます。ここまでで、何かご質問はございますか。殿下?」
「んー!んー!」
ジャックの腕を掴んで強く揺さぶり何か言ってくださいジェスチャーのキャンディスを無視し、ジャックは青から白くなった頬を力なく支えている。
「では続行します。先程……」
ルフィーリアが蔑む冷めた目をジャックに向けると、それ以上に氷点下まで下がった凍てつく視線でキャンディスがジャックを睨みつけていた。
(うわっ)
ルフィーリアは動揺を隠し視線を会場へと移すことで耐えた。
(もう演技すらしないのねこの子。……仮面が剥がれた貴方を見ているのは私だけじゃなくてよ。)
会場からいくつもの視線がキャンディスに集中している。そのいくつかは、ジャックと同様、絶望と後悔に青ざめる男達だ。
「先程……ジャック・ギデオン皇太子殿下から発言のあった矛盾と真相を解明して参りましょうか。」
ギクッ
ジャックの全身が強張る。
「まずひとつ、嫉妬に狂った君、とありましたが、ソフィーリア様は隣国に留学し嫉妬の仕様がございませんので無実、ということで宜しいですわね、殿下?」
「……はい。」
「んんんー!」
(認めてどうすんのよこの役立たず!)
「では次に。殿下がキャンディス・ノラックに手渡した贈賄品について。散財癖である殿下には貯金はございません。にも関わらず高額なジュエリーを横流ししている証拠がこちらです。」
ルフィーリアの視線を受けて賓客席から立ち上がる紳士。
「はい!私は皇宮御用達として認定を受けまして、豪商と名高いレアルダイアモンドの皇宮御用聞きを務めさせていただいております、ロニー・スミス、子爵位にございます。私が手にしておりますのは、ここ一年のジャック・ギデオン皇太子殿下の取引記録に付け加えまして、キャンディス・ノラック男爵息女がレアルダイアモンドに持ち込んだ転売品記録も、僭越ながら私独自の判断で持参いたしました。」
ジャックは口をポカンと開けたまま、点になった目、既に手に力すらなく、ダラリと腑抜けた姿勢に皇太子の威厳は全く感じられない。
キャンディスもまた、驚愕の目でロニー・スミスを見つめ、ジャックもキャンディスも互いがどうしているかなど気にする素振りもない。
長官の顔がみるみる赤くなる。怒りに震えているようだ。
「こちらと同じ文書はご要望通り皇帝陛下並びに皇后陛下の元へ、実際に取引されたジュエリーと合わせて献納させていただいた次第にございます。」
(仕事は迅速に、成果は確実。うちの流儀を判じて頂けましたかな?)
「まあ。ロニー・スミス子爵。流石は豪商と名高くレアルの名に相応しい配慮に感謝いたします。」
(犬女とふぬけ皇子相手なら退屈でしたでしょう、この程度の仕掛け、レアルなら尚更。)
「いえいえ、滅相もございません。全ては国を思っていたしましたこと。今後ともご贔屓に宜しくお願いいたします。」
(いやいや、手厳しい。私共の忠誠心は変わらず永遠に、魅姫とともにあります事をお忘れなきよう。)
にこにこと、探り合う笑顔が交わされました。
ジャックは既に膝を床につき、ゆっくりと尻を下ろし、正座のようにペタリと座った。
キャンディスは、ジャックの腕を掴んで引き上げようとするが、ジャックはビクリとも動かない。
(た!ち!な!さいよー!立ってキャンディを守りなさいよー!)
「これらの証拠により、現在殿下に預けられている、皇太子妃の支度金の預金額を調査中ですので、追ってご報告します。」
キッ、とルフィーリアを睨むキャンディス。その手はジャックの腕を握ったままギリギリと締めつける。
(皇太子妃の支度金はキャンディのものよ!キャンディの好きにして何が悪いのよ!)
ここでチラと長官を見るルフィーリア。
長官の肝が握られる。
「これらから連想されるのは、一年生のピンク頭がソフィーリア様の私物を盗んだということでしょう。」
学院内で行われた不正行為の発覚である。
「皆様もご存知の通り、貴族家名を名乗っての証言、証人尋問は、法廷において行われ証拠として認められています。」
更に汗が噴き出る真っ青な顔の長官。
「証拠で示されたこれらは、ストーカー化したピンク頭により、今後も続くことが予想されました。ソフィーリア様はバルドー邸に帰られ家族に相談なさり、お怒りになられたバルドー公爵様がソフィーリア様の隣国への留学を即断。」
あ……おわった……私の教育生活50年のキャリアが……との呟きが漏れる長官の顔は白い。
「代わりに、ソフィーリア様と背格好が良く似た私が、影武者としてこの国に参った次第にございます。ここまでで、何かご質問はございますか。殿下?」
「んー!んー!」
ジャックの腕を掴んで強く揺さぶり何か言ってくださいジェスチャーのキャンディスを無視し、ジャックは青から白くなった頬を力なく支えている。
「では続行します。先程……」
ルフィーリアが蔑む冷めた目をジャックに向けると、それ以上に氷点下まで下がった凍てつく視線でキャンディスがジャックを睨みつけていた。
(うわっ)
ルフィーリアは動揺を隠し視線を会場へと移すことで耐えた。
(もう演技すらしないのねこの子。……仮面が剥がれた貴方を見ているのは私だけじゃなくてよ。)
会場からいくつもの視線がキャンディスに集中している。そのいくつかは、ジャックと同様、絶望と後悔に青ざめる男達だ。
「先程……ジャック・ギデオン皇太子殿下から発言のあった矛盾と真相を解明して参りましょうか。」
ギクッ
ジャックの全身が強張る。
「まずひとつ、嫉妬に狂った君、とありましたが、ソフィーリア様は隣国に留学し嫉妬の仕様がございませんので無実、ということで宜しいですわね、殿下?」
「……はい。」
「んんんー!」
(認めてどうすんのよこの役立たず!)
「では次に。殿下がキャンディス・ノラックに手渡した贈賄品について。散財癖である殿下には貯金はございません。にも関わらず高額なジュエリーを横流ししている証拠がこちらです。」
ルフィーリアの視線を受けて賓客席から立ち上がる紳士。
「はい!私は皇宮御用達として認定を受けまして、豪商と名高いレアルダイアモンドの皇宮御用聞きを務めさせていただいております、ロニー・スミス、子爵位にございます。私が手にしておりますのは、ここ一年のジャック・ギデオン皇太子殿下の取引記録に付け加えまして、キャンディス・ノラック男爵息女がレアルダイアモンドに持ち込んだ転売品記録も、僭越ながら私独自の判断で持参いたしました。」
ジャックは口をポカンと開けたまま、点になった目、既に手に力すらなく、ダラリと腑抜けた姿勢に皇太子の威厳は全く感じられない。
キャンディスもまた、驚愕の目でロニー・スミスを見つめ、ジャックもキャンディスも互いがどうしているかなど気にする素振りもない。
長官の顔がみるみる赤くなる。怒りに震えているようだ。
「こちらと同じ文書はご要望通り皇帝陛下並びに皇后陛下の元へ、実際に取引されたジュエリーと合わせて献納させていただいた次第にございます。」
(仕事は迅速に、成果は確実。うちの流儀を判じて頂けましたかな?)
「まあ。ロニー・スミス子爵。流石は豪商と名高くレアルの名に相応しい配慮に感謝いたします。」
(犬女とふぬけ皇子相手なら退屈でしたでしょう、この程度の仕掛け、レアルなら尚更。)
「いえいえ、滅相もございません。全ては国を思っていたしましたこと。今後ともご贔屓に宜しくお願いいたします。」
(いやいや、手厳しい。私共の忠誠心は変わらず永遠に、魅姫とともにあります事をお忘れなきよう。)
にこにこと、探り合う笑顔が交わされました。
ジャックは既に膝を床につき、ゆっくりと尻を下ろし、正座のようにペタリと座った。
キャンディスは、ジャックの腕を掴んで引き上げようとするが、ジャックはビクリとも動かない。
(た!ち!な!さいよー!立ってキャンディを守りなさいよー!)
「これらの証拠により、現在殿下に預けられている、皇太子妃の支度金の預金額を調査中ですので、追ってご報告します。」
キッ、とルフィーリアを睨むキャンディス。その手はジャックの腕を握ったままギリギリと締めつける。
(皇太子妃の支度金はキャンディのものよ!キャンディの好きにして何が悪いのよ!)
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